さんじゅ。 何とかしなきゃやんね?
「ぷりちー魔女っ子らめ。どこまで人をバカにしたら気が済むのだ。――ま、いーわ。それでは一から教えてやろう。この大魔道士ゲンコさまの偉大ぶりを」
「つーかさ。アンタ、なんでハダカなの? ホントーにキモい。人にモノ教える前に、まずは服着るコトから覚えなよ、この原始人のド変態オヤジ」
「ワシの魔力を喰らったらオマエらなぞ虫のように消し飛ぶぞ。そろそろ平伏しろ」
「耳ついてるよね? わたしの言ってるコト聞こえてるよね? わざとなの? わざと罵りを受けたくてそーしてるの? だったらさ、もーわたし、何も言えない」
わー。
オジサンとルリさまの会話、どこまで行っても平行線だー。
魔女学校のときのルリさまに戻ってるー!
まるで自分が罵倒されてる気がする―。
シータンが無言でわたしにくっついた。何かを伝えようとしてる。
え、なになに?
「ハナヲ。気付いてますか?」
「何を?」
「魔力障壁がぼちぼち限界点です。大魔道士ゲンコのパワーはやはり底知れません。アタマに血が上ってるココロクルリが真っ先にやられてしまう危険があります」
「そ、そーなん? りょーかい」
いつの間にかシータン任せになってた防御陣がもう持たないとゆう。バカなゆい合いをしてる間にも相手は攻撃の手をまったく緩めてなかったんや。
魔女3人がかりで約10分の攻防。それが精一杯の抵抗だなんて。
なんとも情けないが、相手は歴史に名を刻む魔道士らしいから、そりゃしゃーないか。
「ねえハナヲ。どーしてハナヲはこのドヘンタイに対してそんなに手加減してるの? ひょっとして、ヘンタイエロオヤジが好きなの? 前世で同類だったから仕方なしなの?」
「待って待ってルリさま。そりゃわたしだって降り掛かった火の粉はしっかり払うよ。けれども今回は、元々わたしらがわたしらの都合で暴れ回ってんやん? やからオヤジがどーとかこーとかとは違うくて、ちゃんと話を通したいってか」
「えー、よーするにはさ、さっき問答無用で殺されかけたシンクハーフやわたしよりも、あのヘンタイの肩を持つって言うんだ?」
「そーやないっ、違うくて! 正々堂々、せめて魔女っ子の言い分を通したいってか」
あーもー。この修羅場で、なんでわたしら仲違いしてんだよっ。
「ハナヲ。障壁が悲鳴を上げてます」
片袖の無くなったドテラのシータン、怒りと焦りでいっぱいいっぱいのはず。
なのに、わたしの挙止に従おうとしてる。かたや、ルリさまの怒りも頂点に達してる。
「シータン、ルリさま。下がってて。わたしがオトシマエをつける」
「オトシマエ? ……って?」
ワカランか、ルリさま?! オトシマエってのはさ……、ま、後で説明するよ!
「仁義なき戦いをするわけですか、ハナヲ?」
ウーン惜しいっ、ちょっと違う、シータン。
これも後でね。
「とにかくわたしに任せてよ。ふたりとも」
ここでとびきりの笑顔を見せた。安心してもらうために他ならない。
何かをゆいかけたふたり、「ん」と同時に口を閉じ、うなづいた。
――それでよし。
さあ、大魔道士ゲンコさんとやら。
ゆっくりと、タイマンで話し合いをしましょうか。
ハナヲ「わたしに任せろ」




