じゅうに。 アルマに再会?
アステリア領府レイシャルの一角に職人街がある。
そこの裏通りにシータンこと、魔女シンクハーフの住まいがあった。
このところの彼女はそこと、魔法学校の教員宿舎と、そして、わたしんち。
みっつの拠点を日替わり宿所にしている。
魔法学校には居なかったんで職人街の実家を訪ねたってワケ。
この場所を訪ねるのは半年以上ぶり、いやもっとかな……久々になる。
わたし、実は少し緊張していた。
何故ならある人物と、否が応でも顔を合わせるコトになるから。
「……あら。暗闇姫さまではありませんか」
「ひゃあ?!」
建物の入り口をノックしかけたら後ろから声を掛けられたので、思わず悲鳴を上げちゃったのだ。で、その相手が――。
「――あ、アルマ……やなかった、長柄さん?!」
「お久しぶりです。そんなに驚かれなくても足はありますし、暴漢ヤロウでもないですよ」
「そ、そうやんね、ゴメン。つい……」
彼女に勧められて中へ。
目当てのシータンは入口すぐの、おっきなテーブル周囲をうろついていた。
テーブル上には、置き場の無いほど様々な形状の器物が並べられている。
そのひとつひとつを手に取り、じっくり丁寧に眺め倒しているシータン。
……ナニやってんの?
「あ、ハナヲ」
手を動かしたままの応対。忙しそーやな。
言葉選びに迷ってたら、チョイチョイと後ろから背中をつつかれて「お茶でもどうぞ」と、長柄さんに勧められた。
びっくりして2、3歩飛び退いてしまう。
わたしの反応を奇妙に感じたのか、ロウソクのように白い頬をプッとふくらませた彼女は「えーと」と首をかしげた。
わたしの態度、ヘンだったよね? ね?
――カエさんはシータンのお世話係。いわゆるメイドさん。
浮世離れしたシータンに日常生活を送らせるために、無くてはならない存在なのだ。
「……はて。シンクハーフさま。わたし、ハナヲさまに何か粗相をしましたか?」
違う、違う!
……むしろその反対です。
前世の自分を知っちゃったいま、あなたに対するわたしの気持ちが劇的に変化したんですよ!
――なーんて、事細かにこれまでの出来事を説明したい。
けどしたところで、どーなるでも無しなので。
そのモヤモヤが、わたしの不可解反応に結びついてしまってるんですよ?
アルマ……と思って観察してみれば、面影は当然ながら残ってる……ものの、すっかり別人や。
容姿自体もそうやし、立ち居振る舞いとか、人柄とか、やっぱし違う気がする。
……でも、やっぱり間違いなくアルマなんや。
わたし、ナディーヌ・ノエミ・ブーケやった時分の記憶が前面に浮き出てくる感覚が止められなくなる。
けれども相対するアルマ……変じて、長柄さんには、その感覚も、もちろんわたしのような過去の記憶だって無い。
だって。
――アルマという女性は、とうの昔に死んでしまったんやから。
この人は、アルマやない。
ただのアルマにやや似てる人なんや。
そう思うと、なんだか悲しくなった。
カエ「警戒しないで」




