02 その時計は彼女を不快にさせる
本日2回目の投稿。
異世界魔女っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジーラブコメっ。
我が家のリビングの妖精、シータンである。
大好きなマヨがけ魚肉ソーセージをガブリとくわえ、ローテーブルに山積みの本を添えて画用紙をにらんでいる。
「魔法学校の課題です。生徒が泣いてアドバイスを乞うような難題を考えてるんですよ。きしし」
「ナニそれ。その魔女笑い?」
「だって魔女ですから、わたし。カワイイ教え子たちの成長を期待してのイジワルです。……で何か用ですか?」
手短に説明し協力して欲しいと頼む。
「ナルホド。並行世界の自分に会って絵を教えて欲しいと?」
「ウン。描き方のコツみたいなのを聞くだけでもいいんやけど」
そしたら、
「それは……冥界のヒラ氏に手伝ってもらわないとダメですね」
「え。キョウちゃん……!」
たじろぐ。
ヘンな汗が「つー……」っとおでこを伝った。
「ハナヲのカオ。赤色と青色が入り乱れてますよ? 諦めますか?」
「イヤだ。諦めないっ。べ、別にバイトでもカオを合わしてるし。どってコトないし」
「フーン」
ガレージに停めた自転車の荷台にまたがり、サドルをポンポンたたく。
「さ。じゃ駅前に行きましょ」
とシータン。
「え? いやアカンて。ふたり乗りはコンプライアンス違反デス。――バスで行こ」
「え、バス?! わたし乗ったコトないです! わーい!」
◆◆
「――というワケで、ハナヲがもうひとりのハナヲに会って絵を習いたいそうです。……ですよね、ハナヲ?」
「はえー。ふひー」
キョウちゃん、今日もその野良着、似合ってて格好いいよぉ。
――って!
突如後頭部に衝撃を感じた。
「ハナヲ。もうわたし、帰っていいですか」
「ご、ごめん。キョウちゃん、あのその、どうかお願いします」
「それは……別に構わないよ? ただし条件があってね」
「条件?」
キョウちゃんに招かれ、彼の執務室へ。
純和風、書院造の書斎。
うう。キョウちゃん似合うよーッ。
「これマニュアル。出来たら読んどいてもらった方がいいんだけど」
「う、重っ! ぜ、全1万ページ?! マニュアルってこれ全部?」
両手抱えでよろめき、机を借りる。読めっても、こりゃちょっと……。
「要約すると。並行世界に行って24時間経過しちゃうと帰って来れなくなるってハナシ」
「か、帰って来れない?!」
「要はね、そっちの世界のもう一人の自分と入れ替わっちゃうんだよ。【世の理システム】って機能が自動で働いちゃうんだよ」
「世の理システム?」
シータンが手をわななかせ、
「それ、聞いたコトがあります。一般的にドッペルゲンガー現象はそのシステムが時たま起こす自己復旧機能が働いたせいだって。そのシステムには意志があって、別名神さまって言われてて……」
「えーと……。それは……どうかな。その話は初耳だな。――とにかく気をつけてねって言いたいわけだよ。大丈夫? ハナヲちゃん」
「は、はいッ。気をつけます」
◆◆
「ハナヲ。やたらキモチワルイですね。何かヘンな食べ物でも食べたんですか?」
「食べてないっ。どーしてそーゆー解釈になんのさっ。嬉しそうにしてるだけでしょ!」
「な・ん・で。嬉しいんですか?」
「だから! この腕時計!」
キョウちゃんから渡されたんだ。
時間、気にしなよ? って!
「腕時計。……フーン」
「フーンって。それだけ?」
さっき受け取るところ見てたよね?
キョウちゃん、わたしを心配してくれてたよね?
なんでそんなに冷たい目をするんかね? もうちっとは一緒に喜んでくれないデスかね?
「フーン。ヨカッタデスネー。愛しのカレシさまから腕時計のプレゼント。シタゴコロなきゃいーけど、特にこの小娘は免疫無いからドーナルノカシラ。チョロチョロチョイー、あー心配」
「……なんやの」
「ところでハナヲ」
「な、ナニ?」
「ごめんなさい」
今度はなんぞ?!
「実は今日はお付き合いできるの、ここまでなんです。今夜中に生徒へのプリントを作成しなきゃで」
そ、そうやったね?!
「こっちこそゴメン。結構遅くまで付き合わせちゃったね。このお礼は今度必ずするよ」
すると今までの不機嫌から一転、ニコニコッとシータン。
か、過剰に期待し過ぎとちゃうかな?!
「それじゃその腕時計、わたしにください。叩き壊しときますので」
「ず、ず、ずぇぇぇぇったい、アカーンッ!」
シンクハーフご不快
予告。
次回第3話はコラボ企画をお送りする予定です。
なろう相互ユーザーMITTさまの作品「ネコ転生」人気キャラクターに登場して頂きます。
いつも以上にハチャメチャ展開かもですがどうか赦してね。
最後まで読んで頂き有難うございました。
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(出来るだけブクマ剥がさんでね)
やみきハナヲと香坂くら、感謝・感激いたします。




