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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ごきっ 魔女っ子だって女の子だもの、たとえ異世界の住人だろうとラブコメ展開しちゃうから応援してほしいっ

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よんじゅうななっ。 「打ち上げ」


 同人誌の即売会が終わり、帰りの足取りは重かった。精神的にではなく、荷物がね。なんせ販売数は23。印刷所さんが発注数よりも大目に刷ってくれてるから、残は97。ほぼ100冊まるまる残ったカンジ。


 それでも4人の心は案外と軽かった。なぜってそりゃ、やり遂げた感が想像よりも大きかったからに違いなく。


 確か言い出しっぺは南田センパイやったと思うが、帰りに打ち上げしよう! ってなったものの、適当なお店が見つからず。じゃあ後日あらためて暗闇姫家でパーティしようとなり、その日はやむなく散会となった。


 最寄り駅に着くまでの間、電車内の陽葵は「今日の敗因」を熱っぽく語った。わたしは主に相槌を打ちつつ、次号本のボンヤリとした構想と、宿題の残りをいかに片付けるかについての思案を、振り子時計の要領で交互にスイッチさせていた。


 在庫の半分に相当する50冊を陽葵とわたしで引き受けていたため、一人当たりの担当分は25冊。駅から漕ぐ自転車での帰路はかなりのハードモードやった。途中途中で細い路地をすり抜けるときなど、フラついて壁に接触しないかってヒヤヒヤした。


「ハナヲ姉。いっそホウキ使えば?」

「他人事やと思って。一般人に正体がバレたらどーすんの」


 真に受けてゆい返したら、自転車の運転がヘタクソなので心配してやっただけだと、揶揄を辛辣な言葉で正当化された。くっそ、悔しいっ。そーゆー陽葵は確かに上手に乗りこなしてんだよなぁ。これがキャリアの違いとゆーものなのか。って何のキャリアなんだ。


 家に着き、その日はすぐに寝た。電池切れしたような爆睡だった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 3日後に開いた打ち上げパーティ。これにシータンとルリさま、それから()()()()リンも加わった。もちろん惟人もいる。惟人なぞ部活からバイト先に直行後帰宅した彼はみじんも疲れを見せず、飲めや歌えやの大はしゃぎにとことん付き合ってくれた。


 それはシータンら魔女っ子組も同じだ。

 例えばリンは前世サラリーマン時代の如才ない気の利かせようで、鍋のための具材を大量買い込んで土産としてくれた。わたしとしたことが、そのときばかりはつい彼女をイイコイイコし、調子に乗らせる原因を作るハメになって大いに悔いた。


「リンちゃん小学生なのに剛腹ですなあ、お小遣いは大丈夫なのでござるか?」


 水無月まなは、――南田センパイもだが、彼女らは()()()()リンがそこいらの小学生だとひたすら信じ込んでいる。()()()()()()()()()()()()()()あれだけ南紀白浜でリンの魔女っ子ぶりを見てたのに。


「バカにしないで欲しいです。こう見えてもわたしは……」

「リン。それって公開可能な情報なん?」

「……。(ノワル)姫さまのご意向のままに」


 またそれか……とげんなりしつつ陽葵を見ると、顔が赤い。眼がトロンとしてる。


「……間違えて()()()()()()()を飲ませてしまいました」

「大人のジュース?」


 シータンから缶を奪うと微量だがアルコール分が入っている代物だった。しょわしょわサワー?

ゆわれりゃジュースっぽい。


「リボルトセンセの負の遺産だ」


 彼自身も間違って購入し飲まないまま、長期放置されてたんや。……って待てよ? わたしやリンって転生後にはカンゼンに体質変化してるものなのか? 陽葵はもともとからお酒と縁のない前世やったから合点がいくが、わたしらなんかは前世中年。……そこんとこ、どーなんだ?


 リンがわたしを観察していたのかニヤリとすり寄って来て、


「オイシソーってカオしてますねぇ、センパイ? 飲みたいと?」


 とあおってきた。


「軌道逸れてるよ、リン。南田センパイらにどう説明するかって話でしょ?」

「まーまー。急いては事を仕損じる。と言いますでしょ? 課題点、疑問点は大事な事から優先順位をつけてツブさなきゃですよ」


 秘密の漏洩(魔女バレ)よりも、飲酒の方が優先度が高いと?


「てか、アンタ! 飲んでないよね?!」


 飲んでマセンよ! とムキになる赤ら顔。


「リン試験管には魔物(ミニュイ)族魔力入りの幻惑ジュースを試し飲みしてもらってるよ?」


 ルリさまがしれっと暴露。

 それアステリアで専売特許申請中のお酒やん! 幻惑ジュースとかって、ゆい方変えてもダメ!


 ……にしてもいい匂い……。周囲を窺い、そっと口をつけてみる。

 ……あ、ダメや。前世の下戸がそのまま引き継がれたのか、そうではないのか、とにかくやっぱしお酒と名の付くモノはわたしには合わない。


「なーハナヲ」


 南田センパイ!

 いきなし横にいるんやもん、ビックリした!


「はいっ?!」

「わたしもマナも、オマエらに憧れてはいるが、特別には思ってねーよ? だってハナヲはハナヲじゃねーか」

「へ? ……それってわたしらが……」

「南紀白浜は楽しかった。また行きたい。それにお前らと知り合えて良かった。ただそれだけだ」


 わたしはシラフだぜ。と南田センパイは最後に付け加えた。


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