「はっき」の前日譚・そのに「南田センパイとデート?」
ブクマ144件目感謝回(1話完結)です。
わたしは寒がりや無い方なんやが、さすがにヒンヤリが肌身に堪えだしたので、今夜から毛布のお世話になるコトにした。
今日のお昼にシータンが干してくれてたヤツだ。
あーなんて世話女房さん。
とか思ってたら、アレ?
これ、この毛布!
わたしのと違う!
これ、しゅまじろーのキャラ絵がプリントされてるしっ!
ハズイし、子供用でサイズ小っちゃいし、もーッ、どーゆーコトなんよ!
「あ、それ。わたしのと交換させて頂きました」
「なんでさ?!」
「だってハナヲの毛布って、ほんのりハナヲの匂いが……。いえ、なんでもありません」
ん?
なんなのや、その、子猫がモフモフするような妙な手つきは? わたしのコト、ヘンなオカズとかにしてへんやろね?!
「もー、なるべく早く返してよ?」
「ウチ、ここから遠いので10年後くらいには持ってこれます」
「それ、返す気が無いと? ジァイワン的発想やんね? 自分の物にする人のセリフやんね?」
よくよく聞いたらフトン干したりしてくれたの、実は【かんなぎリン】やったらしく、だったらシータンは、ただ余計なコトをしただけの人! なんやねん、ったく。
フンガイ・オコ顔で自室に戻り、ベットにダイブ。ホンマしゃーない子やなぁ。
――?
圧倒的違和感。
「なっ何やねんッ!! このマクラカバーはぁーっ?!」
説明すると。
まったくもって、おかしなモノがプリントされてるのでした。
えーとさ……そのな、等身大のな、かんなぎリンの……。
うぅーん、もう少しだけ踏み込んだ言い足しをしよう。
「何やねん、このあられもない姿がプリントされてるマクラカバーはッ?!」
胸はだけ、インナーウェアオンリーのかんなぎリン、カッコ、見た目ガチ小学生の。
センシティブすぎ!
コレ、映像化できません!
ここでマンガみたいに鼻血ドバッって出せたら割かしソフトで明るいラブコメやとゴリ押しできるんやけど。わたし、そんなに便利な人間やアリマセン。
とりあえず息が乱れ出し、カオがカッカ熱くなる。至極リアルな思春期反応をしてまいました。
そりゃムシすりゃいーんだろうが、そんな生易しくは対応できんです。
女子が女子に興奮するなどフツーオカシイでしょうが、わたしは多分、そのオカシイにどっぷりと浸かれる部類の人間なのでしょう。
ワーッと叫んで、先ほどのしゅまじろーの毛布でマクラを覆い隠し。
……今日毛布使えんわ。ついでにマクラもな。
ワナワナしてるところ、携帯が鳴った。
『しもしーも。名を名乗れ。オマエ暗闇姫ハナヲだな』
「はいはい。暗闇姫ですよ、南田センパイ。いつもながら、どーかしましたか?」
『はいは、一回だ。分かったな? ――ところで明日、土曜日だったな』
「えーと。土曜日ですね」
電話の向こうでガシャガシャ、ヘンな音が聞こえる。ついでに人の声。
センパイがどーたらこーたら喚いてる。
「水無月マナが一緒なんですか? 相変わらず仲良しなんですね」
『オウ? コイツはあくまで同志だぞ? か、カン違いすんなよ?』
カン違い? 何をですか。カン違いも何も無いです。
「でどーしたんですか? ……あ、そーいやセンパイ、こないだの追試のとき、待っててくれてたみたいなのに、結局終わんなくて済みませんでした」
『いやぁ……。こっちが勝手に待ってただけだよ。やめろよそんな言い方』
「あの日センパイも試験だったんですよね」
『…………』
……アレレ?
無言? 電波障害?
『オイ暗闇姫、明日10時。新石切駅前な』
「は、はい? 明日、ですか? えと、えと、えーと……。――切れてる」
まだ話してんのに勝手に切んなよなぁ。
しかも急やなぁ。明日はお昼からバイト入れちゃってんのになぁ。
●∧∨● ●∧∨● ●∧∨● ●∧∨●
駅前、シスタードーナツの入り口で手を振る南田センパイに目を見張った。
「センパイ、どーしたんですか? その服……」
「あ。た、た、たまには。……別にいーだろーが!」
いつものスカジャン! とかじゃない!
ひらひらレースのフリルつき。真っ白のワンピース。やや青みかかったカーディガンとがマッチしてて清楚系お嬢さまが降臨だ。攻めたひざ上丈のスカートがまぶしくて正視に耐えんし。
「な、な、なんだよ! 似合わねぇってんのか?! じゃあ脱ぐよ、脱ぎゃあいいんだな!」
「ち、ち、ち、ちょっと待って南田センパイ! 違いますよッ、ナニひとりでキレてんですかッ、とっても、その、似合ってますから! 落ち着いてください!」
そんな半泣きで照れんでも!
ほら、通りがかりのオジサンがジロジロ見てるよ?
「ど、ドーナツ食べましょうか? センパイ?」
「……うんにゃ……それは後だ」
「じゃあ……どーします?」
「モンキ」
「モンキ?」
「モンキホーテに行く」
モンキホーテ、か。
わたし実はちょっち苦手なんや。オジサン時代、そこで中坊たちにカツアゲされたコトあってビミョーにトラウマ。
「ウン、じゃいこ。センパイ」
駅前から数百メートルの場所に石切丸の帆柱? しょったペンギン君の大看板。
大通りの交差点を渡んなきゃやけど、車がビュンビュン行き交ってて、ちーとビビるよ。
――とセンパイがエスコートするかのように、わたしの手を握る。
「……あ、そーいや水無月マナは? 店で待ち合わせなんですか?」
「さ。渡るぞ。暗闇姫」
む、ムシっすかセンパイ!
店内入りかけたところでJ-POPが大音量で鳴り響いてて思わず肩をすくめた。そしたらなんとセンパイ、音の発生源だったラジカセを無断で止め、何事もなかったかのようにわたしの手を引いた。
それから一通り店内を回ったわたしらは自販機の前で一服。そこでセンパイが言う。
「アリガトな。わたし実は試験、ダメだったんだ。で慰めてもらおうと思って暗闇姫を呼んだんだ」
「試験って、こないだの、私立の特別推薦ですか?」
「ああ、まーな。……わたしそんなにバカだったかなぁって。結構ヘコんでんだよ。慰めてくれよ、暗闇姫」
「ちょ、こんなトコで抱きつかんといてください。でもなんでこの店なんすか?」
うん? と首をかしげたセンパイ。
「暗闇姫この店が好きだって。マナのヤツが」
あー?
それは完全にガセ情報です。昔買い物したコトガあるってゆっただけです、彼女には。
「……ひょっとして。ホントはイヤだったか?」
はい、そりゃイヤですよ。とゆいかけて口をつぐんだ。だってセンパイ、そんなカオするんやもん。もお、ヤメテって。
「――あ。センパイ。わたしちょっとトイレ行ってきます」
「だったらわたしも一緒に行くよ」
「アキマセン。今回のはハズイです」
「……。ん、分かった。スッキリ出して来いよ」
「なっ」
「生理現象は止められねーべ」
や、ヤメローッ!
●∧∨● ●∧∨● ●∧∨● ●∧∨●
その後わたしは【お疲れさん会】と称してシスドにセンパイを誘った。
いつもの元気が無いセンパイは、いつも以上に饒舌になっていた。
「でよ。弟がそのスプーン見て――」
「センパイ、そこ。ソデ、汚しちゃいますよ? わあ、クリームが服に落ちそうですッ」
「もーウルサイなー。いちいち気にしてたら、話してた内容、忘れちゃうだろ」
だってさ。
せっかくの一張羅でしょ、それ。汚くしたらゼッタイ、ダメやで。
「センパイのその服、すごく似合ってるしカワイイから、邪険な扱いしたらアカンですよ」
「へッ?」
「ところでセンパイ。センパイはどんなジャンルのガッコウ受けようとしたんですか?」
「ジャンル?」
わたしの畳みかけにセンパイ、固まる。
そんなに思いがけなかったかな?
絵に描き残したいくらいの混乱ガオしてる。
「なるべく偏差値の高いガッコに……」
「センパイ。わたし、とにかく応援してます。センパイがホントに行きたい学校に巡り合えるように。――はい、コレ」
小さな包み紙をセンパイに。
キョトンのセンパイ、恐る恐るそれを受け取り。
「ホントに行きたいガッコ……。え、なに、これ」
桜の花びらをイメージした小さなブローチ。
「くれんの? わたしに?」
「そうす。来春の合格を目指して」
「あっ。もしかしてさっきのモンキホーテで? トイレってウソだったんか。……でもコレ、半欠けしてるみたいな……」
「そうなんですよ」
そのままだと確かに桜が満開に見えないモノ。
もう一個、持ってた包紙から、片割れを出して見せる。
「ペアになってます。こっちはわたしが持っときます。センパイが合格したときにあらためてプレゼントします。そのときまで、わたしが念を込めて持っておきます。も一度ゆいますよ? センパイがホントに行きたい学校に、見事受かりますように! そのときまで」
「暗闇姫……」
センパイ口だけ動かし。
「今日のデート、楽しかった」
わたしは見て見ないフリでドーナツをかじった。
――「はっき」に続く。
ハナヲ御機嫌(ブクマ144件目御礼)
ブクマ、評価、感想、いいねなどで応援頂けると暗闇姫ハナヲ他、魔女っ子たちが有難うの歌を歌うかもです。
「はっき」は現在構想中。最後までお付き合い、有難うございました。




