さんじゅうさんわっ 「ベクトルを合わせよう」
惟人の行動がこれほど迅速だったのはナゼか?
わたしも含めてとっくにピンときてた。
「だってさ。マカロンが『そーしろ』って言うから」
使い魔マカロンにおんぶされたヌイグルミ版ルリさまの弁明。その姿、懐かしいよ。
「わたしはちゃんと病院で寝てなさいって言ったよ? でも彼すぐ泣くし」
「泣いてねーよ!」
そこはちゃんと否定してるね。
「心配はしたけど、陽葵以外は誰も怒って無いよ。……ね? 陽葵?」
「アホ! わたし以外って何や! ……わたしは、何でそこまでアステリアに肩入れすんのかって疑問に思っただけや」
スピア姫が幕舎に入ってきた。
ここは下士官クラスの雑居小屋。お上の来る場所や無いですよ?
惟人が素早い動きで片膝をついた。
「……わたくし聞きました。敵将が一騎打ちを申し出ているそうですね。シンクハーフ、作戦長としてちゃんと説明してください」
「兵同士をぶつけるだけが戦ではありません。余興で解決できるなら安いものです」
「しかし相手はあの伝説の暗黒王、シカトリスというじゃありませんか。もし万が一、一騎打ちに負けたらどうするのですかッ?」
わたしの挙手に衆目が集まった。
「――負けませんよ? 惟人もいます」
「ええ、ええ。勇者さまが強いのは当然信じております。しかし暗黒王は……」
「その、真偽のワカラン相手さんと、わたしら……、コレット、黒姫、シンクハーフ、ココロクルリ、暗闇姫ハナヲの総がかりと。姫はどちらの分を認めますか?」
「下らん協議の場でも発言したろう。ザコが束で掛かってもジャマなだけだ。わたし独りで殺る」
話の腰を折りなさんな、陽葵さん。
……ああ、本文カットされてたけどさ。あの【しりとり大会】の後、実はモメたんだ。
束になって戦うって決議に対し、
「わたしに勝ち目無いって言うのか―ッ」って、陽葵がブチギレ。
アタマ冷やさせるために外に連れ出したんだったよね。陽葵、あなたのマイペースぶりにお姉ちゃんけっこうヘトヘトですよ。
「妹がこーゆーてますが束で掛かります。相打ち|は経験済みですし、慣れてますから、わたし」
惟人と陽葵がわたしを見た。
アンタら両方とも、相打ち覚悟で戦ったコトあるよねー、前にさー。
いまでもしっかり根に持ってるよー。
「……陽葵、ハナヲ姉ちゃんの言う通りにしよう」
「ちッ。もーどーでもいーよ」
笑えるのはシータンと、金髪ツインテに戻ったルリさま。「わたしらも参加しなきゃダメ?」 しっかりそうカオに出てますがな。
大事の前にベクトル、しっかり合わせましょ。




