表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
はっき 夢の世界のわたしは過去のわたしでもあって別の人生を歩んでる愛おしい人でもあって。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

292/326

30 ヨンキューの悲劇

異世界魔女っ子たちの地味系・日常系・ファンタジーラブコメ。

ナノデス。


 2学期の終業式を終えた帰りに、最寄りの新石切駅から10分ほどの距離にあるスーパー銭湯に立ち寄った。


 自宅風呂が壊れたわけでもないのにね。暗闇姫家はじまって以来のゼータク行為だよ。


 一緒に下校する陽葵と惟人のふたりに加え、シータン、ルリさま、かんなぎリン、南田センパイ、水無月マナ、それからコレットさん、瑠璃さんとも駅で待ち合わせして、なかなかの団体さんになった。


 もともと企画したのは瑠璃さんで、動画配信で予想以上の収入を得たらしく、気を大きくしての剛腹ぶりで、銭湯訪問を提案したかんなぎリンに乗り、ドーンとサイフのヒモの大開放を行ったわけで。アベノミクスか神武景気かってとこ、願わくばバブル景気にならないでねと。


「わたしも動画配信の仕事しよっかなぁ?」


 岩盤浴温泉が売りのお風呂はとっても広くて快適。湯船に浸り極楽気分でのたまった南田センパイに対し、かんなぎリンもゆったり気分で同調。


「そーですねぇ。漆黒(ノワルディジェ)姫さまの言行録とか、普段の生活を再現V化して配信したらそこそこマニア受けするかもですしねぇ」

漆黒(ノワルディジェ)姫っつったら正冠さんか。かんなぎちゃんって、大金持ちのお嬢さまに仕えるスーパー小学生だっけか? 学校通いながらって大変だよなぁ」


 いやいや実際そんな小学生いないですけどねー。と横聞きしながら胸の中でツッコみ。

 ま、他愛無い話だよねと放置。


「はにー。ゴクラクやぁ」


「ねぇねぇハナヲ、撫花さんとはあれからイイ感じに進んでんの?」

「進むも何も、()()()()とはそんな関係や無いから」


 ルリさま、じっくり2秒の間を置いて。


「れ、霊一さん?」

「うん。撫花零一(ぶけ・れいいち)さん。明日から漫画描きの手伝いする約束してる」


 かんなぎリンと南田センパイがわたしを押さえつけて湯に沈めた。


「何だと、零一さんのシモのお手伝いするためにお泊りするだとぉ?!」

「うわっぷ、わぷっ、んなコトゆってないッ!」

「てかてかっ、零一さんっていったいダレなんですかぁ? センパイの新しいセフレですかぁ?!」

「こんなナイチチでノーサツ篭絡できると思ったら大間違いだぞッ!」


 真剣にアホだ、コイツら! ダレか助けれろッ!


「女を泣かすサイテーな女がひとり。お風呂の藻屑と消える。アーメン……合掌」

「消えてたまるかあっ、シータンのアホッ! 眺めてないで助けろ、ブフッ?!」


 お湯って結構凶器なんですね。息苦しいの、なんのって、そりゃもーハンパなし。


「わーん、ハナヲセンパイのあほんだらぁ。わたしというカワイイ後輩がいるクセにぃ。知らない所でで愛人2号作ってたなんてぇ」

「暗闇姫。こーなったらわたしと心中しよう。そして来世で今度こそ結ばれるんだ。むろん女同士でも一向に構わんぞ」


 あーもーいっそ、好きにして。

 馬乗りの幼女と、割とボインボインの女子のふたりにもみくちゃにされ、ここは天国なのかはたまた地獄なのか。薄れ行く景色にお別れです。



◆◆



「あー。大変な目に遭った」

「ハナヲセンパイの自業自得です。手当たり次第に女の子を食い物にするからいけないんです」

「まだゆーか?」


 かんなぎリンのちっちゃな膝枕で横になってると、シータンがそばに。ちょこんと正座。


「ハナヲ、コレットさんがヨンキュウに連れてってくれるって」

「よ、ヨンキュー?! そこの交差点とこの、高級回転寿司屋さんやんねー!」

「わ、わ、わ、わたし。お寿司なんて食べたコトありません」


 いやいや。そーはゆーなよ、シータンさんや。

 それはあまりに悲しすぎですぜ。だって4ヶ月ほど前に無添こら寿司に行ったよねぇ、シータンの誕生日に!

 とゆいつつ、わたしも風呂酔いがとたんに回復したってばさ。



◆◆



「存分に頼んで食え」

「いーの? ワーイ」


 その日の暗闇姫家はレッツパーティ、フィーバーフィーバー!


「暗闇姫ハナヲ、有難う。久しぶりに悪くない思いをした」


 コレットさんがボソリと話し掛けて来た。


「オレ、例の女に家の修理代を弁償しようと思う。そしてやり直す。瑠璃にも了解は貰った」

「それって、異世界に帰っちゃうってコト?」

「まぁそういう事になるかな。こっちの世界はそれなりに良いところだが、やっぱりオレは元の世界が性に合ってるしな」


 瑠璃さんの魔力で、霊一さんのいる世界を経由して、並行世界のアステリアに戻るつもりだそうだ。


「暗闇姫ハナヲにも、少しでもお詫びとお礼がしたい。今夜は大いに楽しんでくれ」

「……うん有難う」


 わたし案外、うなぎ好き。食べてぇ、お茶すすってぇ、また食べてぇ。

 ホント、楽しかったよぁ。


 そう。

 ――お会計するまでは。


 瑠璃さんが震える声でわたしに耳打ちしてきた。

 血の気を失っているってのは、まさにこんなカンジだよねぇ。


「ハナヲさん、お金幾ら持ってる?」

「そ、それ、どーゆー?」

「日本の物価ってこんなに高いの?」


 動画配信で稼いだってゆーお金、実は3万円弱ナリ。

 な、な、な、なーッ! もっともっと稼いでたんやないのっ?!


 だってまるで人生の勝ち組みたいな態度やったやん?!


 コレットさんを目で追う。

 ――いた!

 端っこの方の席で小さくなって。伝票眺めたまま、真っ白に燃え尽きてた……。


 ち、ち、ち、ちょっと待て!

 さっきのお風呂屋で1万円、そんでもって、ここヨンキューで――。


「3万3千円! 足して、4万3千円ーッ?!」


 ……世の中、そんなに甘くアリマセン。


「ハナヲ、最後にみんなで大トロ食べてで締めましょう!」


 シータン、わたしを殺す気か―ッ!


次回もどうかよろしくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ