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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
はっき 夢の世界のわたしは過去のわたしでもあって別の人生を歩んでる愛おしい人でもあって。

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06 ひび割れの操縦席

新規ブクマ有難うございます。

異世界魔女っ子の地味系・日常系・ファンタジーラブコメ。

いきまーす。

絵……はどーにか入れましたー。(文末)


 撫花(ぶけ)さんの家の中は暗かった。

 小4の陽葵はまだ帰っていなかった。


 窓の外の洗濯ものが北風に当たり揺れていた。

 リビングに通されたわたしは見るともなく部屋を眺めるうちに、まるで冬の空のように心の内側が静かに透明になる気がした。

 ローテーブルに置かれたココアがフワッと湯気を立ち昇らせていた。


 撫花さんはふすま一枚隔てた部屋にこもっている。

 今日中に仕上げなきゃならない仕事があるそうで、「とっとと終わらせる」との言葉を置いてわたしをリビングに放置した。


 わたしはさっき喫茶店で添削を受けたノートを広げて、赤ペンで足された文字をいちいち目で辿った。


 構図は見開きで考えるコト。

 端的な言葉でセリフをまとめるコト。

 絵で感情を語るコト。


 全部当たり前のコトが書いてある。でもわたしにそれが出来ているか……とても耳が痛い。分かっている。でも出来てない。これが現状。


「漫画の絵はね、頭があってカオがあって。あとは指や手を丁寧に描いてれば、割とそれらしく見えるものなんです。見せコマさえしっかり押さえてれば、案外下手さなんて目立たなくなりますよ――」


 そんな風に慰めとも取れるアドバイスで、彼は指導を打ち切った。そんでここまで連れて来て、そのままわたしを置き去りにした。


 コチコチ刻む掛け時計の針が耳障りになり始め、立ち上がる。侵入を拒むかのようにぴっちり閉じられたふすまを開ける。ゆっくりと。


 中は例えると宇宙ロケットのコックピットみたいだった。多種多様の本が天井まで届く書棚に詰められ、定員オーバーを宣告されたものは床にもこぼれだしていた。パソコンやらオーディオ機器やらが我が物ガオで棚の一部を占拠しているせいだった。


 そんな狭い空間に身を押し込めた撫花さんが「こう」と点ったモニターとにらめっこしていた。

 眼鏡をした横顔はびた一文わたしに関心を向けず、無断入室の咎めも無かった。


「……ここ、座ってもいいかな?」


 彼の真横に小さな机とイスがあった。机の上は雑多な書籍が積み置きされていて、かなり肩身が狭そうにしていた。


「……あ、……いいですよ。……なんですか? 興味があるんですか?」

「あるよ。さっきノートを見られたお返しや。撫花さんがどんなお話を描いてるのか見させてもらう」


 有無をゆわさず横に並ぶ。

 中年独特の汗っぽいニオイが「ムン」と鼻を衝いた。無意識に「スンスン」と鼻を鳴らしてしまい、気付かれたかと眼が白黒した。撫花さんはモニターをにらんでいた。


「歴史物?」

「ええ。歴史ファンタジーお色気忍者ものです。わたしのデビュー作&今回で最終回なんです」

「お色気……、つーか結構エロいよ?」


 主人公の童顔美少女が忍者装束で活躍してるんやが、敵も味方も天下取りよりもその子の貞操を奪う方に熱心やないのか! ってな展開。しかも、幼馴染設定の少年忍者が何とも頼りない。


「ラッキースケベはこの手の作品ではあいさつ程度のお約束ですよ」

「でもここホラ。完全にチューしてるよ?! このコマなんて。大事なところ、触られてない?!」


 ついやかましく指摘してると、撫花さんは黙ってしまった。ペンタブを滑らせる音だけが狭い空間で続いた。


 空気になろうと努めつつモニター画面に没入。

 物語の後半でついに主人公の女の子と少年が愛を確かめ合うシーンに。


 にしても暑い。

 部屋の酸素少ない。

 にわかに息苦しくなった。


「――シンドイならリビングに居てください」

「え?」

「もう少しなので、大人しくしといてください」


 え?

 大人しく?

 わたし、ずっと大人しくしてたよね。

 なんでそんなコトゆわれなアカンの?


「――いや、ダイジョウブやから……」

「ハナヲさん。あなたはあなたの目的を果たしてください」

「――!」


 ちっともこっちに目も向けんとゆわれた。

 な、なんやのコイツ。

 ジャマって?

 わたしがジャマってか?!


「あのさ撫花さん。あなたウソついてない?」

「……え? ウソ……?」

陽葵(ひまり)。ホントに今日帰って来るの?」


 ようやくわたしに向き直った撫花さんの目は、とっても怖かった。

 描く手が止まり、ペンが置かれた。

 掛けていた眼鏡を外し、わたしを凝視した。


「――わたしがハナヲさんにウソをついたと? 陽葵を口実に部屋に誘い入れたと? あなたはそう言いたいんですか?」

「か、カオ! 寄せんといて。そんなんゆって無い。ただ陽葵が遅いから心配ちゃうのって、そう思っただけ!」


 ホントか、わたし?!

 スラスラ口から出た言い訳に自分で驚きつつ、彼を攻める。


「陽葵はホントに学校なん? 小学生やのにそんなに長く留守してるもんなん?」


 わたし、完全に陽葵をダシにしてる。

 撫花さんがタジタジになった。


 突然ガラッとふすまが開いた。


「お父さん。ダレなん、この人?」


 咎めるような鋭い目つきをした陽葵が、わたしたちを見下ろしてる。

 髪の毛を一つ結びしている陽葵、見るからに幼い陽葵がカオを真っ赤にして叫んだ。


「そこ、わたしの席! いったいダレなんッ!」


挿絵(By みてみん)

暗闇姫陽葵

昔書いたエッセイに評価点を頂きました。有難うございます!

それと、ここ何日か当作品への訪問者もおり、素直に嬉しいです。

主人公・暗闇姫ハナヲのウジウジ・オドオドさにそろそろ慣れてきましたか?

ということは、ぼちぼち読み手の一定層が見切られるタイミングだと思います。

もしくは「とりあえずブクマ」の使用期限切れが発生する頃だと思います。

覚悟しとこ。


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以下テンプレあいさつ

最後まで読んで頂き有難うございました。

「良い」と思った方は感想、ブクマ、評価、いいねなどで応援お願いします。

(出来るだけブクマ剥がさんでね)

暗闇姫ハナヲと香坂くら、感謝・感激いたします。

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