にじゅしぃ 発明品づくし
こんな時間になってしまいました。
「ちょちょーっと、タンマ、タンマッ」
「なーにさ、ペロペロキャワイイちゃん」
強引に抱きかかえようとするバズスに抗いつつ、背中側を見た。
置いてくなとばかりにわたしの服を引っ張るのは、かんなぎリン。
「構わんよー。幼美少女も来いー。団体さまで敵に当たろー」
リンも、バズスの大きな腕に抱き込まれた。
わたしと共に、バズスの腕の中で縮こまっていたシータンがゆう。
「でもバズス。やみくもに跳んで大丈夫ですか? 敵のど真ん中に着いたら、いきなり最終回に近いクライマックスバトルを演じなきゃなりませんよ?」
「ノンノン。それは無いっすよー。爆発テロが起こった現場に跳ぶだけよん」
ゆってる間に到着。
――爆発地点は庭。宮殿建物の壁一面が亀裂を起こし、崩れ落ちた箇所もある。
「ケガ人数名。死者はありません」
「犯人は?」
群がっていた衛兵たちの誰も見てなかった。
リンがブツブツと呪詛のセリフを吐く。
「呪詛ではありません! 個体スキルを発揮してるんです!」
「それは失礼」
向かいの建物に侵入しようとしていた男がひとり。法衣に身を包んでいる。その、いかにもな不審者が「ウゲッ」と口から人形を吐いた。
「胡乱者! あなたはヘルムゲルト連盟騎士団の人ですか? それとも聖教会の人間⁈」
『決まってる。聖なる我らは黒き悪を滅するために神より遣わされた』
日本語で頼む。
よーは自分たちは正義と?
りょーかーい。
んじゃアステリアは悪でいーでーす。さっさと帰ってクダサイ!
「コイツ。何で見えんかったんでや?」
「聖布です。大昔にわたしが開発しました」
「シータンが? 発明したん?」
感心してたらそのスキに男が逃げた。逃げざまにまーるい玉を投げつけてきた。
わたしら慌てて障壁でガードする。
「先ほどのバクダンです。テツハウと名付けた、大昔作ったわたしの発明品です」
「……シータン。ナニ敵の戦力増強に貢献してんのさ?」
ムッスとシータン。
「特許申請してたらいつの間にか盗まれてたんです。……多分悪い人に」
「やーねぇ。悪い人。魔女の発明品で戦ってるわよォ、魔女をバカにしといて」
バズス、跳躍して男の前に立ちふさがり、聖布を分捕った。
たじろぐ男を眺め下ろしながらゆっくりと聖布を被る。
「ひいぃ」
脚をもつらせつつ逃げる男、「ぐえっ」と前のめりにコケる。走り寄ると泡を吹いて失神してる。
「バズス。やりすぎや」
「こっちだよー」
背後から、両脇を抱え持ち上げられた。
ニュッと空中からゴブリンが顔を出す。
「こんにゃろー。没収や! リン、持っとけ」
「はーい、センパイ。うしし」
「うしし? あ、やっぱアカン。シータン、自己管理してて」
透明人間になれる魔法アイテム。
持たせるとヤバイ連中ばっかや。つか、そもそも世界平和に仇名しそうなシロモン、作っちゃイカンって!
「違います。聖布は元々『レッツ・オバケゴッコ』、丸玉は『パチパチ玉』って名前でした。ふたつともれっきとした子供用のオモチャです」
反論するシータン。
やけど、いけません。ソレまったく説得力ありませんてば。
「それさっき『テツハウ』ってゆってたやん? しっかりとバクダンと」
「聞き間違いデス」
いやいや。
ζ' ζ' ζ' ζ'
「サアて。問題はここからダヨ。他の侵入者をどうやって見つけるかネ。また分かりやすく爆発騒ぎを起こしてくれたらよかんべが
」
シータンが挙手する。
「ハイ、ナンデスカー。チャンチャンコ美少女チャン」
「わたしの発明で思い当たるものがもうひとつあります」
発明?
発明って、さっきのレッツオバケがどーのと、爆発する玉みたいな?!
「遠く離れた場所に跳躍できるアイテムです」
バズスとわたし、口を開けて呆けた。
「それって……転移やん?」
でも違うとゆう。
「その名も『トイレにGO!』って名前です」
「それどんなもの?」
「離れた場所にあるおトイレに一瞬で着ける便利・スグレモノ・アイテムです」
親指を立てたバズス。
「オーケー! 領府内の全トイレを調べるだ!」
「ねぇシータン。それってさ、どう便利なアイテムなん?」
「はい。そりゃあ便利も便利。頻尿の方も安心して旅行に行けます。――原理は転移の魔力パワーを鉛片に貯め込んで……」
「ああ! だから聖教会は石像使って魔力をかき集めてたんですね!」
かんなぎリンの嘆賞。
「きっとそーです。集めた魔力から微量に含まれる転移魔法に要するレア成分を抜き出し、あ、微量と言うのは1g中0.0041パーセントの確率で含有する地軸系の……」
「……シータン、解説はもういーから」
「とにかく便所に跳びゃイーデスナ! ヒャッホー!」
わあああぁッ、キョーフしかないッ!
跳ぶゾ!
明日は文の作成にとりかかります。




