にっ。(こーへん) 「先生、わたしアホ子になってます?」
わたしはいま、生徒指導室にいる。通称グリーンルームとゆっている。
名前の由来は知らん。
担任の女性教諭がポリポリと、頭とオシリを交互に掻いて成績表をわたしの前に広げた。
先日返された期末テストの結果を受けての個人面談だ。
ちなみにクラスでわたしだけ終業式後に居残りさせられている。
「暗闇姫ー。理科と英語は微妙に上がったな。保健体育も若干な」
「はいっ! 先生のご指導、ご鞭撻のタマモノですっ!」
お前はサラリーマンか。とタメ息をついて二の句を継ぐ。
「国語と数学と社会。3日間補習なー。最終日に追試するわ。まー頑張れよー」
じつに気だるげに、じつに呑気な口調で、エラい内容を宣告するな―。
夏休みが3日も減っちゃうの?
「先生」
「なんだー?」
「それ困ります。だって……」
冥界のアルバイト、できないじゃんか。3日も。
我が家にとって3日分の減収はおっきいんだからね!
「困る? なんでだー?」
「あー、そりゃバイ……。……いえ、なんも無いですぅ」
「まぁ観念しろー。それに先生だって……困るんだぞ?」
――アレ?
珍しく先生が照れてる?
も、もしかして。カレシとデートの約束でも?
「洗濯サボリすぎて、学校に着て来る服が無いッ」
……は?
似た者師弟デスネ。
なんなら制服貸しましょうか?
――しかしながら。
……おかしい。
「何だか転生前よりバカになってる気がする?」
先生、ボーゼンとわたしの独り言を聞き止めて。
「じゃあ暗闇姫。試しにもっかい転生してみるか? どーだー? ホンキになれるか?」
「はい?」
「少しでも生まれ変わるんだ、暗闇姫。2学期は別人になって帰って来ーい」
わたしだけ特別に、補習に加えて問題集2冊ほど夏休みの宿題が増えた。
わたしが要らん独り言をつぶやいたせいだ。




