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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ごきっ 魔女っ子だって女の子だもの、たとえ異世界の住人だろうとラブコメ展開しちゃうから応援してほしいっ

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じゅうにっ。 「馬車の中でもかしましーなぁ」


 馬車の窓から垣間見える世界は、ふたりには刺激的すぎるようだった。

 ふたりとゆーのは当然ながら、南田センパイとマナであーる。


 今だ覚めないと思っている夢に必死に馴染もうとしているようだった。健気ってか、もういい加減現実逃避しなくてもいーんだからね?


「うおーっ、あの兵士、シッポが生えてるぞ? 和歌山じゃあんなアクセサリーつけんのが流行ってんだな」

「あの人だって驚きでござる! 翼竜みたいな翼でござるっ! きっと最先端ファッションですぞっ」


「お二方、いちいちウルサイですねぇ。大声出しすぎてたらノド潰しちゃいますよ?」


 かたや(かんなぎ)リンは冷ややかやね~。

 淡々と業務遂行するベテラン従業員の様相。そつなく仕事をこなし、ヤル気の無さをカバーしている。

 ゆっとくが、そもそもふたりはアンタが連れて来たんだゾ! この、アステリア(異世界)に!


 ルリさまとシータンは物静かにしてる……と思ったら、まさかの居眠り。念のために述べておくが魔女っ子のふたりは本日の予定は公務扱いになっている。

 ルリさまは魔女学校の生徒として社会見学、シータンはその引率者。


 オーイ、寝てていーのかい?


 ……いや、片目つぶってやろう。

 昨夜は彼女らなりにはしゃいでいたらしい。どうやらカモデナンディ公国というわたしにとっては未知でしか無い国に、彼女なりの思い入れや郷愁なんかがあったらしい……。


 どちらの部屋か知らんけど明け方近くまで昔語りをしていたようだ。そうと知ったのは、朝、マカロンが親のように寝惚けたルリさまにお小言をくれていたから。


 他方、陽葵(ひまり)惟人(これと)は馬上の人となり、わたしら(とゆーか、スピア姫の乗る馬車)に随伴して警固役を兼ねている。


「よー(かんなぎ)のリンさんよ。ところでいつハナヲと知り合ったんだ? もう随分前からだってカオしてんじゃねーか? 実際のトコ、アンタ、ハナヲの何なのさ?」

「はぁ。知り合ったのは10年くらい前……でしょうか? 職場の同僚だったんですよ。新入社員のときから色々面倒を見てもらいました」


「……え? 言葉通じねぇな、ったく。10年前だとリンさん生まれてもねーじゃんかよ。職場の同僚って、ちーっとばかしBL本、リーマンラブにハマリすぎだろ。小学生の身空で相当ヤベエよ?」

「BLってのは知ってます。でもわたしのハナヲセンパイへの愛はそういうのでは収まりきれないほど深くて崇高な関係なんです」


「へー。リンちゃん、人間が出来てるでござるなー。南田センパイ並みの尊敬に値するでござるよ」


 待って? どこのどの部分が尊敬に値するの? マナ?


「……そんな風にホメられたコトなんて無かったから、ちょっと照れますねー」


 照れるとな!

 リンのヤツまんざらでもないっての? ほんのさっきまで能面みたいやったのに途端にニマニマとふたりの会話に付き合いだしている。なんてぃチョロ子!


 3人の輪に入りたくないわたしは、かたくなに寝るフリを続けて、向かう先の【カモデナンディ公国】についてアタマの中で反芻し、得た知識の情報整理をした。



 ――カモデナンディ公国はフィルメルク大陸の南端に在する列強国。


 面積はアステリアの10倍以上、日本に当てはめたら四国くらいの面積はある。


 歴代の当主はいずれも軍事的才幹に優れていた。

 自領内で敵軍を迎えたコトがない。つまり過去、如何なる勢力の侵入も許したコトがない。


 ただし始祖の遺訓を守り専守防衛に徹していて、領土拡張の野望は極めて低い。


 産業面では南洋漁業がさかんやが、それよりも天然資源の【黒い水(=わたしの推定では石油やと思われる)】の産出地として巨万の財を築き誰もが知る【豊穣の楽園】として、フィルメルク大陸屈指の理財国家になっている。


 なお、アステリア領はカモデナンディ公国宗家からの傍流にあたり、数代前にさかのぼればアステリアのスピア姫とカモデナンディ公国の当主は元々ひとつの血筋につながるそうだ。

 だからなのか、とても親密な両国関係が現在も維持されている。


 万年敵対国であるパヤジャッタの猛威を弱小国のアステリアが今までどうにか凌いでこられたのも、そのあたりに理由がありそう。


 ……頬に息がかかった。


「わあっ?!」


 巫リンだ。

 唇が触れる寸前に飛び退いた。


「ちいっ、惜しい! やっぱしウソ寝でしたかー」

「コラッ、リン! 抜け駆けは止めろよな!」


「心外ですね。耳元で話しかけようとしただけですよ?」

「じゃあなんで『惜しい』ってんだ?」

「そんな発言しましたっけ? いや第一、わたしはハナヲセンパイの恋人なのですからチューのひとつやふたつくらい、して当たり前なんですよ?」

「なんだとコラァ」


 南田センパイとリンが取っ組み合いを始めた。

 わたしにはそれがじゃれ合ってるようにしか見えない。何故なら間に()()()()()わたしが、ふたりから交互に抱きつかれてるから。そんな余裕どっから出るんや?


 ふ……と、片目を開けたシータンと目が合った。

 いつから起きてたんや、ちょっとビックリしたぞ?


 しばらく見詰め合いになったが、ツン……と怒ったようにカオを逸らされた。

 え……。ソレ、なんかムカつく。


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