18 サラ17歳、ツインルームを予約
出張先のビジネスホテルからお送りします。
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメっ。
すったーとぉ。
「謎なのは、勇者コレットがどんな方法を使ってこの世界に来たのかよ。通常異世界同士の通行を管理するのは冥界の役目だから。冥界が関知しない異世界交流は本来あり得ないことなの。――特殊事情の無い限りはね」
サラさんのゆー特殊事情ってのはこの場合、暗闇姫家の事例を指している。
我が家のクローゼットとつながっている異世界アステリア。
暗闇姫一家が利用する最寄り駅のエレベータとつながっている冥府庁。
そしてもうひとつ。ひとりの魔女っ子の存在だ。
「――ルリさま?」
「そうね。魔女ココロクルリは個体スキルとして転移の能力を有している。もし仮に並行世界であるこの世界に、彼女の同素体のような存在がいれば、あるいは可能なのかも知れないわね」
「わたし、イングリッシユは苦手です。もっかい日本語でお願いします」
「日本語よッ! よーするにわたしの言いたいのは、ココロクルリのクローン的なヤツがいて、勇者コレットと結託していれば、転移を行なうのは容易いってハナシ」
暗闇姫ハナヲがふたりいるように、ルリさまがふたりいたってオカシクないと。現にコレットだっていたんだしね。
「ただね。姿かたちや特技は同じでも、性格が異なる可能性は大いにあり得るわよね」
「それは検証済みです。勇者コレットは暗闇姫惟人とゼンゼン違った。ってコトは、ルリさまも?」
「だいたい魔女が勇者に加担してるって時点であり得ないコトでしょうが」
まーねぇ。
けどわたし、以前魔女っ子のクセに勇者を助けたりしましたが? などとは、わざわざこんなタイミングでゆわない。
◆◆
わたしとサラさんは、撫花家近隣のビジネスホテルに泊まることにした。
陽葵さんの母親も撫花家にご厄介になるのを拒んでいたが、自分ちがあんなような状況じゃどうしようもない。仮住まいを見つけるまで――とゆう条件付きで、陽葵さんのお願いもあり、撫花家に暫らく滞在するそうだ。
「シングルルームは無かったの?!」
「部屋予約したのはサラさんですよ?」
「だから独り言! あなた、女の子になってるからって、昔のオジサン時代の血が騒いで、女の子もウエルカムってコトは無いわよね? ……まさかとは思うけど」
「部屋、サラさんが予約ましたよね?」
「だから独り言って言ってるじゃないっ。この部屋からだと撫花家が遠望できるからって思ったの! あなたとふたりで泊まりたかったワケじゃないのっ」
……サラさんはときどき、言ってるコトと行動が一致しないときがある。
それは彼女が「失敗しちゃったぁ」と内心ヘコんでいるときに起こりやすい。何事もパーフェクトにこなしちゃう完璧超人特有の、言わば先天的副作用だ。
そんなときわたしは、いつもショック療法でその発作を直してやる。
「えへへへ」
「ギョッ。な、何よ、そのキモイ笑い」
「わたし、ギョッって声出す人初めて見ました。えーと、何を笑ってるか、ですか? そりゃ憧れのサラさんと一緒に寝れる嬉しさがにじみ出たからですよ。それ以外に何があるってんですか?」
「ヒッ?! ま、マジで言ってんの?」
「先にシャワー、頂きます」
「――なッ?! その間、わたし、どーしろってんのよ?!」
チョイチョイと窓を指すわたし。
「撫花家を見張るんですよね? それともわたしにシャワー音を聞かせるために先に入りますか?」
ボッ! っとカオを真っ赤に染めたサラさん。
「ちちちちち、ちょっと待って?! えー……? 先に入ったら音を聞かれる。後に入ったら……?」
「部屋で独りぼっちになります。独りで撫花家を見張るんです」
「バカ! わたしは魔女っ子のあなたと違ってただの魔力保持者なのよ?! もし独りのときに異変が起こったらどーすんのよッ! 先でも後でもイヤだわ!」
だだをこねる子供のようにバンバン足を踏み鳴らして怒鳴るサラさん。
――これでよし。
いつもこうなってから30秒ほどで自動クールダウンして元に戻るんだ。
「――ってアレ? わたし何言ってんだか。まったく年上をからかうんじゃないわよ。ハナヲが先に入ってなさい。異状を発見したら裸でも連れ出すからね」
「はーい」
◆◆
入り口側のベットでサラさんの寝息が聞こえ始めた。
ついさっきまで「徹夜で外を見張るんだ」って頑張ってた。責任感の強さと、元親友の撫花さんを案じてるのと両方だろう。
口に出さねど、わたしはそんなサラさんがカッコイイと思った。
実は冥界にいるキョウちゃんが長文メールくれてて知ってるんだ。
サラさんは、異世界滞在期間延長の手続き忘れを挽回すべく、徹夜で事後申請の書類をまとめ、提出してくれたらしい。ここに来るための段取りも必要だったろうし、通常業務もキチンとこなさなきゃならなかったろうし、相当気を張ったと思う。
「アリガト、サラさん。オヤスミ」
バイト先の上司であり、親友であるサラさん(わたしは一方的にそう思ってる)に、挨拶してそっと部屋を抜け出た。その足ですぐ近くの公園に出向き、自販機でお茶を買う。そして街灯直下のベンチに腰掛け、チビチビ飲みだした。
「うーさっみぃ」
この世界のこの場所は、日本国に照らすと何県に当たるのかよくは知んないが、季節は同じく冬のようで、大きめのコートに大きめのマフラーを巻いてもまだうっすらと寒かった。
特に今夜は風が強めで、例えれば冷蔵庫の中で扇風機の強に当たってる感覚がする。(昭和チックにゆったった)
「オーイ。そろそろ出て来てよ。撫花さんだけじゃなくってわたしも狙ってるんでしょう?」
どこに向かって……とゆーのじゃないが、なんとなーく左右を見渡しながら声を掛けた。
そしたらなんと。
「異空間の魔女と言うからスゴイの想像してたけど、なんと可愛らしい女の子だこと」
わたしの真横にちょこんと。
――スラリとした美人系のお姉さんが頬杖ついて座ってた。
キートップ外れた状態でタイピングするのに段々慣れてきた自分がコワイです。
本日は昼間の仕事の関係で、出張先のホテルから投稿してます。
部屋はシングル! です。だから何やねん。
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【以下テンプレあいさつ】
最後まで読んで頂き有難うございました。
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(出来るだけブクマ剥がさんでね)
暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして香坂くら、感謝・感激いたします。




