いちっ。(こーへん) 「おバカは目覚めても変わらない?」
周囲はすっかり明るくて。
スマホの目覚ましがピロンピロンゆってて。
シバシバする眼に次第にピントが合いつつ。
視界に映るは美少女の――。
「んにゃ? ルリさま?」
――美少女のドアップ。まさに、チューされそうなくらいのキョリ。いや、いっそわたしから唇を寄せればあっさりとチュー出来ちゃうほどのキョリ。
1……2……3……。
ゆーっくりスリーカウントほどのちに、ルリさまの方がパッと弾け退く。
「か、か、か、か、――勝手にィ、目ェ開けないでよッ! ビックリするじゃないの!?」
あ……いや。
むしろあなたの反応に、こっちがビックリしましたが……?
相変わらずの金髪ツインテール。少し吊り目気味のプリティ魔女っ子はカオを真っ赤にさせながら、聞きもしない言い訳を始めた。
「ハナヲが? あんまり気持ちよさそうに? 寝てたから? そ、……その、つい? カ、カワイイ寝顔だなって……?」
「ルリさま、どーして疑問形なセリフなん?」
「朝っぱらから関西弁を発しないでよっ。これから語尾の『なん』は禁止!」
しょーがないやろっ、そーゆー星の下に生まれたんやから!
……ちがうか。
そーゆーサダメになっちゃったんやから!
「……カワイイ? それ、わたしのコト?」
「うわっ、ナニ言ってんの?! 自分でそんなコト、フツー言う?」
「……だって、ルリさまがいま……」
「ルリさま言うなッ、【ココロクルリさま】と言い直しッ!」
あー。
明らかにごまかしツン。
「あいあいさー。ココロクルリさま」
「うー。何かやっぱりヤダ。ルリさまでいい!」
ツンからデレに移行。
ワガママ魔女っ子さま、りょーかいデス。
ちびっとだけ脳が働き始めたのであたりをキョロキョロ。
……で、わたし、昨晩座卓に突っ伏して寝落ちしたんだと理解。
足元、あちらこちら数学の教科書とコミックが散乱してる。
スマホもコミックサイトを開いたまま。しずかに逝っちゃった様子。
「ふわあぁぁ。期末テストやねん。勉強したまま、寝ちゃってた」
「勉強? マンガ読みながら?」
「ヤやなぁ、ちゃうって~。国語の勉強。夏目漱石の『吾輩は猫である』のコミック版。字ばっかやと取っつきにくいでしょ? やから映像で理解しようかなってね……ん? ナニ?」
え? なになに? ルリさま? その目。
ちょーバカにしたようなの?
いやヤメテ、ヤメテ! ジョウダンでもまーまーヘコむから。
「……確か、今日最終日、だったよね?」
「そ。数Aと国語。今日やっと終わりやねん! ちょー長かったあ!」
ルリさまの使い魔、マカロンが脇から「にゃあ」と鳴いて伸び。キャワイイ自己アピ。
「ハナヲ。夏休み前の補習は決定したのかにゃ?」
「なんでやねんっ! まだ期末自体が終わってないっ」
ちょ、こらこらっ。そこな魔女っ子さんと子ネコちゃん?
カオ見合わせて「ヤレヤレ」ポーズ、せんとって! ヒドイッ!




