31 暗闇姫家12月23日
一日空きました。
新規ブクマ有難うございます。
異世界魔女っ子たち、地味系・日常系・ファンタジーなラブコメ。
午後6時。
家に帰り着くと、陽葵と惟人が出掛ける準備をしてた。
え、ナニユエこんな時間に?
問い質すと、
「冥界のバイトを再開したんだ」
と惟人。
陽葵もコトバを継ぎ足す。
「冬休みいっぱいは住み込みで働くから。家のコトは任せたからね、ハナヲ姉」
おいっ聞いてないぞー?
「暗闇姫家は存亡の危機なんだ。一家総出で掛からないと、この難局は乗り切れないんだよ」
存亡の危機ってそりゃ大げさな。
「ハナヲ姉だって、こんな時間までバイトしてたんやろが」
ええまぁそーですが。
今日から(撫花)霊一さんトコで、マンガ描きのアシスタント……の真似事を始めました。でもこれは南田センパイにも頼まれてやってるコトで、水無月マナとの同人誌づくりを目指した、ゆわば部活動みたいなもんで。
「決してアソビ気分で通ってるんやないけど、バイトってゆってしまっていーものか」
「つまりは無報酬……と?」
「ノーです……」
ピラリと5千円札を披露。
ふたりの目が輝いた。
「おーッ」
「あくまで謝礼ってカタチやけど」
「謝礼でもお詫びでも、この際なんでもいい。とにかく収入につながってんなら、それでいいんや」
いいんかい。
「でもさ。惟人はともかく、陽葵はバイトなんてしたコト無いっしょ? ましてや冥界でのバイトって……」
「惟人やハナヲに務まって、わたしに務まらんハズがないやろ。楽勝や」
「サラさんあー見えて、オニ悪魔やで?」
「余裕や。黒姫やぞ、わたしは?」
黒姫やからって関係あるかなー?
逆にサラさんは容赦せんと思うでー?
「けどもさ」
「しつこいな」
「冬休み、生徒会活動はゼンゼンせんの? クリスマス明けにスキー研修ってあったやん?」
そしたら陽葵がブスッとして。
「わたしと惟人、今回の生徒会選挙は不出馬やったんや」
「なっ……! 生徒会選挙? そんなんあったん?」
「生徒会長に諭されてね。欠席日数の多さが尾を引いたみたい。ただでさえ1年生だし、立候補しても落選する可能性が高いってさ」
負けると分かってる戦はしない。そんなニュアンスの発言をした陽葵は続けてこうもゆった。
「――来年の選挙は必ず打って出る。中学校を牛耳ったる」
……わたしが異世界でコレットさんとモメてた頃に、そんなコトがあったんか。
「知ってて昨日、残念会を開いてくれてたんと違うの?」
昨日……って、スーパー銭湯とヨンキュー行ったのが?
「――あ! あ、アハハハ。そーやった、そーやったねぇ!」
迂闊!
わたしとしたコトがっ。
主催者はシータンか、それともルリさまか。昨日の会の目的をわざとはぐらかせてたんなら、とっちめてやるかんなッ! ……ってどっちにしろ、わたしのうっかりが招いたオチか?
ふたりが大荷物を持って出て行った後、入れ違いにコレットさんと瑠璃さんが帰って来た。
キッチンにある冷蔵庫が異世界への出入り口になってるもんやから、ポツンと独り夕食のの支度をしようかって食材出しかけてたところ、突然勝手にドアが開いて。もう驚いたのなんのって。あとちょっとで攻撃魔法行使しそうになっちゃったよ。
「……どーかした? ヘンなポーズして?」
「ウラトラマンってヤツか? スペシャルム光線」
ごめんなさい。それ、カン違いです。ビックラしただけです。
「いいゲームソフト売ってた?」
「……動画配信はヤメだ。フツーに日銭稼ぐ事にする」
「えー。けどもファンもついてたやん?」
「チョーシこいてただけだよ、あたしら。ホントにこの稼業で生活できてる人って桁違いの数のファンがいるんだって、つくづく実感したわ」
「じゃあなんで異世界に行ってたの?」
コレットさん、咳払いして。
「撫花さんにお詫びに行ってた。ハナヲちゃんが帰る姿を見届けて訪問した」
え、わざわざ?
ふたりの様子を見るに、要は恥ずかしかったようだ。わたしに見られたくなかったんだろ。
「何年かけてでも、とにかく弁償する。保険がどうのとか言ってたがムズカシイ話はオレには分からないし、どういう条件だろうと甘んじて受けるつもりだ」
あーそれきっと。
損害保険だか火災保険だかの話したんだろうと思う。
わたしもあんまし詳しくないのでかいつまんで説明した。
「ダメだ。オレが全額弁償すると決めたんだから、第三者に払って貰う必要はない」
「いやだから。弁償は弁償でしたらいーから。保険制度は日本の仕組みで決まってんの」
妙に頑固なところ、やっぱし惟人とソックリ。そりゃま同一人物だからな。
3人で食卓を囲んでると、シータンとルリさまが参戦した。
魔法学校も無事後期試験が終わり、冬季休校期間に入ったようだ。ルリさまは嬉しさ半分、大量の宿題を抱えてげんなりしてる。
「動画配信、辞めちゃうって! どーゆーコトよ!」
「どーもこーも無し。あんなに低収入な商売なんてあり得ないわ」
ルリさま同士の会話、ややこしい。お互いにそれをあんまし意識してない……とゆーか、同一人物だって、気付いてすらなさそうなところが更にややこしい。
「ドントオーリーですよ、コレットさん。わたしたちも動画づくりに参加します」
そーゆーは、シータン。
「そうは言ってもな」
「これならどーですか?」
夫婦の前で手品に見せかけて火の玉を作ったり、堂々と魔法を披露し始めた。オイオイッ。それならわたしもできるとルリさまも。コラーッ!
「スゴイな、君たち。まるで魔女だよな。……ん? 魔女?」
「要らんコトは思い出さんでいい。アンタらはわたしの親戚。だけど異世界人。ただそれだけ」
「え? 勇者ですよね? コレットさんは。で、魔女の仇てき……フゴッ」
黙れッ、シー公! サルグツワかまそーか!
恐る恐るコレットさんらを見る。
「あー、オレそーいや勇者してたんだっけ?」
「で魔女たちの協力を得てアステリアを繁栄させようとしてんだよね」
「そうそう」
あらら。
おふたり、チョー都合良く記憶改変してくれてる?!
わたしの設定変更、そこまで万能なん?!
自分で自分の才能がコワッ!
昨日はお仕事で三重県に。で本日帰宅、やっぱ家がいいですねぇ。
ではまた次回。




