04 100年ぶりのブ男
魔女っ子ファンタジーラブコメ、発信ッ!
末尾に絵を入れました。
チラリと腕時計を確認。
「ヘンやな」
2番線から電車に乗ったときには夕方やったのに時計の針は1時5分。
夜中ってコト?
それともお昼の1時っての?
どっちにせよオカシイやん!
推論。
こりゃフツーの時計でなくキッチンタイマー的ストップウオッチやな。そう見た。
「つまり後23時間弱で戻って来なきゃアカンってコトだ」
あの電車に乗って。
そのドアをくぐる。そしたら元の世界に戻れる。
「ヨーシ。それまでにも一人のわたしに会って、絵を描くコツを教えてもらおう」
降り立ったホームはやっぱし知らない駅。
でも知ってる。
遠い記憶の彼方に埋もれたDNAレベルで感じる懐かしさ。じんわり、ずぶずぶと深入りしそうな感覚。それは匂いなのかもしれないし、ひょっとしたら音……なのかも知れない。ブルッと身震いしたくなるような奇妙な空気。
「こんにちは」
わたし、ホームのベンチに座ってたオジサンに話し掛けた。
よーく存じ上げた人だ。
「ああ。連絡もらって待ってました。お久しぶりですね」
オジサンが深々とアタマを下げる。
「やめてやめて。キミ、へーこらしすぎ! 普段会社でもそんなカンジなん?」
「えぇ……まーそーなんですかねぇ」
わたしよかアタマふたつ分くらい背丈があって、横幅だってダブル飽き足らずトリプルサイズ。ボサボサ髪の中年オジサン。
「これが元々、前世のわたしのボディやって思ったら何かフクザツ。自分がゆーの何やけど、もうちっとダイエットしよーよ」
「そー言われても。前にも話したかもですが、わたしこの身体、気に入ってるんですよ。どっしりと落ち着いてるしゴハンがとってもオイシイですもん」
「やからフクザツっての……。流れ的にはわたしがキミに押し付けたようにもなっちったから、少し申し訳ない気持ちもあるんやで?」
改札をくぐり駅前ロータリーに出る。
すぐ右手に現れた商店街に歩を進め、目についた古い喫茶店に入った。
「違いますよ。この身体は本来わたしの物でした。前々世? で暗闇姫さんの身体を乗っ取ったのは実際のところはわたしの方なんですから。前にカン違いしてハナヲさんにあたったりしましたよね、その節は済みませんでした」
「その件に関してはどうでもいいし、わたしも反省してるし、もういいじゃん。それよりもこっちの世界の陽葵は元気にしてんの?」
「それが……いま、ひきこもり状態なんです」
「……そ、そーなんや」
「あ! い、いえわたしの言い方に問題がありました。つまり、学校にカンヅメ状態になってるって言うか」
余計分からんすよ。
「合宿って言うか、部活動で……」
「もう。そーゆってよ、最初から。――で、何の部活?」
「テーブルゲーム研究会……とかって」
ウーン? やや未知な世界。
「テレビゲームやないゲームってゆーの? ボードゲームとか? あの陽葵がねぇ……」
「なのでもう2日も会ってないんですよ、辛くて辛くて」
「そりゃ親バカってゆーもんや。彼女もう中学でしょ?」
「? いいえ、小学4年生です」
ほへぇ、わたしのいる世界とタイムラグがあるんや?
前世のとき、そうやったっけ……? うーん、違う気もするなぁ。
「ところで名前、なんて呼ぼうか? 前世じゃキミが暗闇姫ハナヲやったやん? やっぱ明日寺?」
会社員やった頃、そんな苗字やってんなぁ。今から思えばなじまんカンジやったなぁ。
「いいえ。撫花、です」
「ああ。ノエミ・ブーケ……やったから、撫花、ね」
わたしの注文はアイスコーヒー。目の前のオジサンは、ココア。店員さん、置き間違いした。
「やったらこっちの陽葵は暗闇姫陽葵やなくって、撫花陽葵かあ。なんとなく新鮮。小4の陽葵ちゃん、会ってみたいなぁ」
「会ってもいいですが嫁にはあげませんよ」
「もらうかーッ」
真昼間から喫茶店に入り浸り、オジサンと談笑する女子中学生。
それってやや不良じみてる?
それともイマドキこれフツー?
そんなコト考えてるの自体、昭和世代?
「あ。すみません。わたし一方的に話してましたね。そうでした、マンガが描きたかったんでしたね、冥界から手紙を頂きましたので、用件はお聞きしてます」
「そうそう、そーなんよ! マンガの描きかた、特にさ、人物の描きかたを教えて欲しい」
テーブルの上にポン――とパンケーキが置かれた。ふたつ。
「いつの間に頼んだん?」
「へへへ。まー良いじゃないですか、せっかくいらっしゃったんだし。……それに」
気、利かせすぎ。
それにわたし、あんましお金持ってないし。
いきなり押しかけた上に奢ってもらうわけにはイカンです。
サイフを確認しようとしたら、
「これ、ノート。ネタ帳です。ここで即興でネームをつくってみてください」
「へ?」
「マンガ、短時間で教わりたいんですよね?」
「……え、ま、まぁ……」
「じゃ、長居覚悟で頑張ってください」
「う」
思わぬ展開。
案外スパルタ? でもカオはニコニコ。
「あ。それともうひとつ。暗闇姫ハナヲさんにお伝えしなければいけないコトがあります」
「な、何ですか……!」
いやしくも、早速がっつきかけたパンケーキを皿に戻し、モジモジ。ナニゆい出すんかコワイんやもん。
「お気づきだと思いますが、わたし。前世はレインツでした」
「……あ」
暗闇姫ハナヲ
こないだたまたま入った喫茶店で「卓上おみくじ器」を見まして。
登場させようと思って忘れてました。次回、「卓上おみくじ器」登場! お楽しみに。
以下、テンプレ文。
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暗闇姫ハナヲと香坂くら、感謝・感激いたします。




