17 市立総合病院1F待合ロビー
異世界魔女っ子のドタバタ・ファンタジーラブコメ。
開始。
街中での戦闘は明文化されてるワケでは無いが、当然御法度だ。
何故ってそりゃ周囲への影響が甚大でしょ!
わたし、戦闘前に結界張ってたからまだ被害はマシ……にしたつもりやったけど、若干ケガ人が出たし、建物その他の損害が著しかった。
陽葵さんの母親ん家なんかは室内黒焦げになって、ほぼすべての窓やトビラが破損、さらには壁にはいたるところで深刻な亀裂がはしった。
わたしらは念のため病院で診察を受けつつ、警察には被害当事者として念入りに事情聴取された。犯人につながる有力な手掛かりはつかめなかったでしょうが……。
「消防の人の話じゃ、どうも不法侵入者が何らかの方法で室内でガス爆発を引き起こし、逃げた――というコトになっているそうです」
待合所で合流した撫花さんが耳打ちしてくれた。わたしと陽葵を心配し過ぎて、頭痛が治まらないらしい。額にずっと手を当てている。
「陽葵さんと、陽葵さんのお母さんは?」
「ふたりとも病室で点滴を受けています。警察は犯人の様子を聞きたいようですが……」
うーん。
きっと陽葵さんの母親の方はまったく記憶がないやろね。恐らく推測やけど、催眠術か何かで操られてたと思うし。自分の子供や他人様を傷つけようとしたなんて、思いもしてないでしょう。
陽葵さんは……どうなんだろ。
「あの……。ちょっと聞いていいですか?」
「なに?」
「陽葵のお母さんのコトなんですが」
「あ、そっち?」
勇者コレットのコトを質問するのかと思った。苦笑して答えた。
「……それがちょっと違うんだよね。前世でわたしが知り合った女性は溌溂とした、イマドキ風の人。見た目もずっと年下で……」
20半ばくらいだったかな。ノーテンキに明るい人で、いっつも知らない男と電話で会話してて、楽しそうにしてた。わたしに陽葵を預けっぱなしにして、考えてみりゃ調子よく利用されてたなぁ。……ちょっとお人好しすぎだったなぁって。
「こっちの人とは完全に別人だったよ。容姿も雰囲気もゼンゼン違った。ま、陽葵に対する態度はおおむね似たようなものだろうけどね……」
――あの人、再就職先が見つかったので入社研修会に参加するとかで出掛けちゃって。そのまま帰らなかったな。毎日して来た電話が3日置きになり、1週間になり、1ヶ月……、そんな研修ホントにあるのって疑いを持ったときにはすでに手遅れ。電話もつながらなくなった。
……でも悪いのはあの人だけじゃない。わたしも同じ。今思えば薄々勘付いてたんだ……と思うし。 そのうち陽葵は捨てられるんだろうなぁ……って。なのに。
わたしは、もしそうなったら、いかに陽葵が傷つかないで済むか、そんなコトばかりを考えてた気がする。その女性の心がもういちど陽葵に向く可能性や、もしくはそうするために何か手を貸そうって意志が起らなかった。どーせ陽葵がさらに可哀そうな目に遭うだけ。そう思って親子の仲を取り持とうとしなかった。
それって取りようによっちゃ欺瞞、手前勝手な言い分だよね。
要は、陽葵とゆー幼い不憫な子をわたしが面倒見てやりたい。これはまだまだカッコつけのタテマエで、本音は独り暮らしはただ寂しい。一緒に暮らす家族が欲しい。
そーゆーコトだったんじゃないの。
「……撫花さんはこの後、どーするんですか?」
「成り行きなので、うちに連れて帰ります。形式的とはいえ夫婦になってますし、それに陽葵の気持ちを優先させなきゃですし」
「……そか」
「それとハナヲさん、あなたもですよ? 何たって勇者コレットに命を狙われてるんです。次またいつ襲って来るか分かんないですし、みんなで固まって対処した方がお互い心強いでしょう」
うーん。そうかなぁ。逆に足手まといだよ。
……と喉元まで出かかった。かろうじて止めたのはある人物がわたしらの前に立ったからである。
「あ、サラさん」
「暗闇姫ハナヲちゃん、お久しぶりー、元気にしてた?」
サラさん、そうゆって、まずはわたしをムシして撫花さんに抱きついた。
「あー、サラさんも! お元気そうで何よりです」
ふたりは魔女学校時代の生徒同士、旧知の仲なのだ。
サラさんの中では撫花さんはいつまでも【暗闇姫ハナヲ】、わたしよりも撫花さんとの方が想い出をより多く共有しているに違いなく。しばらく昔話に花が咲いた。
「――で、そっちの暗闇姫ハナヲ! あなたは実に情けなさすぎるわね」
「なっ?! わたしには怒り?! 延長手続きをミスしたのはサラさんやないですかッ」
「その話じゃないわ、勇者コレットと戦った話よ。勝てる戦いを勝たなかった。大いに猛省すべき失態ね。自分なりに問題点を幾つか挙げてみなさい。――さぁ、どうなの?」
な、なんやねん。わたしに向ける態度は、とことん上司と部下の関係なんすね。
「えーと、それってどーゆー?」
「勇者コレットは確かに強い。でもね、それはアステリアでの話。こっちの世界では幾ら勇者でも聖力の維持・供給が困難なはずよ? かたやあなたの方はどうなの? そういうコトを聞いてるの」
「んにゃ? わ、わたし?」
「あなたにはメチャクチャな個体スキルがあるでしょう? 何でそれをもっと有効に使わないのよ!」
――個体スキル、ですか?
ピンチにやっと来てくれたと思ったら、説教。ふぇぇぇ。
暗闇姫ハナヲ叱られる
わたしの別作品が「なろうコン」一次審査を突破しました。
石の上にも3年、入会初期に書いて削除したものも入れると、すでに7年が経過しています。
どうにかやっと、素人創作家の片隅に席を見つけた気がしております。
継続は力なり、しみじみと実感するとともに、関りを持たせて頂いております全ての方にあらためて感謝を申し上げます。
有難うございます。これからもどうかよろしくお願い致します。
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【以下テンプレあいさつ】
最後まで読んで頂き有難うございました。
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(出来るだけブクマ剥がさんでね)
暗闇姫ハナヲと魔女っ子一同、そして香坂くら、感謝・感激いたします。




