いち 男子告白
「ななきっ」スタートッ!
ζ' ζ' ζ' ζ'
悶々としてる。
授業中も彼女のコトが気になって集中できひん。
彼女。そう、陽葵。
あの子、わたしの方のゴタゴタ(※ろっき)が解決してからもう3日も経つのに、何の音沙汰もなく。
漆黒姫はアステリアの領府レイシャルに引っ越ししちゃったし、ガッコー休んで訪ねてみよーかな。
「暗闇姫ー」
「――! はいっ」
「45ページ、読んでみろー?」
うちの担任だ。
見た目ボヤーッとしてる風で、結構するどく油断や怠慢を衝いてくる。
「はいぃ。……えーと……」
「今は国語の時間だー。英語の教科書はしまえよー」
……う。また恥をかいてしまった。
ここでいっそドカンと笑いが取れればまだ救いがあるけど、誰も反応する者無し。だって来週から中間テスト、――やもんなぁ。そりゃピリつくよねぇ。……ガクッ。
ホームルームのあと、階段の踊り場でひとりの男子に呼び止められた。わたし、掃除当番やったそうで。
「なんならオレ、手伝ってやろうか?」
ダレやったっけ、この子……。
惟人よか少し背が高い気のするメガネの少年。
無造作に伸びた明るい系の髪が、そのメガネと耳全体にフワッとかかってる。
「あ。大丈夫。教室に戻るし」
「な、なぁ。暗闇姫。お、おまえさ、か、か、カレシいるの?」
「カレシ? ……居ない」
少し前にフラれたばかりです。キズ口に塩を塗り込まないで欲しいです。
「いつもさ、放課後とっとと帰るだろ? ……もしそーゆーんじゃなかったら、オレと付き合ってくれ」
「……ホンキでゆってんの? いーよ、別に」
……アレ、わたし今、「いーよ」ってゆっちゃった?
あまりに上の空すぎだ。
「ま、マジで?! ホントか?! いっし!」
ガッツポーズをとる男子。
そんっなに喜んでくれてんの? こっちこそマジで? ……ま、いっか。
「掃除手伝うから一緒に帰ろうぜ?」
「……え、いきなしカレシ面?」
「えっ? ダメ?」
「いーよ、別に」
それよりキミの名前が知りたい。ついでに人柄も。
……ゴメン。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「暗闇姫って姉ーちゃんなんでしょ? あのふたりの……」
「え? あのふたりって、陽葵と惟人? そーやで?」
そっか。あらためて認識。つコトはこの男子、わたしよかいっこ年下や。だってわたしは1年留年してるんやもの。
「あのふたり、中一とは思えないよな。他のヤツらより一等とびだしてるっていうか、やたら目立ってるし」
「その点わたしはジミかなぁ?」
「あ。いや。地味ってか……その、カワイイ?」
「は? よくそんなヘーキでおべんちゃらゆえるね」
「おべんちゃら……?」
「心にもないお世辞ってイミ。……って、……別にいい。なんもない」
テレテレしててもゆーコトゆーね、近ごろの男子は。こっちがその倍テレるよ。
「わたし駅から電車なんやけど? 地下鉄。奈良方面」
「あ、オレも同じ。吉田駅まで」
「へーそーなんや。んじゃ途中まで一緒やね。……てか、今までもずっとおんなじやったん?」
「そーだよ。気付かれなかったって辛ッ。毎日電車でカオ合わせてたのに」
そ、それは申し訳ない。
駅までの10分間、少年は多少声を上ずらせながら、ずっとしゃべり続けていた。
ハナヲと武市くん




