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【完結御礼】黒姫ちゃん、もっかいゆって? ~ 異世界帰りの元リーマン魔女っ子なんやけど転生物のアニメっぽく人生再デビューしたいっ ~  作者: 香坂くら
よんきっ 追放された中一勇者と敗残した魔王魔女っ子が異世界に通じてる我が家を壊しまくるので困るっ!キュン死するほどデレられてもシケイ確定やしっ

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にじゅうごわっ 「ヘンジン仙人」


 一言も口を利いてくれない。

 陽葵(ひまり)のコトや。


 単純に怒ってんのか、それとも素直さが出せないのか。もしくはその両方なんやろか。


 シータンは公約(?)通り、陽葵の到着を待って戦地に行っちゃったし、ルリさまは、これまた公言通り日本に帰っちゃったし。

 ルリさま人間ギライだってそれ、明らかに()い逃れやんね? ただ変人ジーサンに会いたくないだけやんね? 日本に戻った以上、しっかり惟人(これと)の看病しててもらうからね、分かったね?


 無事かぜ薬の材料を手に入れた後の段取りをシータンとルリさまに確認したわたしは、黙ったままの陽葵を連れ、なんとか山? の薬草採取人の家にむかった。その変人ジーサンの住む家である。


 ――街の薬商から【仙人】扱いされてる人やから、てっきり山奥の()()()()()()()を想像してた。ところがこの人、大小の魔物たちに囲まれてさも愉快そうに暮らしていた。――って、なんで魔物たちと?! とまぁ驚くなかれ、この人自身がゴブリンで区分としては魔物の類でした。


「お久しぶりです。ミズーリさん」

「うほっ?! ダレかと思えば(ノワル)姫じゃあ、ありゃせんかッ! えらくロリちっくに成長しちまったげのう! どれどれ……」


「許可なく触んないでクダサイ。訴えますよ?」

「あひゃー、相変わらずノワル姫さまはツンデレちゃんやのう。ふひふひ」


 陽葵こと(ノワル)姫と昔馴染みってどーゆーコトかな?

 それとこのノリ、ダレかにそっくりなんやけど。ええもう承知してますけど。


「このジーサン、バズスの曽祖父よ」


 やっぱ、なーるほどそっかぁ! だからこんなにネジ外れたご様子なんやぁ……って! 思いマセン!

 やからシータンも、ルリさまも来んかったワケですね!? 戦場と病人介護の方がまだマシなレベルやと?!


「お父さ……いえ、ハナヲ、いちお挨拶して。この人ミズーリさん。こちらは暗闇姫(やみき)ハナヲ。これでも限定解除(ソルシエールマージ)です」

「ほうほう。こっちもなかなかのキャワイイっ子じゃのう。よろしくの、挨拶代わりにペロペロしていいかの?」


「ヤメテクダサイ!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「へえ。おじいさん、ここで魔物たちの世話を焼いて暮らしてんですか?」

「まあの。これでもウンと昔はここら一帯も魔族らの村があったんじゃが、アステリア領が勃興してからはみーんなそっちに流れていきおった」


「おじいさんは行かなかったんですか?」

「だあーって。ワシ、村の()()じゃったもん。孫が村を出たんで跡継ぎも無くなって仕方なくそのまま残ったんじゃて。やからさぁ、なぐさめて欲しいのよォ、ワシ。ペロペロ」


 オマエ、掛け値なくバズスの親類やな! ホンマに血、濃すぎるわッ! 


「ミズーリ翁、わたしら用件をとっとと済ませたいねん。カモナン病に効く薬に使う薬草を分けて」


 そうそう。直球勝負や、よし。この手の御方にはその手に限る。

 お茶も頂いたし最低限のマナーはこなしたでしょ。たぶん。


「まぁまぁ、そう急かんでも患者は逃げんて」


 逃げなくても重篤化したりするでしょ!


「わたしら急いでんですよ。ここから少し南に下ったところで(いくさ)が始まるかも知れないんです。わたし、そこに駆けつけたいんです」

「フーン?」


 おじいさんの頭部が90度かたむいた。傾げ過ぎの角度でしょ! こわいっ!


「戦かあ。ズーリーも参戦しとるのかや?」

「……彼はとうに亡くなりました。戦死です。統率者であったわたしの責任です。申し訳ありません」


 戦死……。(ノワル)姫時代のコトやな? 陽葵が神妙な顔つきで頭を下げてる。細かな事情は分かんないが、娘の過ちは親の過ち。わたしも彼女に合わせて頭を下げる。


「死んだ? ズーリーが? あんなバケモノめいたヤツでも死ぬ時があるんじゃのう……」


 悲しむどころか感心してるよっ? このオジーサン!


「……で、今日はその報告に来たというコトかいの?」

「……それもありますが、今日の用件はどちらかとゆーと薬の原材料を……」

「まー急くなや。まずは、ペロペロさせてくれたらえーだけじゃ!」


 えーだけじゃ! って。なんでキレ気味にゆう? 若干話がリピートしてるカンジやし。


「その、ズーリーさんのコト、ご報告が遅れ本当に申し訳ありません。黒姫は……黒姫さまともども深くお詫びいたします」

「ズーリーか。アイツは手のつけられん暴れん坊じゃったんで戦地で存分に活躍したじゃろう。よかったよかった、めでたしの人生じゃ! あーハッピーハッピー」


 やっぱ少しオカシイ。……バズスの御先祖さま。ナットクしすぎてお腹いっぱい。


 ねー、陽葵。アンタのゆー通り、そろそろお暇しよう、それが得策やし。


「……ひまり? どーしたん?」


 テーブルに頭を下げたまま動かんと思ったら、小さく寝息を立てている。

 ウッソやろ?


「陽葵? ねぇちょっと」


 よーこんなトコで寝れるなぁ! わたしは一刻も早く辞去さしてもらいたいで。


「ふっへっへ。オクスリが効いて来たよーじゃのう、レロレロ」

「おくすり?」


 聞き返したとき、突然クラッとした。


「そうじゃ。お嬢ちゃんたちにはせっかくなんで、もっとゆっくりしてもらうんだーよ! 楽しい楽しいイベントも用意したでのう。さあ、ねむーれねむれ。スヤスヤ眠眠」


 うっわあ!

 うっわああ!

 サイッテーや、このジーサン!


「わ、わたしらを騙したの?!」

「だました? えらーく人聞きの悪い言い方よのう。疲れとるよーじゃったから、それ相応の【おもてなし】をしてやらねば、おテントウさまのバチが当たるってモンじゃよう? なあ?」


 ヤバッ……。

 気が遠くなってきた……、陽葵ッ! 妙なトコに連れて来てゴメンッ……!

 …………。


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