よん ハナヲあたふた
絵を入れました。
エントランスで惟人と鉢合わせし、びっくり飛び上がった。
まーまー大げさな表現かも知れんけど、それほど驚いたってコト!
夜勤のバイト終わってから、直接学校行ってたん?!
どおりで、待ってても帰って来ないはずや。
「ハナヲちゃん、おはよー。オレ、今日早退する」
「先にガッコー来てたんや? ――って、へ? 来て早々に帰ってまうん?!」
「うん。……ちょっとね」
さしずめシータンあたりから連絡をもらったんやろ。……陽葵の件。
「よ。暗闇姫」
「あ、えーと」
「忘れんなよ、武市だよ。武市半平太。……暗闇姫、生徒会、どーすんだよ。部活だってもうじき試合があるんだろ?」
「あ、ああ。お早う、武市。――そうだな。心配してくれて有難う」
わたしと一緒に登校してきたコトに、ここで気付いたらしい。惟人、ちょっと眉をひそめた。
別にやましくないぞ、ゆっとくが。
「惟人、陽葵なら大丈夫や。シータンも君に心配してもらおうとしてキミに連絡したんとちゃうやろし」
「……いや。シンクハーフからもらった連絡じゃないよ。漆黒姫からだ」
「漆黒姫から?」
黒手紙が届いたらしい。
この手紙、切手も貼ってないのに異空間の壁貫いて即時配達されるんやから、けったい極まりないシロモノ。
「うぬ? 料金着払い? キモッ」
「気付かずに封切ったら、財布から3500円抜かれたよ。とんでもない手紙だ」
武市くんがわたしらの会話に入りたそうにしてる。
「アステリアから手紙が届いたってハナシやねん。気にせんとって」
「アステ……? いまどき手紙……? 暗闇姫一家が変わりモンだってのは周知だし、気になんないから」
あーそれ。けっこう気にした方がいいよ~?
「惟人。この手紙、読ませてもらってもいい?」
「いいよ」
目通ししてわたし、踵を返した。
「アレッ暗闇姫? どうしたんだ?」
「わたしも早退する! ……あ、暗闇姫惟人も早退ね! 行こ、惟人ッ!」
「う、うん。――済まないな武市。先生に伝えてくれ、……えーと、暗闇姫陽葵が具合悪くしたので、とでも言っといてくれ」
「具合? 何かあったのか?」
「だいじょぶ。心配いらないよ! 暗闇姫家の問題やから! 頼んでゴメン!」
わたしも惟人の弁解に便乗。
背中ごしに武市くんが何か叫んだみたいやが、よく聞き取れなかった。
ζ' ζ' ζ' ζ'
家に帰り着くと、シータンが洗濯ものを干し終わっていた。
お礼もそこそこに手紙の内容を告げる。
「フーム。ヘルムゲルトの首都、京師でクーデターが起こったと? その首謀者が魔物族を名乗っていて?」
来訪中のアステリア領主スピア姫が、人族たちで緊急構成された救国軍によって、拘束されたとのコト。何でもアステリアが魔物族に信奉しているからという理由らしい。はッバカバカしい!
漆黒姫の手紙には『人間界に来て早々に、心躍る出来事に遭遇し楽しい』とある。惟人に送ったのは召集令状だそうで。
家には同様のものが2通あった。わたしの部屋とリビングに。
たぶん文面は同じやろ。開けたらお金盗られるので開けない。
「陽葵は」
「彼女自身は身を護る術を心得ているので心配ないでしょう」
しれっとゆい放ち、掃除機をかけだすシータン。
し、心配ないってシータン! そんな……。
黒手紙




