ご。 親族でも仁義なし?
我が家のリビングでバズスが、ミズーリ翁と対峙している。
バズスの流す脂汗が、場の緊迫感をいっそう際立たせてる。
あの常時おフザケモードのバズスがマナコを血走らせ、全身を総毛立たせているのは、耳を疑う言葉を伝えられたせい。
「ウソだろ……? もっかい言えよ、死にぞこないのオクサレジジイ」
「あーん? 何度だって言ってやらあ。先日お前からもらってやったはした金なぞ、もう一銭も残っちゃおらん。博打でぜーんぶ、すっちまったからな。はい2回目終わり。もう一度言うかの?」
バズスだけでなく、わたしも、わたし以外の連中も同じザマだった。
そこにいた全員が、ミズーリ翁の放言に「ポカン」と呆けた。
先日、陽葵のとりなしで、バズスがミズーリジイチャンにお金を援助し、ヤレヤレこれで話が丸く収まった――と胸をなでおろしていた……ところやった。
「――ちょ待って、ミズーリのジイチャン。アンタ、マジでバズスから融資してもらったお金を、……その……、賭けで失くしちゃったん? 経営立て直しの資金にはせんと?」
「あー? マジマジ。大マジじゃよ? だってよ、あんな小銭ぼっちじゃぜんっぜん足りんかったからのう。せめてワシのパワーで倍にしてやろうと思ったんじゃ」
はぁっ?!
この人、気は確かなん?!
然しものシータンもいつも恒例の冷蔵庫漁りの手を止め、少し距離を取りつつルリさまとともにテーブルについた。ふたりして呆れてるを超越し、芯から恐ろしげなものを見るようにジイチャンを警戒しだした。
この日、惟人は例によって部活とバイトで家に戻らず。
陽葵は今回の貸借取引の見届け人として、わたしとふたりでバズスをはさみ、彼の両左右から緊迫のリビングソファに配置している。
現在のところ陽葵は黙したまま、わたしは全身に妙な発汗を覚え、少しムズついたお尻を浮かせ気味にした。
「どうゆーつもりなん?! バズスはアンタを! ジイチャンを信用してお金を預けたんやで? その好意を踏みにじる行ないをしたんやで? 僅かなお金やって? 聞いたトコやと日本円に換算したら3千万円はあったって聞いたで?!」
「……へっ3千万程度じゃよ。それと信用などと抜かすが、黒姫に命令されて仕方なく、あくどく儲けた金を差し出しただけじゃろう? あんな薄汚れの金なぞ、まともに使うだけバカらしいわい。汚い金は汚い使い方をするに限る」
ひ、酷い。
なんて言い草や。
「ミズーリさん! それはあんまりなゆい方や! そりゃバズスやって今まで色々悪いコト重ねて来たやも知れん。けどな、やからこそ今回、ジイチャンに有効に使ってもらいたいって思ったはずなんや! それを……アンタは……抜け抜けと……ヒドイにも程がある!」
わたしの怒鳴り散らしを皮切りに、バズスが雄叫びを上げた。岩石を打ち砕くような咆哮。……現にリビングの窓ガラスが、「ビシビシ!」と亀裂を走らせた。
「ウギイイイッ! ジジイ、百ぺん死にさらせッ! 入れ歯ガタガタ言わしたるッ! 腕と足をモギモギして、リアルダルマさん転んだゴッコしたるッ!」
そ、そ、それはしたらアカンッ。
陽葵とバズス「オーノー!」




