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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
ごきっ 魔女っ子だって女の子だもの、たとえ異世界の住人だろうとラブコメ展開しちゃうから応援してほしいっ

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しちっ。 「水無月まなの告白?」


 惟人とマナ。

 ふたりきりにしてあげるべき?


 ヘンな気遣いを働かせてパラソルの下から出ようとした……ところで行く手を阻まれた。

 横目で立ち上がったので相手(それ)に気が付かず、ぶつかってしまった。


「ひ、陽葵?!」


 とにかく謝ろうとしたものの、当の彼女の意識はわたしには無いようだった。

 ギョロ目を激しく動かせて惟人とマナを交互に捉えていた。


「惟人! 魚釣り、するんやないの?!」

「あ、あぁ。そーだったな。けどもメンドーくさくなったよ」


 用意した釣り竿にはまだリールも装着されていなかった。

 陽葵はツン……とそっぽを向き、機嫌を損ねた様子で立ち去り掛けた……が数歩歩いただけでまた惟人の目前に迫った。


「生徒会長選挙、ホントに出るの?」

「……出るよ?」

「アンタには向いてないと思うけど? それがアンタのしたかったコトなん?」

「そう……とは言い切れないけど、でも、面白そうじゃないか」


 退屈しのぎになる。と惟人。


「あっそ。……ひとつだけ言っとく。わたし、そんな上っ面だけの気分で立候補した人間にはゼッタイ投票しない。そんなのが生徒の代表になったらアカンと思う」


 惟人の額が染まった。けれども反駁は無かった。


「水無月まな。教えて。どうやったら選挙に応募できるん?」

「……え? それってどーゆー?」

「わたしも立候補する。惟人の対抗馬になってやる」


 は?!

 な、ナニゆいだすんや?!


 惟人が何か言いかけたけど、結局黙ったまま、釣り竿をもって海とは別の方角、別荘の方に消えた。

 曲がり角に向こうに彼の背中が見えなくなるまで眺めていた陽葵は、浜辺にいるルリさまの元に引き返した。


 残されたマナ。

 赤く染まった頬、半泣きに見える表情を浮かべ、左手に忍ばせていた包み紙を手提げに戻した。


 ダメ。

 いたたまれない。逃げの言葉が浮かんだ。


「わたしトイレ」

「は?」


 ナニゆってんだ? って目をするマナに。


「えーと。……夜の8時。惟人を浜辺(ここ)に呼びつける。後は好きにすれば?」

「ハナヲ。……それ暗号(エニグマ)なの? ま、とても通じたけど」

「えにぐま? ハーそりゃよかったよ。んじゃ」

「待って」


 水着引っ張んな。オシリ出ちゃうって。……上も一緒だっ。胸出るって。


「ナニ?」

「ハナヲ。一生のお願い。あなたも立ち会って」


「はああ?! ヤダよ、わたし。陽葵に殺されちゃうよ!」

「ひーん。ハナヲはトモダチより家族を取るんだ? 恋人候補より、シスコンを優先するんだー?」

「うわっ。おっきい声出すなって! わーったよォ、わたしも付き合うから」


 ハナヲダイスキと腕を絡めるマナ。

 ヤメロって。

 メガネのフチがギラギラしだして何だかコワイよ!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 


「ねぇねぇ。彼来てくれるかな? どう言って誘ったんでござろーか?」

「その【ござる】口調は今晩は封印した方が良いよ、きっと。『花火しよー。近くのコンビニに行こう』って誘った」


 親指を突き立て「ナイス!」と叫んだマナは、一転、急速にしぼんだ。

 浜辺に続く石畳の歩道の縁にへたり込み、「はぁ……」と息を吐き出した。


「死へのカウントダウン。死刑執行まであと5分。13階段を上る可憐な乙女」

「告る前からやたらと弱気やね。当たって砕けろとまではゆわんけど、もっと堂々としててもいーんと違う?」

「ハナヲは告白体験が無いからそんなフワッとした激励しか出来ないのよ。幾ら腐女子でも、もうちょっとは恋心に芽生えなよ? 喪女になっちゃうよ?」


 な、ダレが腐ってると? もしくは喪女ってるとか、バカにしてます? わたしはありきたりな、ただのTS魔女っ子デス!

 だいたい告白したコトがないなんて、ダレがゆいましたかね?

 えーまーそりゃ、わたし女子力低いですよ? ゆーなれば激低ですよっ?


 これでもわたしだって告白の一つや二つ、三つや四つしたコトはあるっすよ!

 あーでも毎回玉砕っすよ! 悪かったですね!


「ナニをボーッとしてるのよォ、彼、玄関から出てきたわよ?!」

「あーごめんごめん。じゃそこの木の陰に潜んどくね。健闘を祈る」


 隠れてたら別にいるイミないやん? なーんてコトをやや思いつつ、ヤシの木の後ろに回る。

 ――と落ち着くヒマもなくマナが必死になって「こっち来い」と手招きしてる。

 アワアワと口に出してるのかってほどの狼狽ぶり。


 うろたえるなっ。覚悟を決めろっ。


「――アレ? マナさん? ハナヲちゃんを見なかったっすか?」

「こ、惟人クン」


 声上ずってる。押さえて押さえて。口パクで伝える。

 そーだ、サイン決めときゃ良かったな。


「ねぇ、惟人クン」

「はあ、何ですか?」


 キョロキョロしてる惟人。いかにもマナに関心無さそう。


「惟人クン」

「はい?」

「惟人クン、クッキー好き?」

「クッキー……まあ、キライじゃないですが」


 例の包み紙を惟人に押し付けるマナ。

 ソレ、中味クッキーやったの?! 夏やからせめてゼリーとかムース的な物が良かったんやない?


「コレ、良かったら食べて?」

「……なんすか、急に? さっきゴハン頂いたばかりで。……でもせっかくだから頂きます。有難うございます」


 惟人。それはアンタだけに、アンタのために作られたもんなんだよっ? そこのところ覚ってあげてよ?


「……でハナヲちゃん、どこに行ったか知らないですか? ……アレ、時間か場所、間違えたかなぁ」


 ……マナ。

 惟人のヤツ、ちーっとも有難がってないし、特別感を感じてないよ?


「マナ、思い切って告れ。アタックしろっ。それしかないっ」


 口パクと身振り手振りで合図を出しまくる。


 ……けどダメだ。マナのヤツ、惟人に見とれてこっち見てくれない。

 すっかりマンゾクしきってる。やり遂げた感、全開になってる。


 はっきしゆって、これじゃあ作戦は失敗だよ。これは経験則でゆってんだよ。


 ああっ。だからっ。

 マナっ! こっそりガッツポーズとるなぁ!


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