さんっ。(ぜんぺん) 「昇降口にて」
担任との面談を終え、落ち込み気分で帰途に就く。
「……担任めぇ、ヒドイゆいようやな。でもま。なんやかんや夏休みや! ワクワク前向きになろっと!」
廊下の窓から空を眺める。
ちょ?!
黒雲がモクモクし出してる。……なんてこった、雨降りそう。さっきまであんなに天気良かったやん!
とっとと帰んなきゃ。
ダッシュで階下へ。
昇降口に着くと、陽葵と惟人が待ってくれていた。
……あ、いや。
たまたまわたしが追いついただけ?
何だか知らんが睨み合いしてる。
「ナニふたりでカオ突き合わせて圧掛け合ってんの? 魔力がちびり漏れて近寄りにくかったで? それにどおりで外で暗雲立ち込めてると思ったよ」
ギロリと陽葵がカオを向けた。
――上履きやら工作物やら、長期休みを区切りに持ち帰り必須の荷物を抱えているものだから、ちょっぴり滑稽で可愛らしい。ところが言い放ったセリフは魔王魔女さまそのもの。
「勇者ごときが口答えとは、千年早いんや。わたしの前にひれ伏して詫びろ。そう命じたんや」
もう陽葵ったら。ホラ、他の生徒たちがヘンな目して通り過ぎてるよ?
ここはアステリアとちゃうんやから、ここでそんなゆい方したらただの厨二病丸出し人間にしかなんないって。
それか逆に、見える人には見えるやも知れんし、アンタの闘気オーラがさ? そんなの厄介でしょ! だから早く仲直りしなさいっ。
「陽葵が、僕の英語の点が悪いって言うから。けど他の教科は中間テストより上がったんだぞって答えたんだ。そしたら――」
「そしたら……?」
「……あ。いや。……なんでも無いよ、アハハ……」
惟人、誤魔化し笑い。
陽葵はツンとそっぽを向いている。
「……?」
妙な空気になっちゃった。
ナニコレ、わたしのせい?
「えー、ナニこの空気。まるで『そんなんじゃ、ハナヲみたいになるで?』 ってなカンジの会話になっちゃったようやんか?」
ふたりのカオが揃ってこっち、向いた!
そのカオ、図星だってクッキリハッキリ書いてるー!
「ハアッ?! もおっ! わたしやって好きでアホになってんやないから! 一生懸命努力しよーとしてんやっ!」
ふえぇぇん。
とうとう身内にまでアホ属性を決定付けられ始めてるう。それってメッチャツラすぎるぅ。
「お父さん……じゃなくってハナヲお姉ちゃん。アンタさ、転生前からそんなにアホやったっけ……?」
「アホ……やったけど、そこまでのアホではないアホやったと思いますぅ」
「じゃあ頑張れば? 単に努力が足りんだけやろ?」
はいぃ、陽葵さま。そうしますぅ。
「……あれ? 惟人。……にしてもキミも元気ない?」
「いや。そんなコト、ないよ?」
陽葵、わたしの服の袖を引っ張る。
「惟人は惟人で悩んでんや。だから説教してたんや」
「どーゆーコト?」




