にじゅご オメガ進言
絵を入れました。絵?
案の定。
便器にカオを突っ込んでるバズス。
しかもおっきい方の。
「ゆわんこっちゃない」
「このゴブリンさん、汚ったないですねぇ!」
リンとふたり掛かりでバズスを救出。
シータンがスンスンと鼻を鳴らし、
「女子トイレから悲鳴です。変質者かも」
駆けつけると、入口で領府職員の女性が人質になっていた。
まだトイレ内には数名が取り残されている。倒れ伏している人もいた。
「アンタ! 目的は何やねん!」
「スピア姫。いやアステリアだ。教主さまの御意向である」
「教主? 聖教会の? 総主教のポルタヴィオンってオッチャン? アホちゃうか、自分で用事済ませに来いって伝え! ボッコボコにして追い返したるからって!」
罵倒してやると男の眼の色が変わった。
「我が主さまに光あれ!」
「ヤバイッ、ハナヲセンパイ!」
「分かってる!」
わたしやって、いざとなったら静止命令くらい使える。
時間停止したかのように男が凝固した。
よし、成功した……!
自爆でもしようとしたのか、男の上着から『テツハウ』が出てきた。
危なく犠牲者が出るトコやった。
「ハナヲ。まだ終わりではないですよ。別のお手洗いに向かいましょう!」
「オイ、テロリスト。あなたの仲間はあと何人侵入してんデスカ?」
リンは尋問が得意なのである。
固体スキル内視鏡で強制的に聞き出すことが出来る。
男は「わたしを入れて4人だ」と答えた。
国境からトイレにGOで領府内に跳んだとゆう。
「全員聖布を装備している。カンタンには発見できまい」
不敵に笑う男にシータンが一言。
「アレ? あなたたち、もしかしてトリセツ読んでないんですか?」
「な、何がだ?!」
「『あーびっくりした』って呼び掛けたらですね、『お化けだぞー』って布がしゃべって正体現わすんですよ?」
「何だと……。トリセツ?? そんなの知らないぞ!」
「じゃあ今説明しときます。忘れないでくださいね。『あーびっくりした』ですからね」
わたしらの背後で、
「お化けだぞー!」
と声がした。
「――え?」
凶器を閃かせた僧衣の男がボーゼンと突っ立っていた。
「な、なんだと――?!」
「二人目、みっけ……やね」
ζ' ζ' ζ' ζ'
その後さらにもう一人を捕まえ、侵入者は残り一人となった。
黒姫に報告を入れると、
「国境から跳んで来たってコトは、問題は既に敵は国境付近に展開してるってコトやな」
と眉間に皺を寄せた。
彼女の懸念は石像。あれがあると魔物らが機能しなくなる。
「魔力を吸い取るだけやなく、魔の血を麻痺させる念波のようなものが混じってるな」
捕縛した僧たちを尋問しても、肝心の石像については大した情報は得られなかった。最前線に送られる兵にまで機密事項が届いていないのは当然だ。
「残りのひとりってやっぱ、ラルトさんかな」
「判りません。間違いであって欲しいです」
黒姫の横でタメ息をつくスピア姫。
髪を束ね軍装に着替えている。
黒姫は彼女から寸時も離れず周囲を警戒している。
「姫。あなたがいなくなればアステリアどころか、魔物族はこの世に存在できなくなります。わたしたちは全力であなたを警固します」
黒姫の言葉にスピア姫は力強くうなづいた。
「分かっています。わたしたちの明日のため、降り掛かる火の粉は全力で払い除けましょう。わたしも覚悟を決めます」
ζ' ζ' ζ' ζ'
ほどなくテロリスト最後のひとりが捕まった。
ラルトさんではなかった。
ホッと内心安堵したのも束の間、今度は「ヘルムゲルト王がいなくなった」と一報が入った。王さま役をさせられていたポレル少年だ。
彼は市井の子だと判明したが、まだ今後の扱いをどうするのか決まっていない。このまま王やと主張するコトはないものの、安易に市中に放つのも難しい。実際王都である京師サントロヴィールがどのような混乱に陥ってるか想像すら出来てない。
下手をしたら王を誘拐した朝敵やとアステリア討伐が大々的に発令されてるかも、なのである。
「最後の男も取り調べましたが特に得たものはありませんでした」
「たった数人のテロリストを送り込んだところで、アステリアがどーにかなるとはさすがに考えまい。騒ぎのドサクサで兵団を進軍させようとしたか、それとも別働の作戦を実行させているのか」
そこまでしゃべって黒姫、瞑目。
オメガ参謀が空になったお菓子の袋を丁寧に折りたたんでポケットに入れ、言上した。
「黒姫さま。いっそこちらから仕掛けましょう。アルファ、ベータの軍はそれぞれの持ち場に展開しております。ご命令ひとつで動けます」
「――その意図は?」
「石像の数と所在を知ること。知った後、別働の少数精鋭で叩きます」
キャラ紹介①やみきハナヲ




