にじゅご。 破壊していーの?
闇館はパッと見、メッチャ古い洋館のようである。
肯定的にゆえば、歴史ある西洋風高級ホテルに見えなくもない。
だけどしかし。
「この階、一通り回ったよね? 下に向かう階段が無かったの、なんでかな?」
「そりゃ幻術魔法がかかってるんでしょう。魔道士【原子】の仕業だと思います」
「またゲンコか。ヤだな」
「でさ、そこ。ほら、上がって来るエスカレーターはあるよ?」
ルリさま、ナイス観察眼!
いやー下りエスカレーターはやっぱり無い!
「じゃあ答えはひとつ。――ハナヲ、やっちゃいなさいな」
「やっちゃう? な、何を?」
シータン、わたし服ののソデに手を突っ込み、魔法の杖、【双妖精】を抜き放った。
「ぱら・らったんたーん。ハナヲの秘密道具、魔杖【双妖精】う!」
「……いや、シータン。杖はいーんやが、これでどーしろと? ……まさかと思うけど……」
「いっそ破壊の限りを尽くしましょう。漆黒姫だってモンク言わないと思います。知らんけど」
出た、知らんけど。
いやそれは無責任とゆーものデスよ、シータンさん?
「ナニゆーてますのやら。そりゃ襲って来る不埒な敵が現れたら、それは、降り掛かった火の粉。しっかり払わさしてもらいマスけれど。イミ無く人んちを壊すのはいかがなものかと思いますよ?」
「いーんです。わたしが許可します。ハナヲはアタマがカタイです」
プーッと膨れるシータン。んじゃ君が破壊してみんさい。
ワーワーゆい争ってる横でルリさま。
「そりゃ、床を壊して進めば階下には行けるでしょ? 修理代はバカになんないだろうけど」
「ドントウォーリー。それはなんとかなりますよ。知らんけど」
「魔女っ子はいつもそーやって、わたしんちも破壊してんのやな?」
「魔女っ子って言われるのは心外です。せめて魔女お姉さんと」
「モメてる場合じゃないでしょ。何とかしなきゃこの先には進めないよ?」
「うーん……そだね。もうじき夕方の6時やし、いったん食堂に戻ろう。漆黒姫に断りを入れるんや」
「ハナヲのマジメさが出たね。ま、わたしも賛成だよ」
「仕方ないですね。今日のところはお二人のカオを立てておきましょう」
クライアントの顔色はうかがっておかんとね。
破壊するにしても、漆黒姫のオーケーはもらっときましょ。
ハナヲ「破壊魔やないですから」




