さんじゅうっ。 「えーさらばなの? 戦友たち」
南田センパイ隊長指揮の下、わたしらの同人原稿執筆部隊はいよいよ修羅場を迎えていた。
わたしらの執筆スタイルはテスクトップPC1台とノートPC2台を武器に、アナログ手法を混ぜた方法で、最終的にはデータ入稿を行うことを前提にしている。
3台のPC君を拠り所にしてるため、必然的に隊長の南田センパイとペン入れ頭のマナ、そして今回からのニューフェイスとなった陽葵の独占使用状態になっている。
下描きからペン入れ、ベタ塗りまでを終えた紙原稿をスキャニングしてから、改めてPC3人のデジタル小隊が手直しするってゆー手間ヒマかけた手順を踏んでいるのは、トーゼン完成の精度を上げるためなんやが、これが結構メンドーくさい。
今晩わたしが担当しているベタ塗りも、ムラがあればスキャン時にすぐにバレて手直しを命じられるし、かすれ線や消し残しなんかもデジタル小隊がしてくれたらいいのに、その役割を担っているとされるアナログ小隊の側がどやされる。
アナログ小隊所属のシータン、ルリさま、わたし、そしてから惟人、オマケのリンは始めにデジタル小隊(PC3人組)が上げたネームを元にキャラと背景の下描き、ペン入れ、消しゴム、ベタまでを行ってから、原稿のスキャナー取り込みをおこなう。
B4サイズの原稿を、A4スキャナーで分割取りするから割とメンドい。
そのあとを引き受けるデジタル小隊は印刷屋さん指定の枠合わせ、ペン入れ修正、書き文字や集中線などの効果線足し、トーン、フキダシと文字、ゴミ取りなんかの任務を遂行して原稿完成へと導く。
メインとなる32ページのストーリーマンガに加えて1本の短編小説、イラスト数枚と、表紙、裏表紙、編集後記に奥付なんかをくっつけると、そこそこの本が出来上がるハズなのだ。
みんな何らかの任務が与えられているために少しサボっていると知らん間に未処理の作業が目の前に山積みにされる。
「ハナヲ、ヒマリン、惟人! おせーっ! さっさと席について仕事しろっ!」
南田センパイ隊長の怒鳴りに3人そろって「はいっ」と返事してしまう。
「ねえ南田センパイ。そろそろ夜中の11時ですよ? 夕方に帰宅してからぶっ続けですし、そろそろ身体を休ませませんか?」
おっ?
命知らずのリン曹長が提案を持ち掛けたぞ?
「……あー、そーだな。小学生の女の子にはちっとばかり無理があったかな。大人たちのコトを気にせず、先に寝てていーよ?」
「わ、わたしそんなつもりで言ったんじゃありませんっ。小学生だってバカにしないでくださいっ」
あ、アホっ。リン、アンタが口火を切ってくれへんと、みんなが雪崩を起こせへんやんか!
「そーですよ、南田センパイ。小学生とか中学生はカンケーなく、そろそろ寝支度しましょう。また明日一日、精一杯続きをするためにも、ね?」
こーなったら多少強引でもわたしが場の空気をけん引してやるっ。
「え? ハナヲ、もう集中力途切れちゃったんですか?」
シータン?! 思わぬ刺客キターッ!
どちらかってーと彼女は雑多な任務をこなしてて、イヤイヤ気分で付き合ってるもんやと思ってたのにーっ?!
……と立ち上がった? れーぞーこに向かった? 中味を物色し魚肉ソーセージを取り出しパクリ。……そのまま静止? 寝ちゃってる? やっぱし?!
君こそ集中力切れちゃってマスねー(怒怒)!
リンの弁、再開。
「真面目な話、正五位さまとココロクルリは明日学校ですし、そろそろ帰らないとなりません」
「魔女学校は夏休みやないの?」
「実は学生街でカモナン病が流行ってて、ちょっとしたマンボウ状態だったんですよ。その間学校が休校しがちだったたら、授業の遅れを取り戻そうとして夏休みがズレ込んでるんです」
こないだその病気に罹ってシンドイ目をした惟人が、イヤそうに横を向いた。
それは大変や。
「学校か。なら仕方ない。関係一同はこれにて解放だ」
「――あ。なら宿題もらってるわたしも、ですよね?」
「……テメー、どの口が言ってんだ? あぁ?」
ドサクサに紛れて一緒に逃亡しよーと思ったのに。アカンかったぁ。
アステリア傭兵団の魔女っ子らを失った我がアナログ小隊の運命はいかに?




