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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
にきっ TS魔女っ子の地獄めぐりツアー 昭和のドラマを存分にご堪能できます

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07話 あいつがトラブル なんだろ [ あいつがトラブル ]


(タマシイ)身体(本体)を別々に収監して【七生の刑】受刑者の脱獄を防いでるのよ。こういう話したらハナヲはメンタル弱いから相当動揺するでしょ?」

「何がゆいたいの、サラさん?」


「もう、イヤねー。実はちゃんと察してるクセに。この後の【新月の殺人ゲーム】で部屋を奪われたら、あなたたちを永遠にこの場所に閉じ込めておけるのよ? ――つまりわたしが三途の川でハナヲを生かしてしまった失態がチャラにできるのと、ヒラ・ノリツネ抹殺を教唆、幇助したマコトイトー課長と浄化部の組織的犯罪が隠蔽できるってワケ。そう、死者にクチナシ的な?」


 サラさん……、あんた本当にサラさん本人か?

 あんた、そんな人だったか?


「これで万事解決。――じゃあ、新月戦がんばってね。またねー」


 シータンが、出ていくサラさんを素早く追い越し、部屋を脱しようとしたが、廊下に出た瞬間、石仏のような状態になってバタンと倒れた。


「あーッ、シータン!」

「――よいしょっと。だいじょうぶよ。単にタマシイと身体のつながりが途絶えただけ。部屋に戻しとけばしばらく後に復活するわ。……ああ、そうそう。特例でこの子とあなたを同部屋に登録し直しておいたから、今夜からは新ペアで活躍しなさいな? じゃあ」


「サラさん!」

「……なーに?」

「わたし、サラさんには悪いけど、ゼッタイに生きて日本に帰るから。そしてゼッタイにキョウちゃんを助け出すから」


 何も言わず、相槌もくれないまま、サラさんはトビラを締めた。


 オレは、ブルブル震える両方の握りこぶしを何度も床にぶつけた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――いよいよ新月戦が始まる。亡者らの戦闘能力がMAXになる日。

 この日に先立ち、オレはいろいろ準備を進めていた。

 シータンが興味深げに覗き込んでくる。


「わくわく。戦闘準備ですか?」

「そ。キョウちゃんとわたしで貯めたお金を、ここぞとばかりに使ってん」


 何故かつながるオンラインショッピングサイトで思いつく限りの武器を買い込んだ。魔力節約の援けにはなるはずだ。現代日本では即後ろに手が回る品物ばかりだが。


「……だけどこの九ミリ拳銃、弾丸(タマ)入ってませんよ?」


 ……別売り! やっちまった!


 テンパった末、ちゃんと入手してたのが判明。

 だが次にこれ、八九式小銃ってブツ。


「各パーツがパラバラで届いてますよ?」

「あー……。組み立て方がさっぱり分からん」


「取説は無いですね。同封のメモに『別装で120発まで持てます』」って書いてるだけです」

「なんて不親切! 別装は良いけど弾丸一発100円もしたんだよ! そのクセ取説無いってヒドすぎるっ!」


 せっかく大枚はたいたのに実戦使用はあきらめた。


「ハナヲ。戦う前から生き恥さらしましたね」

「うっさい」

「許可なく死に急がないこと。おしっこちびっても、大きい方を阻喪しても、決して命だけは漏らさないように。分かりましたか?」

「……シータン。……分かった。気を付ける。シータンもな」

「らじゃあ」


 シータンのわざと間の抜いた声と、銅鑼の音が重なった。


「わたしも。らじゃあ。どう、似てたでしょ?」

「おまぬけ顔はハナヲの勝ち」


 照れを軽口で片付け、ふたりして決戦のバルコニーへ。


 【蜘蛛の糸(ジャックと豆の木)】はまだ出現してない。


 ありったけの手りゅう弾を、静けさ漂う底無し穴にぶち込んで大きく息を吸った。


「キョウちゃん、見といてね。わたしだって、やるときはやるから。……サラさん、アンタもな。ゆいたい放題アリガト。おかげで闘争本能おもいっきし掻き立てられたわ! アンタにこれでもかってくらい文句ぶつけるまで、わたしはゼッタイに死なへんからな!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 オフロに浸かったまま、シータンが寝息を立てていた。


 いつまで経っても上がってこないから心配でつい覗いてしまったが、よかった。安心してその場にへたり込んでしまった。オレももう相当クタクタだ。


 気力を振り絞ってシータンを湯船から引き揚げ、どうにかベットまで運んだ。


 そのままリビングに戻ると、崩れるようにソファに横たわった。……ああ、死ぬる。


「……ハハ……生き延びた……。どーにか勝ち残ったで……」


 笑おうとしたら、なぜなのか悲しさの方が先に来た。どんな感情してんだよ、オレ。

 新月戦、オレとシータンはしぶとく生き残ったのに――。


 ――亡者がコインに変わる頃、バルコニーに出ると、オレは拡声器越しに叫んだ。


「みんなーっっ! 生きてるーーっ?! 死んでないよねー?!」


 ――すると。


 暗闇の先で、ポツポツ……と灯火が浮かんだ。()()()()()()()()()。たくさんのバルコニーがボンヤリと視認できる。


 それを見てるうちに「うおおお……」と胸の奥から湧き出るヘンな唸りが止められなくなって、目からもぼろぼろ、ぼろぼろと涙粒がこぼれ落ちるのを防ぎ留められなくなった。


「おつかれさまあーッ、みんなあーッ!」



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