05 キレる相手はただのオジサン
新規ブクマ有難うございました。
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメ。
今回も発信ゴー。
「いま……レインツってゆったか?」
「はい。レインツって言いました。事実ですから」
……あぁ……レインツ。
前々世でわたしの夫やった人物や。
昔、ノエミ・ブーケって名乗ってたときにメッチャ好きで、好きで、好きで。しょーがなかった男の人や。
「それは嘘や。……キミはレインツとちゃう。なんでって、レインツはそんなにオデブちゃう」
「オデブに転生したんだから、それは仕方ないですよ」
「……レインツはもっと若い」
「ハナヲさんと生まれた時期がズレちゃったんですから、それも仕方ないコトですよ」
「だって。だって。レインツは、マンガ描かへんもんッ!」
何でか知らんがこの場から逃げ出したくなった。
「さ、早く。ネームをつくってください」
「ん……もうッ」
白紙のノートに手を置き、えんぴつを走らせた。シャーペンよりわたしはえんぴつが描きやすいと思ってる。必然、線が太く粗くなる。
「ハナヲさんは恋愛したコト、あるんですか?」
「――は?」
「その、何というか……。わたし以外の人と、仲良くなったコトはあるんですか?」
「それ……どーゆー質問なんッ?! わたし、どう返事したらいーのッ?!」
荒げた声に店員さんが反応する。慌てて「何でもないよ」ゼスチャーをする。
――はーはー。
なんでや。
なんで急に息が乱れるんや。
しかもオデコが熱い。
「済みません。お水ください」
ニコニコ顔のオジサンを見た。
さっきまで無かった感情が濛々と沸き上がった。妙に腹立たしい、目を合わせたくない気分。
この感覚は……。
置かれたコップの水を飲み干し、ノートに絵をなぐり描きする。コマ割り、セリフなんて後回しや!
「ハナヲさん。セリフ、レイアウト、とっても重要ですよ?」
「ウルサイです。黙っててもらえませんか?」
「それで、さっきの質問。答えを聞かせてください」
「……恋愛? ありますよ! わたしだって好きな人くらいいる。……片想いだけど。……で、それが何か?」
「いえ、聞きたかっただけです。ハナヲさんのネームにそんな雰囲気を感じたので」
待って。
待てっての。
このネーム――。
「……そ、そうですよ? 妄想バクハツ、そのわたしの好きな人とこーなりたいってゲスな願望が中味に現れてるんデス! 中二病全開の疑似恋愛世界ですよ――! 悪いっての?!」
バッ!
ノートを取り上げられた。
「あ、ちょ! 何を?!」
奪い返そうとすると、サッとカオの前に手の平を突き出された。有無をゆわせない圧やった。
「……ハナヲさん。わたしまだ完全に過去の記憶が戻って無いんですよ。……ハナヲさんの方はどうなんですか? わたしのコト、どれだけ憶えてるんですか……?」
怒ってる?
それとも悲しんでる?
ノートを凝視する表情からは読み取れない。恐らくわたしの経験不足が原因だろう。
「……ごめん。実はほとんど思い出せてない」
「そう……ですか」
ノートが返って来た。
キョウちゃんをモデルにした会話シーンのページが開かれていた。
「ハナヲさん」
「は、はい」
「わたし、いまはサラリーマン辞めて売れない漫画家してます。だから漫画描きの指導バッチリです。その点、安心してください」
◆◆
家に来るかとゆー申し出に躊躇した。
こっちの世界の陽葵には会いたい。
けれども彼女はこの時間まだ学校からは帰ってないかも知れない。
待つ間、わたしはいったいどう過ごせばいいのか。
このひとと……。
「多分スグに陽葵も帰って来ますし」
わたしと同じコトを思ったのか、それともそうでないのか。
微笑をたたえるオジサンに、わたしは「いいよ行こう」と先に席を立ちレジに並んだ。
丸太棒のような、それでいて温かみのある腕が、わたしを店の外に押し出した。
「お金」
「気になさらず。ハナヲちゃんが熱心に作業してる間に済ませました」
「そんなんアカン」
お札を1枚差し出す。でもムシされたのでまたもや妙に腹が立って、撫花さんの服のポケットにムリヤリねじ込んだ。そうしてとっとと前を歩いた。
意識したらダメやな。それこそ向こうの思うつぼ。
レインツ名乗ったのにはゼッタイにそれなりの理由があるはずや。
シータンさんからもらった情報か、もしかしたら、サラさんにゆわれたからなのか。
考えられるのはこの世界。
幾らキョウちゃんが許可したからって易々と並行世界たるべき別次元の自分に会おうとするなんて、本来なら御法度なのかも知れないし、サラさんが「反省させてやろう、懲らしめてやろう」なんて、こんな大掛かりなドッキリを仕掛けたってのは十分あり得るハナシで。
クスクス……と背中の方で我慢に耐えないって笑いがした。
「ハナヲさん。わたし不思議なんですが、すごく懐かしい気持ちがしてます。わたしに食って掛かってヘソを曲げて。そんなあなたを見ていたレインツさんの、温かい気持ちがジンワリ流れ込んでくるような……奇妙な心地です」
「あ、アホチンですかっ! 念押しでゆっときますが、わたしはナディーヌ姫でもないし、ノエミ・ブーケさんでもない。暗闇姫ハナヲなんです! そんでからあなたは撫花さんであって、レインツや無いでしょう!」
キレる必要あるの? わたし。
第6話につづく。
暗闇姫ハナヲ
本文描写一切無しで体操服から中学制服に衣装チェンジしてます。
ハナヲがそれに気付いてないので描写が無かったという事です。(言い訳やなくて事実です)
ちなみに前回予告した「おみくじ器」、ハナヲは興味深げに手を延ばそうとしたものの、結局やらなかったので、こちらも編集でカットしてます。(これも言い訳やなくて事実です)
以下、選択したテンプレ。
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暗闇姫ハナヲと香坂くら、感謝・感激いたします。




