じゅうよんっ。 「心の目で見る王宮なんだってさ」
「見るもの、触るもの、ぜーんぶ不思議だよなぁ。第一さ、一国の姫さまが客に食べ物集めさせるか? それってメッチャ楽しい夢じゃんかよ?!」
南田センパイがチョーシにのって【大漁旗】を振り回すと、同調したマナが、
「きっとここはセルフサービスの竜宮城なんすよ。このあとタイやヒラメの激カワダンスがきっと見れますよ!」
などと、旗の持ち手に手を貸した。
「……あのふたり、まだ夢心地なんですか? そろそろ日本に帰します?」
巫リンが不憫そうにお伺いを立てた。
リン、アンタが「ふたりを連れて来よう」って提案したんやったよね?
「ですが……お二方ともとても楽しそうですし、まだしばらくよろしいんではないですか?」
そーゆースピア姫も愛用の釣り竿を両手抱きしてて。ホント楽しそうですね。聞けば毎度こうして三国一姫さんと魚釣りをしているそうで。
「さかな釣りとか山菜採りとか、カモデナンディ公国を訪問する度の数か月に一度の楽しみなんです。三国一姫といるといつも時間を忘れてしまいます」
「わたしもよ。スピアが来るの、スッゴク楽しみにしてんねん」
ふたりは見た目、5、6歳以上は離れてると思う。けれどもそんな年齢差はものともしてない。
姉妹でなくって親友って言葉の方がしっくりくるくらい。
何故だろう、その輪にわたしも入りたくって仕方ない。
ち、違うよ?
やましさとか、変質者的な感情でゆってるんや無いからね? 単純に仲良くなりたいなって思っただけなんやって。……なんとなく羨ましいなぁってね。
「わッ?!」
後ろから延びた両手のひらで目をふさがれた。
「ハ~ナ~ヲ。どうかしましたか?」
「な、なんや、シータンか」
「スピア姫と三国一姫さんに特別な感情が芽生えましたか?」
「え……?」
「例えば『ええ乳しとるのう、ぐっしっし』とか」
「あ、アホかッ!」
「冗談ですよ」
今度はわたしの腕に手を回す。
「それとも、何か感じ取るものがありましたか?」
「……真顔のシータン、余計ブキミだよ。……ジッと見んとって」
問いに肯定も否定もせんかった。シータンの言葉の真意もよく分かんないし。
シータンのゆうように、心の底の方でジワジワと疼く【何か】を認識してた、だけどただそれだけやったので、彼女を適当にあしらうコトに留めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
驚いた。
首府……ってゆーから、豪壮な宮殿が立っているものとばかり想像してた。
一応宮廷の敷地内とされている区画にポツポツと小ぢんまりした小屋が点在してて、そこは厨房とか衣装倉庫とか、武器庫、食糧庫、その他衛兵や大臣たちの住まいがあるとゆうが。
建物自体に目印もなければ、特徴も無いからどれが誰の家で、何の用途の建物なのか、ゼンゼン判別できん。
――カンジンの王族の住まいはどれなんや? ……ってーのが、ワカラン。
「あの……三国一姫さん。あなた、家無いの?」
「ありますよ、ハナヲさん。あれです」
ニッコリとスピア姫が指す方向に……。
……いや、なんも無い。
「はへ?」
ありますよったって、なーんも無いですよ? 強いてゆえば周囲より少し盛り上がった草むら。
「……原っぱに住んでんの? まさかテント暮らし?」
「さあ、どーなんでしょ?」
姫さまがわたしをからかってる……とは思えんので、他のみんなの様子も観察した。
シータンとルリさまはわたしに対し怪訝なカオを向けている。
南田センパイとマナはわたしと同じ反応。
惟人、陽葵、巫リンは……さっさと姫が指す方角に歩き出している!
「あ、……あれれ……?」
このとき、また妙な感覚に襲われた。
こんな状況、前にもあったよねぇ……。そんなカンジの……。
よくゆー、デジャヴとゆーヤツだね。
目をシバシバさせてもう一度チャレンジした。
――そしたら。
「――あ、バカ高い塔が立ってる!」
「ハナヲセンパイ。心の目で見るコトをお忘れなく」
リンにゆわれた。
「……りょーかーい」
一本取られたよ。




