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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ななきっ 学校ほっぽって異世界の騒動に首を突っ込んでる妹をこれ以上あおらんといて! 元勇者と元魔王魔女の仲を気にしてるおせっかいな姉が承知せんからね!

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にじゅしちっ 砦攻略


「テヘエ。ちょっと近くに来すぎましたネー」


 アタマをかくバズスをはたく。


「つかさ。ここドコさ?」


 聞くまでもない。


 ここはアステリア国境線を超えた先にあったパヤジャタの前線基地……のようやった。

 だってわたしらグルリと敵に囲まれてんし!


「な、なんだ、お前ら?!」

「侵入者だッ、捕まえろッ!」

「どこから入りやがった?!」


 そんないっぺんに叫ばんとってーッ!


「あ、アレ? シータンと武市くん?」


 いない!

 と思ったら、すでに物見の塔を制圧してる?!

 最上階の楼台から手を振ってんの! マジデスか?!


「ヤルネー、アイツら!」


 ヒャッホーと喜色の叫びをあげたバズス、大ジャンプで兵舎の屋根に飛び乗った。


「追い落とせ!」


 格好の的になり一斉掃射された矢やが、それをものともせずに払い除け、奇声とともに主塔の方に走って行った。


 兵士らはアイツに気を取られて、慌てて「待てー」と追いかけて行く。


 わたしと()()()()リンは取り残され。


「……どーします、ハナヲセンパイ」

「あーうーん。雑談でもして眺めてよーか」


 冗談のつもりやったが、真に受けたリンは地べたに座り、リュックサックを下ろしだした。


「その荷物。何入ってんのん?」

「色々ですよォ。魔法瓶もありますよ、ドーゾ」

「あー、あったかいお茶。ライオンマホービンやね、いーなぁ。――ズズ」


 戦場で飲むお茶は格別やねー。

 ……それってアタマおかしい?


「ハナヲセンパイ。総主教って……」

「総主教? ヘルムゲルト聖教会の? それがどーかしたん?」

「いえ……」


 えー気になんなぁ。

 田中(リン)()いにくそーにしたときは決まってロクな話やないからなぁ。


「自分で話振ろうとしといて途中で止めんなよー」

「べ、別に。ただの雑談ですからぁ」


「もしかして知り合いなん? 総主教と?」

「違いますよォ。――と言いますか……」


 流れ矢がリンの魔法瓶に突き刺さった。


「アッ!」

「なっ?!」


 水筒からお茶がだだ漏れだした。


「あっつう! あっつうー! このォ、オマエら! センパイとのまったりなヒトトキを奪いやがる野暮ヤローがあーッ!」


 ブワッとリンの右手から火の塊があふれた。

 広げた手の平で地面をなでる。


 地面が赤じゅうたんを敷いたように真っ赤に染まる。

 それが主塔の方まで延びて行った。


 赤炎がぶつかった塔から隆々たる黒煙と、兵らの怒号が巻き起こる。

 恐らく彼らは何が起こったのかまだ把握できてないだろう。


 主塔は大災難。

 下からは火が、上からバズスが襲い狂っている。

 そりゃもーパニックしかないよ。


「さ、ハナヲセンパイ。お茶の続きをしましょう」

「アカン。ここを降伏させたら、とっとと次の戦地に向かいます」


「んもお。マジメさんですか」


 ちがーう。

 アルファ軍とベータ軍の支援が目的でしょーが、わたしら!


「怒ったら老化が進みますよ?」

「そんな昭和な定型セリフは要らんねんッ。さっさとみんなを呼び戻すんや!」



ζ'  ζ'  ζ'  ζ'



 かんなぎリンが静かに近づき、わたしの耳にだけ聞こえるように手を当てた。


「ラルトさん。先刻の砦での戦いのとき、居なくなってましたね」


 そうやったっけ?

 リンの眼は明らかに彼を警戒していた。


 当の本人はバズスと意見を交わし合っている。そこには武市くんも加わっている。


 わたしらの眼前には起伏のある台地が展開してて、そこで、アステリアの魔軍のうち、ベータ率いる軍が、ヘルムゲルト4ヶ国連盟騎士団相手に苦戦を続けている。


 魔法封じの石像が敵本陣に据えられていたためだ。

 やっぱりとゆーべきか、恐れていた事態に直面し、わたしらは狼狽えているのだった。


「シンクハーフさまを見てください」

「砦の戦いであんなに元気だったのに、今はウトウト眠そうです。きっと石像の影響ですよ」


「うーん、それはどーかなぁ。ここに着いてすぐに持参の携帯食を食べてたから、もしかしたら単にオナカいっぱいで眠くなっただけかもよ?」


 リンは初見の石像に過剰反応を示している。

 ざっと1キロはキョリがあるし、さすがに致命的な影響は表われないと思う。


 わたしらよりも深刻なのは最前線で戦ってる魔物(ミニュイ)たちだ。

 翼がある者は飛行を止め、脚力に自信がある者も自陣で鳴りを潜め、盾に隠れている。

 魔力保持者(マージ)部隊に至っては本陣のはるか後方に退き、完全な戦力外やと敵味方に公言してる。


 唯一、人一倍気を張っている歩兵部隊ですら隊列が揃わず、連盟騎士団の猛攻に前列を乱されている有様で。


 別働の我々、石像破壊部隊が一刻も早く突入せにゃならん状況なんである。


「ヨォし。わたしがまず先陣を切っちゃるよ」

「センパイッ、人の話を聞いてましたかっ?!」

「聞いてるよ。ラルトさんの動きを気にしなきゃなんでしょ? やからこそ、わたしみたいなのが先行するんやん!」


 もし彼に悪意があるならば、悪意がなくても誰かに操られていたとしても、わたしのようなあるイミ悪目立ちキャラが動けば、おのずと相応の挙動を示すやろ。


「それが狙い目なんや」

「センパイ、賢いですっ」


 居眠るシータンと議論百出中のバズスらを残し、リンとふたりでそっとその場を抜け出した。


挿絵(By みてみん)

キャラ紹介③ココロクルリ

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