よんじゅろく ピリオド
絵を入れました。
コンクリート塊のような礫を立て続けに受けてよろけた。
でも。
魔法のホウキからはゼッタイに落ちないよ!
落ちたらこの高さだもの、確実に冥界行きでしょ。
キョウちゃんには毎日会えるかも知れん。けども実体無き亡者のカッコウやととやっぱりイヤやし。なので必死に耐えた。
せめて北大路魯山の動きを止められたらな。
詠唱付きの魔法を当てられるのにな。
もっかい静止命令を行使するか。
などと考えてる時間がもったいないか。
彼女が視界に入ったところで静止命令! 効力行使!
「一度喰らったら効かないよ。こんなわたしでも学習くらいするんだよ?」
「あら、そう。じゃあこれはどーや?!」
ろーさんの周囲に何重もの障壁を張りめぐらせ。
壁で囲ってあげたとゆーワケで。
「ははあ。知恵しぼったね。1層壊すのに5秒。4層あるからえーと……」
20秒持つ!
詠唱開始。
そのとき耳元に話し掛けて来る声があった。
――いや違う。
アタマの中や! 脳ミソに直接響く声があった。
「暗闇姫」
「…………この声、武市くんやね?」
「ああ、武市だ」
詠唱の中断は正直辛い。
けれども武市くんとコミュニケーションがとれる喜びは大きかった。
「武市くん! 心配してたんや! あのさ……」
「後でゆっくり話そう。オレの能力で一時的に敵を封じるからどうにか戦闘を終わらせる算段をするんだ」
武市くん、一方的に告げてわたしの身体を抜け出た。実体のない、ゆわゆる霊魂の状態だ。
「た、武市……――グッ?!」
急に激しい頭痛に襲われる。
「石像の影響だよ。オレが抜けたから……。少しの間だけ耐えて!」
「武市くん!」
声は分かる。だけれど目視では彼のコトが認識できてない。
フワリと手を握られた感触。
「アリガト、暗闇姫」
数秒後、ろーさんが痙攣し、地に落ちてった。
唖然としてたら再び彼の声。
「彼女の異能力を吸い取った。5分位は時間が稼げると思う」
今のうちにポルタヴィオンと話をつけろとゆう。
得心したわたしは急降下した。
父を見つける。
「お父さん! わたしは戦いたくないんや。あの子をけしかけんのはヤメて!」
「だったら、コレットを引き渡すかヤツの首を持参すると約束しろ。オレの娘だと再認識するのだ」
お母さんが逃げたワケが分かった気がする。
「イヤだ。お父さんのゆってるコトはまったく理解できひん。……でもね、いっこだけ感じるモンがある」
手を取ったわたしのカオを怪訝に眺める父。
心が読まれるんだから、ここは素直を言葉にするしかない。
「お父さん。恐らくカン違いしてるんやろうけど、わたしたち3人はお父さんを嫌ったりなんてしてへん。嫌ったりはしてへんけど悲しかったり、怒ったりはしてる。なぜって聞かんといてや。そりゃトーゼン、お母さんが寂しがってたのを放置してたからや。それと、わたしらのコトを信じてくれてへんコトや。……それ、自覚してへんのやろ? お父さん?」
法衣の男はキョトン目をやがてしばたたせ、フードのそでにカオを隠した。
逃げ誤魔化したな。
「ナディーヌの言いようは受容の域を超える。なのに極上に甘い。……とろけるようなフシギな感覚だ」
「もちっとマシな表現無いのん?」
返しの代わりにグイッと引き寄せられた。
うう、ううと喉を詰まらせだしてる。
どうした? 父よ?
「それは真実か?」
「それ……って? 嫌ってないのが? 真実やよ。でもそーゆーのを直接聞けってゆーの」
「いや。でも勇者の存在は許せん。黒姫が不憫である」
「やから、そーゆー思い込み。それが無きゃ、お父さんは立派にお父さんなんやで?」
本当に不憫なのかどうか、本人に尋ねろ。
そして真実をしっかり見て。ね? お父さんッ!
「立派に父か? オレは?」
クドい質問に呆れつつも答えようとしたとき、肩をツンツンされた。
振り返ると、巨大な琥珀玉の裂け目――黒々とした縦溝。
それが溝でなく突起で、しかも大獣の瞳孔だと気付いたとき、右肩に衝撃が走った。
幾筋も噴き上がる血柱の破れ目に、ドラゴン化したろーさんが垣間見えた。
もたげた両の爪先が鈍色に光っていた。
「魯山ン!」
その大喝はポルタヴィオンが発したものだった。
魔法紹介⑥「内視鏡」
外は雨。夜更けに雪にはなりそうにありません。
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有難うございます。




