[第1章]ガルド・スタンレイ
魔物がはびこる世界。草原から現れる大量の軍勢。その言葉の通りに燃え盛る山から現れる魔鳥。太古の墓場から現れる強大な知識を持った不死者。そんな人類の驚異から人を守る職業があった。
[冒険者][騎士][勇者]
この物語はミストラと呼ばれる大都市の冒険者ギルドに所属する冒険者、ガルドたち、いやガルド=スタンレイの物語だ。
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大都市ミストラ、大きな壁に覆われたこの都市にあまり合わない木造の建物に入っていく。いつもの仲間にかるく挨拶をして受け付けに並ぶ奴等をかき分けわりかし少ない、いや、がらがらの受け付けで暇そうにしている顔だけ美人に話しかける。
[よう。メリル。そんな顔してると顔が固まって人形になっちまうぜ。]
[あっ、なんだガルドじゃないか。余計なお世話だくそったれ、それで用件は?]
この受付嬢のメリルは口が悪いせいか受け付けに人がよってこない。基本はこんな受付嬢はクビになるんだがこれでもギルド長の娘であるため仕事を続けることができているわけだ。
俺は手早く掲示板にある依頼書を手に取り渡す。
[このロックホークとクイックラビットの依頼を受ける。]
[あいよ。いつ頃になりそうなんだ?]
[まあ門番が入れ替わる前に戻るようにはしとくわ]
この世界。アルマティアは時間は1日24時間で分けられている。
そしてこの大都市の門番は18時に入れ替わって万全の状態で都市の防衛にあたるのだ。おまけにいうとこの門番になるための研修はかなり厳しいもので門番はかなり強かったりする。だから門の中までは魔物が入り込めないわけだ。いつも通りの時間に戻ることをいうと軽く頷いたあとにめんどくさそうに依頼書にギルドの印を押すと、俺に渡してくる。
[あいよ、頑張って稼いで死んでこいよー。]
[死んでこいよは余計だろ、いってくる。]
ヒラヒラと手をふるメリルの頬を軽くつねったあとギルドをでたあと屋台でスイートポークの串焼きを買い鉄の小さな箱にいれ準備を整え門番に話しかけ門をでると、後ろに何者かの気配を感じ、ナイフを咄嗟に後ろにふり、そこから後ろに跳躍する。するとそこにいたのは深くフードを被った女だった。声からするにまだ若いのだろうと推測する。近くに来るまで気配を感じきれなかった相手に油断をすることはできない。ナイフをしまい、背負ったラウンドシールドと腰にさした片手剣をぬき構える。するとフードを被った女が笑った。だがその笑いには哀しみが含まれているようだった。
[ガルドさん。今日の深夜、貴方の住むミストラに魔物の軍勢が現れます。貴方はその魔物に手こずる事はないでしょう。ですが貴方は魔物の不意打ちにより片腕を無くしてしまいます。]
フードを被った女は警戒している俺をみるとそういった。だがまず初対面のやつを信じることはできないし、あのミストラに魔物の軍勢などが攻めてくるはずもない。ミストラの外壁を破れるはずがないのだ。
[そうですね。貴方はそういう人でしたね。あのときも私がいなければ...。ではもうひとつ。]
また悲しそうに笑ったフードの女は続けて
[貴方が依頼を達成したあと、帰りの道中で魔物に襲われる村を見つけます。もしこれが正しかった場合、私を信じてくれますか?]
[にわかには信じがたいが。わかった。信じよう。だがなぜそれを知っている。お前はなんだ。]
そう俺が問いかけるとフードを被った女は少し間を開けたあとフードを外した。フードの中から現れたのは長い深紅の髪を一つにまとめた20代前半の女性だった。
[ごめんなさい。もう時間切れみたいです。また貴方の顔がみれて良かった...!大好きですガルドおじさん...]
そういうと彼女は涙を貯めながらこちらに微笑んだあと、光と共に消えてしまった。俺は呆然とするなか彼女のいっていたことを思い出す。
村の魔物の襲撃。
大都市ミストラへの魔物の軍勢の攻撃。
そして俺を知っているかのようなあの女の言葉。
とてつもない不安となぜか本当に起こると思っている自分をなんとか押さえつけ魔物討伐に向かうことにした。