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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ごきっ 魔女っ子だって女の子だもの、たとえ異世界の住人だろうとラブコメ展開しちゃうから応援してほしいっ

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じゅうくっ。 「湯船で女子共」


 カオを洗うんなら、いっそフロに入り直してやるか!

 開き直ってオフロに向かってみる。


 入口で苦笑。

 ここは異世界のハズなのに、なぜか和風旅館的な「女湯」と大書された暖簾が掛かっている不思議。ま、その方が心が癒されるし、かえって今の自分には有難い。

 脱衣所である物を発見する。葦で編まれた長方形の籠に、脱ぎ捨てられた着物が入ってた。


「こんな時間なのに先客や」


 と割合大声で独り言を発したのは実はわざとで、既に浴室内にいるであろう誰何に「わたし知らずに来ちゃった。さっさと退散しますね、不審者や無いですからね」と断りを入れるため。


 そーいやパーティ会場でアミダくじをしたな。あのとき入浴の順番を決めてたんだった――それを思い出してタメ息。これはしゃーないな。


「出直そ」


 肩を落としつつ踵を返したところで。


「オイ、敵前逃亡かよ」


 と、背中に聞き捨てならないセリフをぶつけられて再び吐息。ゆっくりと振り返る。


「そーゆーゆい方は心外です」


 カンケー無いけどね、だいたい南田センパイ、チチおっきすぎるんです!

 巻いたタオルが弾け飛びそーでしょ! まったく物騒なんですからっ。

 心の中で容姿をからかい、溜飲を下げる。……いや、下がらんし。逆に余計ムカついたし。


 ビショビショの身体で脱衣所の腰掛けに着座。脱衣の籠と同じく籐製のイスやから構わないとはゆえ、いまいち行儀悪いよ?


 これまた、何故か据え付けられている空冷式ショーケース。そこからコーヒー牛乳を取り出し、彼女にトス渡し。「取ってくれ」とアイコンタクトされたからだ。


「逃げんなよ、ハナヲ。まだ浜辺での決着がついてねーだろ? せっかくふたりきりなんだから付き合えよ」

「……あの、南田センパイ。わたしちょっと今日はそんな気分やないんです」

「ああ。シータンから聞いたぜ? 前世がどーたらこーたらで、どーのこーの、なんだろ?」


 すっごくアバウトかつ、端折りまくりだなっ? 何となく伝わるが。

 シータンから聞いたって、シータン! ペラペラ何話してんだよ!

 ヤケ気味になったわたし、寝間着を脱ぎ、浴室に入った。敵前逃亡ならぬ、敵中突破や。


「あら、ハナヲ。……じゃなかった、貧乳さん、こんばんは」

「わたしの名前は貧乳じゃねええ! 名前と侮蔑が逆や、逆!」

「あら失礼。わたしとしたことが」


 チッ。状況描写よりも先にツッコミしちったよ。

 湯船にシータンが浸かっていた。となりに三国一姫さんもいる。

 ……なんてニギヤカなんや。何が入浴の順番や。何がふたりきりや。

 もーどーでもいーわいっ。


 無言で身体を流し、浴槽に寄る。結構広いので先客のふたりが入っていても、あと一人くらい、まだ充分割り込む余地がある。


「オジャマします」


 居直って美女ふたりの横に並ぶ。

 シータンがわたしの肩にアタマを預けてきた。


「ハナヲ」

「なに?」

「ハナヲはハナヲ。ナディーヌはナディーヌ。……以上です」

「どゆコト?」


 言葉足らず過ぎ。本意が知りたいよ。

 不満げに聞き返したらシータン、語り出した。

 

「わたしはあなたがナディーヌの生まれ変わりだって、出会ったときから気付いてました。だから『仲間になってくれ』というあなたを無条件で信頼したのです。……でもそれが何か? そんなのであなたが傷つき悩むことはありませんよ? ちなみにココロクルリは当初あなたがそうであるとはまったく気付いてませんでした。けれどもスグにあの子とも仲良くなったじゃありませんか? それはあなたがあなた自身の魅力で仲間を増やして行ったからです。過去の人格も込みであなたは存在してるんです。なので今のあなたが消えてなくなるなんてことはありませんよ」


 今度は長すぎ。シータンの長ゼリフはウソくさいんだって。

 ただいつもと違うのは、うつむいてしゃべってるコト。わたしを見ずにしゃべっているコト。とゆーより、カオを見せてくれないコト。


 思い余って、


「それ、本心?」


 つい、聞いてしまった。そしたら。


「知りません!」


 と怒鳴り返された。

 彼女、ドボン! カオを湯に沈め。……しばらく出て来なくなった。


「ハナヲっち、ごめんなさい」


 シータンと入れ替わりに三国一姫さんに背中をくっつけられ、謝られた。この子もカオは見せてくれない?


「ムリやり過去を暴こうとしちゃったの、後悔してる。ハナヲっちが取り乱すってゼンゼン予想してなかった。喜ぶか、嬉しがるって、勝手に思い込んでた。……ゴメン」

「あー、そーねー。それに関してはわたしも自覚なくってよーワカランかったし、不快な思いしたとはハッキリゆいきれんから」


 ドバッ!

 とシータンが水中から飛び出した。

 大量の湯を被りながら、ゆでダコになったシータンをあっけに見て笑った。


 ちょうど南田センパイが湯船に飛び込んだタイミングだったので、あわや大惨事の巻になるところだった。

 それすらも笑えて仕方なかった。


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