さんじゅいーち! 輝く乙女たちの内情
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よろしくお願いします。
不甲斐ないとはまさにこのことや。
左脚を骨折してた。
アタマからドバドバ出血してたし左肩も強打し打撲してた。石像に体当たりしたときに受けたダメージ。
衛生兵の肩を借りていったん後方に引き下がった。
その間幸運にも、敵兵はズルズルと後退しつつあったんで襲撃は受けなかった。
ただ、武市くんが気掛かりやった。彼を伴えず、後ろ髪引かれる思いで石像跡地を離れたから。
こうなった以上、早くバズスたちと早く合流したい。当然彼らの無事も気になるし、武市くんを見つけ出したい。
ところで苦戦を強いられていた魔物軍(ベータ麾下の第二軍)やが、これは完全に息を吹き返した。人族の比率が高いヘルムゲルト連盟軍を力づくで押し返し始めた。
だけどヘルムゲルト連盟軍もそう簡単には崩れない。圧倒的な数の優位を保っている上に、王都の選りすぐりを集めているので。
むしろ問題はこっち側に多い。
緒戦の泥戦で深手を負ってしまっている我らがアステリア魔物軍は、確かに勢いを取り戻したものの、反攻戦を展開しているとゆえるほどの戦闘人員を寄せるコトが出来ず、いまひとつ決定打に欠けている。
指揮を執るべきはずのベータ将軍は、最前線に行ったっきり。副長が各隊に檄を飛ばしている。
石像による戦闘不能者の大半も未だ戦線に復帰のメドがついていない。
指揮所でがなり立てている副長に尋ねる。
「最前線に魔女たちが紛れてるハズなんやけど」
「あいにくですがそのような情報は届いておりませぬ」
それどころではない様子。
分かっているけれども。
……にべもない。
シータン、かんなぎリン、バズス……。そしてラルトさんたち。
心配心配心配。
はあぁー。
ケガしてもたからナーバスになってもーたんかなぁ。
アタマの中に雨雲がいるみたい。
松葉づえって生まれてはじめて使ったかも。
「痛った!」
踏ん張って立とうとした時に患部に激痛が走る。ま……そりゃそーや、添え木当てて包帯代わりの布、グルグル巻きにしてるだけなんやもんなぁ。
いまは戦闘中、これだけしてもらっただけでも大感謝やし。
戦闘不能者にかまける者なんて……。
「ナディーヌさま!」
「あッラルトさん、ご無事で!」
感極まって手を取った。
……そしたら、彼の周囲を固める輝く乙女部隊所属の女の子たちが色めき立った。あわててパッと離す。……うーぬ、刺されそうなんて思ってもーた。
「バズスさまらはベータ将軍に随伴して敵陣へ斬り込みをかけています。その隙に負傷兵を退かせつつ残存兵を再集結させる肚です。わたしたち輝く乙女部隊も一時退避して後方で体勢を整え、別働隊となって敵本営を直撃するつもりです」
あー……その。それはイインデスガ、余計な気遣いかもなんですが、現状、統率とれそうデスカ?
「自分で言うのも何なのですが。リーダーへの忠誠心は他のどの部隊よりも高いと思いますよ」
忠誠心とゆうか……自惚れ極まれりだよっ。
うーまぁ結果的には個々の士気は異常に高いのかも知んないが。
「とにかく死なないでくださいよ」
励ましたつもりやったのに、発言した途端、女子隊員らに口々にゆい返された。
一身に受けたワーワーを要約すると、「わたしがついている限り、ラルトさまは絶対に死にません。失礼な」。
そうですよね、余計なヒトコトでした。ゴメンナサイ。
頼もしさを超えて、恐いくらい勇ましいです。
後で聞いた話なんやけど彼やスピア姫に催眠術をかけていたのはこの女子隊員のうちのひとりで、ラルトさんから頼られたい、役立ちたい一心でおよんだ犯行やったそうで。
その子は現にラルトさんの心をつかみ、罪がバレるまで筆頭カノジョの地位を堅持してたらしい。
これらの事実が明るみになってからほどなく、輝く乙女部隊は解散。ラルトさんは一定期間謹慎処分を受けた後に赦免されてふたたび特務に就いた。
今度はグループでなく単独でのスパイ活動に従事するというカタチでね。
ソロプレイとなって他領で流した浮名は、彼の諜報能力の高さと引き換えに、片目がつぶられるようになったソウデス。
――話をもどすね。
「わたしは無事やとシータンたちに伝えてください」
「分かりました。では」
ラルトさんが去った後、わたしは本営の片隅で、囂々たる環境に関わらず深い眠りについた。
傷病による発熱で意識がもうろうとしたせいらしい。
キャラ紹介⑦ヒラウミ(海御前)




