よんじゅにっ 何百年ぶりかの親子会話(2)
続きです。
絵はムリヤリ入れてます。
「び、病原菌……!」
なんやとこの、とポルタヴィオンの胸ぐらをつかみそうになって堪えた。
んなコトするわけも無し、だって分かりやすい挑発やん?
「そう、挑発だよん。ずいぶん大人になったな。ナディーヌよ」
「そりゃ。オジサンになってたコトもあったんで。――それよりそろそろ読心術、ヤメテくれません?」
関西弁、ヤメロってのなら止める。
トンカツ、キライになれってんならキライになる。
やから、もうこれ以上アステリアをイジメるのは無しにして欲しい。
「ナディーヌ、黒姫、漆黒姫。お前たち3人は、どうして魔女なんかになっちまったんだ。やはりすべての元凶はお前たちの母親か?」
「――お父さんは魔女がキライやから、お母さんとリコンしたんか? それに今回、アステリアを滅ぼそうとしたんか?」
「そうだ」
「わざわざ軍隊差し向けて?」
「そうだ。オレがちょっと催眠術かけたら皆従ってくれる。オレの言う事を聞いてくれる。独りじゃ寂しいだろ? だから大勢で押しかけてやったのさ」
……えーと。
んーと。
……。
「バカ!」
「な、なんだと?!」
「もちっと話、聞かせてみんさいッ。アステリアを滅ぼす。魔物がキライやから? もっと突き詰めると魔女がキライやから? 更に追及すると、わたしら3人の子供たちが、魔女になっちゃったから?」
「そうそう」
「なんで?」
「なんで、とは?」
もうまったくギャラリーが気になんなくなった。
だって彼ら全員、無表情になってて、マネキンみたいになっちゃったから。
「なんで魔女がキライなんかって聞いてんの!」
「そ、それは……!」
ポルタヴィオン、はじめて言い淀んだ!
「おとうーさん。アンタがゆわないんやったら、わたしがゆってやろう! つまりな、アンタが魔女を嫌ってんのはな……」
「分かった。もう言うな」
「アカン。この際やから、はっきしゆってやる」
「やめろ。やめろ。やめろ」
ヘンタイとーさん。バカなとーさん。
ダメダメとーさん!
「お父さんが魔女をキラってるんは、わたしらのお母さんが魔女になっちゃったのが気に入らんかったからやろーッ!」
ポルタヴィオン、ギョッとしたカオで。
「そうだ」
そーなんかいっ。
たったそれだけの理由かい!
ごくわずかに、周囲がざわついた。
わたしがポルタヴィオンの両肩を揺さぶったからだ。
でも彼が右手を挙げ「黙れ」と唱えたことで、またすぐに静かになった。
この敵全軍は、一兵卒に至るまで、すべてポルタヴィオンの意のままに動いている。
「ポルタヴィオン」
「お父さんと呼んでくれ」
「じゃあ、お父さん。お父さんは魔女になっちゃったお母さんがキライなんか?」
今度はポルタヴィオンがわたしの両の腕をつかんで揺さぶった。
「否とよ! んなワケあるかい! 父さんはなぁ、お母さんを何より愛していた。……なのに母さんは魔女のまま死んじまった」
魔女のまま死んだ……のは、仕方がないやん。
「お母さんが魔女になったんは、パートの仕事にありつくためやってんぞ! お父さんの稼ぎが少なすぎて、わたしら3人を養うお金が、毎度の食事さえままならんかったからやぞ!」
わたしがオッチャン時代、陽葵に不自由させたくないって仕事に専念したのは、そのコトを無意識に覚えてたからかも知れん。
おかげで当時、彼女にはキラワレちまったんやが。
「パート? 何のパートだ?」
「旧魔法局の執行長補佐の事務パートや。……そう、お父さん。アンタが務めてた旧魔法局のな」
この人は大昔、魔法局の局長やった。
ゆーてみれば魔物族たちの大親分やった人や。
「な、何だと……?!」
「お父さんが執行長で執行長補佐が、あの魔道士【ゲンコ】。彼も大概ヘンタイさんやったけど、わたしら3人や、お母さんにはとても良くしてくれたし!」
ブンブン首を振るポルタヴィオン。
ついでに腰もビュンビュン振りはじめた。
くねくねさん踊りだ。このヘンジンめ。
「お前たちの母親は、そのゲンコと浮気しとったんだ!」
浮気?
「ちゃうッ! お母さんは、えーと、その、ちょっとゆいにくいねんけど、ゲンコさんのコトをペットみたいに可愛がってた。『お手』とか『おかわり』とか、芸を仕込んどったよ。だいたいさ、ゲンコさんはもともとお父さんの部下ってゆーか、配下の魔物やったやん? なんであんな忠実なペット……、あ、やなくって、家来を見捨てたんか、理解に苦しんだわ。それにお母さんも! お父さんに捨てられたって思って、ずいぶん悲しんどってんで!」
「……そんな」
ムシロに横倒れする父。当年とって888歳。
900年近く生きてたのに、そんな最愛の人の心の機微も分かんない父。
魔法紹介②「静止命令」
稚拙な文章に飽きられないよう、1話1500~2000程度で切ってます。
なので長ーいシーンが続いてますが、どうにかご勘弁を。




