27 暗闇姫家、12月9日
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメっ。
すったーとぉ。
12月に入り、期末考査もどーにか終了。
なんと! わたしは今回、赤点がひとつも無し! めでたく2学期を乗り切ったのでしたー。
ヤッター! ばんざーい、ばんざーい!
嬉しくってリボルトセンセにも電話しちゃったくらい。
『良かったなぁ、さすが我が至高のヨメ・ハナヲ姫だぜ!』
何か話すたびにわたしの呼称レベルがアップしてない?
もーいい加減、ヨメ呼びヤメテ欲しい。っゆったらホンキで泣かれそうやが。
ところで彼は現在、アステリア国内で近衛兵長を務めている。役目上、領主のサラさんとも話をする機会が多いようだ。
『姫殿下に聞いたんだが、妙な夫婦が新しく同居人になったんだってな? 正体は惟人とココロクルリだって言うが、トラブルなく暮らしてるのか?』
「うん、まーね。最近は動画配信に熱を入れてて、それなりのファンも獲得したみたい。瑠璃さんとコレットさんの夫婦漫才みたいな掛け合いも好評だし」
コレットさん、不愛想ながらそこそこのイケ男なので一部の女子にウケが良く、その彼に対して瑠璃さんの健気ぶりとかちょっとSな言動に必死に受け答えしてる様子とかが、これまた一部の男性の琴線に触れた……らしく。更にはコレット派と瑠璃派のコメントバトルがまた面白いと、本来のゲーム実況と相まって一種独特の世界観が世間様に受け入れられてるフシギ。
なお彼らが紹介しているゲームは微妙に古い物が多く、これは暗闇姫家の家庭事情と密接に関係しているんやが、それが逆に若者とゆーより年上層の懐古心をくすぐり、ファン受けにつながってるきらいも有りや無しやの状態……だった。
まーなんにせよ、暗闇姫家の家計にも貢献してくれてる。まさに結果オーライだ。ヨカッタヨカッタ。
『その同居人はいったいどこで寝起きしてんだ? まさかオレが使ってた部屋じゃなかろーな?』
「まさかも何もその通りやで? 1階の和室。しよーが無いやん」
『クッ……とうとうオレの帰る場所が無くなったのか、チクショー』
そーゆいなさんな。
時たま帰って来ていいから。
「お仕事オツカレサマ、リボルトセンセ。そー嘆かんでも、センセのコトは忘れないよ」
『なんだ、その永遠の別れフラグをブッ立てるような物言いは?』
「気にしない気にしない。じゃね」
「あー待て、ハナヲぉ、ハナヲさーん――……」
彼はいいヤツだが調子に乗らせるとトンデモ行動に出るので要注意。
少し冷たくするくらいがちょうどいいのデス。
◆◆
夕飯の準備をしていると、生徒会活動を終えた陽葵と惟人が揃い踏みで帰宅。
ふたりしてわたしを見るなり、妙な顔つきをしている。
「どしたの?」
「……いや、別に」
「ハナヲちゃん、気を悪くしないで聞いてほしいんだ。最近のハナヲちゃん、ちょっとイイ感じに上向きだよね?」
うーん? いいカンジに上向き?
遠回しすぎてナニゆってんのか分かんないぞ?
「バカ惟人。せっかく言うならもっと直接的表現で言わないと、ハナヲ姉にはまーったく通じひんの。ズバリ言うけど、最近ハナヲ姉、特に努力も苦労もしてないのに成績上がったり、今だってみんなの夕ご飯率先して作ったり、しかもやたらと美味しかったり、ひょっとしたら誰かに操られてんじゃないの? って話や」
「はぁ?! 何おっしゃいますですか、陽葵さんッ?!」
「……ソレ、わたしも感じてました。そんなに人間度、女子力向上させてるハナヲは真のハナヲじゃない。エセ・ハナヲです」
シータンいつの間に、どっから涌き出た?!
しかもエセって……。久々に聞いたよ。
「えーと。よく知らんけど、ちびっとサラさんがゆってた。こないだ異世界行ったでしょ、わたし。そんときにタイムオーバーしちゃったもんやから、向こうで暮らす撫花さんって人と入れ替わりしかけたんやって。多少その影響を受けたんかなぁって?」
「ハー、入れ替わりしかけた……? いやいや、入れ替わってますよ?」
「断じて入れ替わってないっ! つかナンナンデスカッ、あなた方! わたしだってチビッとは人知れず努力だってしてんし! 昨日より明日、明日より明後日、日々ショージンを重ねてるんだもん!」
しらーっと一同。
うっはー。
「――いいわ。ハナヲ姉が大丈夫ってんなら、それで。けども、少しでも異変感じたら言うんやで?」
「らじゃあです。陽葵」
◆◆
――後日。
気になるので、個体スキル内視鏡を有するかんなぎリンに検査してもらった。
「唯一無二のハナヲセンパイで間違いありません。微量にその撫花さんの成分が混じってますが」
「その微量ってんのがやや気になるけど?」
「閾値以下ですし、心配するほどのものじゃないです」
――けど、撫花さんの気が混じってんのは確かなんだよね?
それはジジツなんだよね?
最後まで読んで頂き有難うございました。
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暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして香坂くら、感謝・感激いたします。




