22 3年目の本気
更新遅れ気味すみません。
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメなのです。
今日もどーにかスタート。
朝の明るい陽の下で見た勇者、コレットは、正直ゆって薄汚かった。それにちょっち臭う。
「うう。ここに来て、いったい今日で何日目なん?」
わたしが質問すると、ルリさまに「あっち行ってろ」と指示。ボサボサ髪を搔き上げながら、
「ナディーヌ姫。オマエの言いたいコトは分かる。でもオレたちは金目的で魔物を襲っているんじゃない」
「でも時代の波には逆らえないよ。てか、アンタらへの出資元なんてあるの?」
そんなコトを確認したいわけじゃなく。
どうして彼らが魔物を必要以上に敵視しているのか、それを知りたかった。
「勇者の成れの果て。憐れんでの発言か。そういうコトなら大きな見当違いだ。オレは光の加護を受けている。天よりの使者と呼ばれたりもする。特別な存在だ。だからこそ、生まれついての使命は重要なんだ。魔物族に片足を突っ込むオマエなぞには分かるまい」
それ、わたしにゆってんの? それとも自分に言い聞かせてるの?
傍で見てると結構どころかすごーく辛そうだよ?
ゆいにくいけど、オナカ鳴らしてるし。かなりハラペコだよね?
「使命……はいいよ。ひとまず理解するよ。でもさ、オフロとか食事とかはちゃんとしなきゃ、でしょ? 特にココロクルリさんは女性だしさ。気遣ってあげて欲しいんやけど」
当のルリさまがアンパンをひとつ持って来た。
「コレットは、わたしにはシャワー室のあるネットカフェでの寝泊まりをさせてくれてる。オマエにとやかく言われる筋合いはない」
今の会話、聞いてたの?
ルリさまが渡そうとしたパンを押し返し、「オマエが食べろ」とコレット。
逡巡したルリさま、半分こにして彼に。それでも拒否されたので彼の上着のポケットにサッと押し込んで離れた。
ふたりの様子を一部始終見ていたわたしは何故か少しだけホッとした。
「――で? あくまで戦うってんの? でもさ。次は多分わたしに勝てないと思うよ?」
強気発言で激高させ、相手の動揺を誘う。サラさんにゆわれた戦法だ。でも心の中では後悔しまくり。だってコイツ、無表情なんだもん。逆におとろしい。コロサレルよーと全細胞が叫び声をあげてる。
「いーや。もういい。話はついてる」
「――へ?」
コレット、勇者の剣を現出させると思わせた右手で、ルリさまからもらったパンを取り出した。彼女をひと睨みしてからそれをかじる。
「もう一人のナディーヌが投降したんでな」
「もう一人のナディーヌ?」
「ソイツの半分は、かつてレインツと呼ばれた男だ」
アタマの整理に数秒時間が掛かった。
「え……えと。それって撫花さんのコト?!」
「ああ」
と、投降したってどーゆーコトだ?!
「アンタ……もしかして彼を殺したんかッ……?!」
「だったらどーする? かたき討ちするか? それとも黒姫の代わりにオマエもオレに首を差し出すか?」
「なっ何やと……!」
「――冗談だ。正確には説得された。『キミの力がムダに消費されてもったいない』ってな」
モッタイナイ?
モッタイナイお化けと掛けてるのか……ってのは冗談として、撫花さんが勇者を説得したってのは……?
「まず大前提なのは黒姫だ。あの子供……えーと、陽葵ちゃんは黒姫じゃない。黒姫はこの世界……正しくはこの時代に存在していない」
「コレット、それってどういうコト?! あたし、ちゃんとヤツの思念波を捉えてここに転移したよ?! 手抜きなんかじゃないよ?!」
「喚くな、ココロクルリ。別にオマエを責めてるワケじゃない。確かにヤツの魂はこの世界、この時代に居た。だがすでに別の世界に移ったらしい」
「勇者がキライやから逃げたんじゃない?」
「有り得るな」
イヤミのつもりでゆったのに受けスルーかよ、ハズい思いしただけかよっ。気遣えよっ。
「すべてレインツが仕組んだコトだ。――いや、ナディーヌと言うべきか。彼はレインツとナディーヌ、両方の素地を持っているからな。――で、オレには人族は殺せない。幾ら魔女の系統でも半分は人族の血を持つ者を殺す事は出来ない」
「彼が黒姫の魂を逃がしたと? でも彼、そんな能力持ってないでしょ!」
「だから冥界の女に頼んだんだろ。冥界なら魂の操作はお手の物だ」
そう言ってコレットはダンボールを片付けだした。
「次の世界に跳ぶぞ。ココロクルリ、用意しろ」
「え、あ、はい……」
チラリとわたしを見る。
「コレット」
「なんだ」
「ルリさまはオマエが苦手だ。もうそろそろ解放してあげて」
「ダメだ。ココロクルリはオレのヨメだ。身勝手は赦さない」
「身勝手ってゆーなら、コレットだってそーやないの? 好きでもないクセに便利だからって理由だけでルリさまを連れ回して」
え?
とゆーカオをするコレット。
「何を知った風な……」
「だってそうなんでしょ?! ルリさまだってひとりの女の子なんだよ? ルリさまにだって心がある。まるで道具みたいに自分勝手に出来るって思ったらアカンねんぞッ!」
溢れ出す罵倒。夫婦ゲンカは犬も喰わない? 知ったことか!
彼が敵視する、魔女仲間のガキが説教垂れてる。きっとはらわた煮えくりかえってるに違いない。わたし、ブチキレた彼の攻撃を警戒した。こーなりゃ徹底的にやっちゃる!
「いや……」
「んー? いや?」
「いや。オマエの言う通りなのかもな……と。確かにオレ、最初は便利なヤツだから殺さずに置いた。魔女なんだから気を遣う必要なんて無いともな」
「酷い……」
ルリさま、涙ぐむ。
「でもいまは違う。ココロクルリはオレにとって、無くてはならない存在だ」
グイ……と彼女の肩を引き寄せる。だけど抗われた。ビビって身を引かれ、唖然としたコレット。思わず添えた手を放す。
「そうか。オレ、実は嫌われてたのか。今まで全く気付かなかった。……スマン、オマエはたった今から自由の身だ。有難う、今日までとても良く尽くしてくれた。心から感謝する」
深々とアタマを下げる。
そしてそのまま立ち去ろうとした。
「ま、ま、ま、待ちなさいよ!」
「……なんだ?」
「な、な、な。何だは無いでしょ! どーしてそんなにドライにふるまえるのよ! つまりはあたしのコトはこの子の言葉通り、どーでもいい便利道具のひとつだったんだね?!」
「……」
「あたしはあなたのコトが好き! でもあなたはとても怖い人。いつでもあたしを捨てて、次の道に進める人。……でも。でもね! あたしにはムリなんだよ、そんな器用で格好いいコト、マネ出来ないよ。このまま見捨てるってんなら、いっそあたしを殺してよ! あたしの親友だったシンクハーフみたいに!」
この間、コレットはルリさまを熱心に見つめていた。わずかに悲しそうな、申し訳なさそうな目をして彼女の想いを聞いていた。
「……済まん、それは出来ない。だが生まれ変わった彼女になら会わせてあげられるかも知れない」
「な、何よ、それ?!」
いや……その……と珍しく口ごもるコレット。
「遠回しに再プロポーズ、してるつもりなんだが」
照れながらも、彼の目はルリさまから決して外れなかった。
「あたしたちは、まだ夫婦なんだよね?」
「ああ。オレはそのつもりだが」
「このォ、格好つけのバカヤロー!」
初めて彼に対してルリさまが見せた笑顔だった。
ココロクルリ
恋愛ドラマってフシギですね。
今回のようなシーンを書くときはわたし、事前に筋書きはあまり考えません。
キャラの動くままに任せてます。なので作者なのに「どーなんの?」とドキドキします。
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【以下テンプレあいさつ】
最後まで読んで頂き有難うございました。
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暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして香坂くら、感謝・感激いたします。




