33 暗闇姫ハナヲのスキー初体験
黒姫館に評価頂き、有難うございます。
異世界魔女っ子・ドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメ!
遅々にどうぞ!
夜のうちにスキー場に到着したバスは、駐車場の片隅で朝を待った。仮眠中のわたしらのためにエンジンはかけっぱなし。スッゴク有難かった。
クリスマスを迎えたスキー場は、活気あるポップ音楽とざわめく若い人たち、雲間に見える冬の太陽、そして白銀に専横されていた。車窓を通り抜ける日差しは温かさを越して、暑いくらいやった。
まだ眠いのに、引率の担任センセーに引きずり出されるように車外に出たわたしは、思わず「うひー」と身を縮める。やったら寒いっ。寒いやないのッ?! だんぜん、ピカイチ寒い、これがウワサに聞くスキー場とゆうものなのか?!
「なんだ? 暗闇姫、スキー場は初めてなのか?」
「ええ、まぁ……。記憶の限り、初めてデス」
「なんだよー、記憶の限りって。まーいい。――選択できるんだが、スキーとスノボー、どっちにする? ……そっか、スキーか。分かった」
えー……。
スノボーの方がオシャレなカンジすんだけど、別に両方初心者なんでどっちでも。つか選択権、今の会話の中で有ったの?
ウェアとクツと板を借りるぞと受付に連れて行かれ、為すがままにチョイス。まーまーカワイイのでよし。センセーの手伝いで準備を整え、人生初のゲレンデに足を踏み入れた。
「ここからはインストラクターの先生に従ってくれなー。頑張れよー」
「うええ? センセーは滑らないんですか?」
「わたしゃアフタースキーにしか興味がないっ」
ヒデー。あんまりだぁ。
◆◆
「そうそう。腰を落として。八の字の姿勢を崩さないで。はい、右にィ、左にィ……」
最初はおっかなくって、ただもー帰りたかったのに、徐々に慣れてくると【ただ斜面を滑り降りる】とゆー単純な行為に面白さを見出してきた。
オジサンの頃、トレンディードラマやらでオサレな若人たちのスキーシーンを見て、もしくは冬のオリンピックなんかで華麗にターンを決めるスノーボーダーたちを見て、「なんだコイツら? 曲芸自慢のマタギかよ?」 なーんて暴言を(もちろん心の中で)吐きまくってたが、ところがどっこい、意外にも、いやいや、かーなーり、とてーも、楽しすぎるじゃあーりませんの!
世の中のスキー、スノボーファンの皆さん、選手の皆さん、ごめんなさいでした!
「暗闇姫さん、センスあるねー、ホントに初心者なの?」
いやいやホメんとってくださいましよォ、このイケメンお兄さん! ぷぷ。
――わたしが参加するスキー教室は、12歳までキッズ限定のコースで、13歳のわたしは厳密には参加できないんだけど、学校行事ってゆーコトもあって、【ムリなく安全第一にスキーに親しむ】を目当てに、センセーが計らって混ぜてもらった。5人いたメンバーは小学生ばかりで、中学生のわたしは受け止めようによっては、ちょっと恥ずかしい存在にも思えた。
なので、
「済みません。昼からの授業は一般向けのコースに変更してもいいですか?」
とか強気に打って出た。
「リフトに乗ったりするけど、怖くない?」
インストラクターのおにーさん、繰り返しますが、わたし、中学生です。
キッズ扱いせんとってください。
――6年生だとゆー、わたしよか背のおっきい男子ににらみを利かせつつ、「うん。怖くないですよ」 なんて余裕ぶる。
「じゃあ、ボクも。午後は一般に行きます」
「あ、オレも」
男子2人が追随を宣言。
なんじゃコイツらぁ。
ちっとばかり、わたしよりターンが上手くて、八の地すべりもサマになってる。やからって対抗意識燃やしてんやないよっ。
「おねーさん、リフト乗ったコトないんでしょ? ……降りるときゼッタイ転んでリフト止めるパターンだな」
「朝から何回転んでたっけ? 23回は転んでたよね?」
なッ、はっ、ハラ立つう~!
細かく観察してやないゾッ!
わーったよ、魔女っ子の負けん気を見してやるから覚悟しろよな! 颯爽としたすべり見て悔し泣きすんなよ?
インストラクターのおにーさんが何か叫んでる。
大丈夫ですよ。わたし、ガキやありませんので、挑発行為には乗りませんッ。
……見てろよ、午後ぉ~~。
年上の華麗な滑り、見してやるけんね~~。
「暗闇姫さんっ。右、みぎいッ」
「ん? 右?」
ふらふらと、かなりスローな直滑降でぶつかったスキーヤー。
「アデッ」
「ハローハナヲ。オマエはもー死んでいる。なんつて」
「……シータン。……なんでココに?」
「あんな新婚気取りのラブラブハウスに居てらんないです。なのでハナヲの後を追い掛けて参りましたとさ」
あーそー。……ところでスキー場でもドテラなんだ。
って、とりあえず。
雪に埋もれた左腕と、知恵の輪みたいに絡まり合った両脚、何とか解いてくれませんかね?
「――それで? ルリさまは?」
もー、一切驚かんからね、わたし。
いったい何処に転移の穴を開けたんやて。
教えてみ?
「山のてっぺんのー。ロングコースのー。どっかの林の中のー」
「だーら。それで、ルリさまはッ?」
「ハナヲが寂しがってると思って、撫花さんも引っ張って来ました。締め切りがなんとか、かんとか騒いでましたが。息抜き必要でしょうし」
「そーれーでー?! ルリさまと――な、な、なぬう、零一さんもッッ?!」
「きゃあー大声コワイー」
ぐうううぅぅっ、わざとらしい!
早く現地に連れてけッ!
録画してた邦画を見てて遅れました。
面白かったです。
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【以下テンプレあいさつ】
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暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして香坂くら、感謝・感激いたします。




