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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ごきっ 魔女っ子だって女の子だもの、たとえ異世界の住人だろうとラブコメ展開しちゃうから応援してほしいっ

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さんじゅうにっ。 「口にしちゃダメなコトもある?」


 ドオン! ――と。

 廊下で爆発音がした。


 こらあ、魔女っ子どもッ!

 暗闇姫家ならともかく、他所さまの家で騒ぎを起こすなーッ!


 ところがそこにいたのは陽葵(ひまり)……だった。


「……いまの、陽葵が仕出かしたん?」

「……わたしとしたことが……壁、少し焦がしたかも知れない。小遣いをはたいてでも弁償する」


 恐る恐るカオを覗かせた()()が、「どーかしたのでござるか?」と訊いた。


「弁償します。……つい」

「って言うかさ、陽葵(ヒマリン)が心配なんでござるが?」

「あ、いや別に……。わたしは……大丈夫です。……ちょっと散歩して来ます。お騒がせしました」


 逃げるように出て行った陽葵。


「……散歩? 朝ごはんも食べずに?」

「……えと、まぁ」

 

 様子がおかしい陽葵を不審げに見送った後、今度はわたしに目線を移してきたマナ。

 その目は熱ーく、痛かった。

 何がゆいたいのかは見当がつく。

 惟人のセリフについてでしょ?


「惟人はあんなコトゆってるけどさ、わたしはさ。わたしが好きなのは……」

「もおっ!」


 怒ったようにマナに、バチンバチン! と肩を叩かれた。


「ハナヲの返事、わたしが聞いてどーすんだ! そんなのよりか、朝ゴハンまでにヒマリンを連れ戻しといで! そっちが最重要でござるよ!」

「う、うん」


「明らかにさっきの会話、あの子も聞いてたでござろう? 中学1年生の心の不安定ぶりをナメるなよ?!」

「そ、そんなコトゆわれたら……、わ、わたし、どーすりゃえーのん?!」


 せっかく後追いしかけたのにオドすようなコトゆーから、思わず振り向いてもーたって。そしたらマナは掛けたメガネを興奮の吐息で曇らせて、


「それともアンタの目の前にいる中学2年生の恋の恨みも背負って逝くかぁ?」

「え、遠慮しますっ!」


 玄関を飛び出した。日光に当たった途端フラつく。徹夜に朝日は堪えます。


「砂浜かな」


 根拠の無いアタリをつけてダッシュ!

 ――と。


「……張り切ってドコ行くん」


 ズデーッとコケた。

 家の前でボーッとしてやがったよ、陽葵のヤツ!


「ど、ど、ドコ行くんは無いやろっ。青春映画みたいに家脱走したクセに!」

「……またアホ言うてる。……ま、いーや。せっかくやし、海見に行く?」


 誘われた? 陽葵に?

 彼女の小学校入学前に、「文房具屋に行こう」って誘われて以来や。そんなのを覚えてて引きずってるわたしもわたしや。

 緊張しながら「いーよ」と応えた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「お姉ちゃん、カモデナンディの岬に行ったそうやな」

「うん、ラマンダの墓参りね。見晴らしのいい、素敵な場所にあったよ」


 ……この場所と同じくらいね。

 思ったが口には出さない。自分よりも陽葵のセリフが今は聞きたい。


 沈黙の末、陽葵が吐露をはじめた。


「いまさらや。自分としたことが、今さら何を取り乱してんのかって。実に腹が立つ」


「けど。それだけアンタの想いがホンモノってコトやないん?」

「……聞いた風な。わたしの何の想いがどうホンモノなのか、具体的に説明して欲しいわ」


 いえ。幾らでも具体例は挙げられますが、照れ死にしそうなあなたに殺されそうやから止めときます。


「過去の記憶が戻って、自分の中の何かが変わった?」

「どーかな。正直自覚ない。……ただひとつゆえるんは、わたしらって昔から仲良かってんなって」

「そりゃ。親兄弟やったしな」

「親兄弟でも仲が良いとは限らないよ?」

「……もしかして、現世でわたしを生んだ女の事を言ってる?」


「いーや。陽葵の母親のコトじゃなくってさ、自分のコト。あんましわたし、いい父親や無かったなあって」

「反省してんの? それとも後悔してんの?」

「両方かな。それ以上に名残を惜しんでる」

「名残り? なんの?」


「父親を演じてたときの感覚がほとんど無いんだよね。魔女っ子の性分のが強いせいなんか知れんけど。父親役はもうムリかなって」


 ケラケラと嗤った陽葵。な、な、な、なんと! 陽葵が。


「だから。あなたはお姉ちゃんでいいって、そー言ったやん。父親でも母親でも姉でも。何にしてもアンタとわたしは家族。ただそれでいい」


 まっすぐ姿勢を伸ばす陽葵。


「……でもな。家族でも許容できるコトとでけんコトがある。惟人については後者や。わたしは決して後ろに引かん」


「ひ、陽葵? そやからさ、ソレって何がゆいたいの? って話やねん。つまり陽葵は惟人が好きなん? そーゆーコトなん? わたしニブチンみたいやからさ。そのあたりをこの際、ハッキリしときたいねん。全力で応援もしたいし。惟人にだって『陽葵をよろしく』ってプッシュできるやん?」


 目を開け広げてわたしを凝視する陽葵を、見た。

 ブラックホールにスキップしながら突入してる心地がした。


 禁忌。

 アンタッチャブル。

 パンドラの箱。


 そんな単語が浮かんで消えた。

 直後、消えたのはわたしの意識も同様。


 最後に見たのは陽葵の、マグマが噴き出したかと錯覚しそうなほどの真っ赤、カッカした、カオ。


 死んじゃう。

 あー、いいパンチ、もらったぁ。


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