20 大人版ルリさま、公園で大の字になる
17万PV達成、有難うございます。
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメですっ。
なかなか絵が入れられなくてごめんなさい。
「あの、ごめん。聞き間違いやと思うから、もっかいゆって?」
「だから! 勇者コレットはあたしのダンナさまっての!」
「へー……。ダンナ、さま?」
「ダンナ! さま!」
「ダンナさまって………………夫?」
「それ以外にあるなら逆に教えて」
は、はあああぁぁぁ?!
「ポーくんは? ポーくんはどーしたん?! 別れたんかいっ?」
「ダレよそれ。チョー国籍不明じゃん」
「てか、ルリさま、コレットはアンタがあれほど毛嫌いしてた勇者なんだよ」
「ルリさま言うなって!」
「どーゆー経緯で仲良しになってゴールインしたんッ?!」
「ゴールインとかショーワかッ。黒姫の裏切りでシンクハーフが殺されて、あたしは勇者に捕まった。永遠の服従を誓わされて現在に至る。それだけよ」
え、永遠の服従……。
心臓がバクバクしてきた。それ、色んなイミで重いぞ。
「興奮してバカみたい。とにかくあたしは勇者コレットに隷従の呪いをかけられて一切の反抗も、抵抗も出来ない魔女失格のクソ女に成り下がった。それならいっそ、勇者の片棒担いで魔女狩りしてた方が爽快で楽しいし。魔女とか魔物ってさ、死ぬときに必ず口をつぐむんだよ。知ってた? 何故だか分かる? 悲鳴上げたら魂の根がこぼれて永久消滅しちゃうからなんだよ。――だからさ、あたし、黒姫殺すときには大口開けさせて、わーわー泣き叫けばせてやるんだあ」
ルリさま……。
「ん? オマエ泣いてるの? なんで? アタマでも打ってオカシクなったの? やーだ、まだあたし、ゼンゼン本気出してないのにビビっちゃったとか? でも許してあげなーい」
ゆっくりこっちに向かって歩きだしたルリさま、消えた。
――と思いきや、背後に気配。ドン! とオシリを蹴られた。
「クッ?!」
振り返ったときには当然もういない。
今度は足元にしゃがんでいた。大股で離れようとしたら足首を掴まれて倒された。瞬時に馬乗りになられる。
暗闇姫家のルリさまよりも数段個体スキルのレベルが上だ。
ボコッ、バコッと顔面殴打を受ける。両肘でのガードが精一杯、鼻っ柱に衝撃を感じ、頬から眼元にタラっと熱いものが垂れた。多分鼻血だ。
「オマエさぁ、どーして防御魔法使わないの? ナメてるの?」
「だって。まだ全部教えてもらってないから!」
「フーン、何を?」
「黒姫がどんな裏切りをしたのか」
拳を止めるルリさま。
みるみる憤怒の表情になる。
「はあああっ?! はあああっ?! オマエさぁ、ナディーヌなんだよねぇ?! オマエがそんなコト言うのか?! サイテー、ホント、サイテー」
上半身をひねって力を溜め、思いっきり体重を乗せたパンチを打ち下ろして来た。
「うわああっ」
大きな動作だったので避けやすかった。
外して地面をしたたかに殴ったルリさま。
「いででででッ! 避けやがった、ちっくしょー、避けやがったぁ!」
苦痛にのたうつ彼女の首を掴み、ひっくり返す。
「静止命令!」
早口で叫ぶ。
身動き不可の魔法をかけられ、ビタッと地面に張りつくルリさま。
「し、しまった! ううっ、クソぉぉ!」
「聞かせて。ルリさま。昔に何があったのか」
「昔ィ?」
「どんな裏切りをされたの? 黒姫に」
「ま、まだ言うか」
「わたしはこっちの世界の住人違うんや。なのでこっちの世界の事情は知らん。けど文句あるんやったらちゃんと聞いたる。それがルリさまの悲しみの原因なら、なおさら聞いたる」
むき出した歯をわななかせて固まるルリさま。
そーか。まだ口を割らないか。
「ワーッ! こ、こ、このぉ、ヘンタイガキい!」
「ホレホレ、思いっきり揉みしだいてやるッ! いつの間にこんなにデカくなりやがったんや! わたしの世界のルリさまはツルペタさんやのに」
「やめろやめろッ」
「ホーレホレ、ホーレホレ」
「くっ、くすぐったい! やめろぉ!」
揉むとゆーより、くすぐり攻撃だ。何も痛い目合わせるだけが拷問やないっ。
ちょっと休憩。大人バージョンルリさま、ヒーヒー息絶え絶え。やや回復したところで再開。
「分かった、分かったぁ、死ぬう、もうダメぇ」
◆◆
「――フーム、なるほど。黒姫の命令でとある砦に集まったところ、待ち構えてたように一斉攻撃を受けたと。そんでその命令を伝えたのがナディーヌやったと?」
「攻撃を受けたとき、ナディーヌは真っ先に逃げ出した。それを引き留めたのがシンクハーフよ」
「で、どうなったん?」
「ナディーヌは行方知れず。シンクハーフは首を獲られて城門前にさらされた」
え、えげつない……。
シータン別世界でも大変な目に遭ってたんやね……。
「でもさ。その筋書きならわたしの世界の過去でもだいたい似た状況やったよ」
敵方が策を弄して魔物軍を包囲、殲滅した。
「こっちの撫花さん……えーとナディーヌさんはきっと罠にかかったコトを知って即時降参の交渉に赴いたんやないかな? シータン……えーとシンクハーフさんは同行を願い出た。けれども事態は悪化、シンクハーフさんは殺され、ナディーヌさんは監禁された」
「……よくもまぁ、そんな都合のいい解釈が出来るわよねぇ」
「だってさぁ、敵同士を仲違いさせた方が戦いを有利に運べるし、例えばふたりとも殺しちゃえば最後の抵抗に手こずるかも知れないし」
「ハハ。つじつま合わない事いうよね。降参交渉しに来たナディーヌなのに、敵はどうして監禁する必要があるのかしら?」
「だって。敵は魔女を根絶やしにしたかったんじゃないの?」
「――え?」
「でさ。肝心の黒姫はいったいいつ殺されたの? ルリさまはそれを知ってるの?」
「――あ? え、えーと……」
わたしが思うに黒姫は早々に討ち取られていた。
ナディーヌは虚偽の命令を受け取って、反転攻勢のために仲間を一か所に集めた。
そしてそれは敵が仕組んだ罠だった。
敗北を覚ったナディーヌは降伏交渉に向かい捕まった――そんなとこだろうか。
ルリさまは当時の状況を記憶の底から掘り起こそうとしているのか、眼を広げたまま動かなくなった。
ところで彼女は未だ静止命令の制御下で地面に大の字で寝そべっている。
さっき犬を連れたお年寄りが、物の怪でも見るような目つきでそそくさと通り過ぎて行った。それでも微動だにしなかった。
「――ルリさま。わたしオナカへった。奢っちゃるからゴハン行こ」
訪問してくれている方はお話を読むためなのか、絵を見るためなのか、はたまたその両方なのか。
文も絵も思うがまま載せたいんですが、ホントに遅筆かつテキトー人間ですみません。
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最後まで読んで頂き有難うございました。
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(付けたブクマはなるたけ剥がさんでね)
暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして作者の香坂くら、感謝・感激いたします。




