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第48話

  ロラリア内兵舎にある軍会議室において。


 「さて、ロラリアを奪還し、残りはセーラのみとなりました。ただ懸念すべきは、今までの戦闘でも分かる通り、禁忌の技術を用いる点、そして未だに侵攻した理由が明らかになっていないことです」


 「こちらの戦力を測るためでは? 」


 「そんな理由で派兵をするとは到底思えません。今までこう着状態を保って来たのは我が王国軍の力を知っているからこそです」


 ロラリアの文官が放った言葉を即座に総司令官が否定する。


 「可能性の一つとして考えられるのは、今回の派兵はあくまで牽制に過ぎず、今までの比較にならない大規模な派兵を行い本格的な派兵を改めて行ってくるのではということです」


 その時、会議室の扉が勢いよく開かれた。


 「失礼いたします!連邦軍がセーラのから撤退を始めました! 」


 その報告を聞いて、会議室の雰囲気が俄かに騒がしいものに変わった。


 「ノークさん、これを我々はどう見るべきでしょうか? 」


 「......今回の戦争は一区切りついたと思って良いでしょう。もし次軍を送り込んでくるにしても、多少の時間がかかるでしょう。その間に、第二陣が到着します。これで多少大勢の軍勢にも対応できます」


 「......そうですね、私も同じ意見です。すぐに本国に連絡を取ります」


 その後すぐに総司令官が王都ノルドベルガへ伝書鳩を飛ばし、数日後帰ってきた指示を元に、結論が出た。


 


  【シュレンベルク王国はネクラス共和国に軍を駐留し、ハイルベルク連邦による再度の進軍へ備えること】




 




 「予想してなかった、呆気ない幕切れだったね」


 「そうだな。だがまだどうなるかは分からないさ」


 アランとユーラの2人は、ロラリア何にあてがわれた宿の一室で今後のことについて話をしていた。


 「もし連邦がもう一度侵攻してきたとしても、僕たちの出番はもうないのかな? 」


 「いや、そんなことはあり得ない。アランは1人でも十分な戦力だと認識されている。ただ、第二陣が到着して共和国を護衛するようになっている現状では、連邦も簡単には攻めて来ないだろう」


 「う......うん。そうだよね......」


 アランはどこかうつらうつらとした表情でユーラの話を聞いていた。その様子に彼女が気づいた。


 「アラン、大丈夫か? かなり眠そうだが......」


 「う......ん......ちょ......と......」


 アランはそのままベッドへ倒れ込んだ。








 刺すような痛みを伴う寒さ。数歩先も見えないほどの吹雪。現実世界にいる時となんら変わらない実感を伴った精神世界。


 またここか。しかも今回は、完全に覚醒していた所を強制的に連れて来られた。アランは憤りを覚えながら、自分を呼び出した存在へ向かって呼びかけた。


 「一体何の用ですか?」


 すぐに返答はない。その代わりアランを苛立たせるのに十分なほどの時間を経て、返事が帰ってきた。


 「まあそう言うな。お前にとって悪くない話を持ってきた」


 そう行って声の主は低いトーンで笑った。


 「あの......起きてる所をいきなり気絶させて呼び出されたんです、怒らない人がいますか?」


 「ふむ、その点は確かに行きすぎた点はあったと認めよう。だがアラン、お前は今のままで良いのか?」


 その問いかけに対し、アランはさらに機嫌を損ねた。前からではあったがこの遠回しな言い方が気に入らない。 


 「お願いだから、はっきりと言ってください」


 「お前は自分を知りたくはないのか?」


 思いもよらぬ返答にアランは大きく動揺した。


 「......どういう意味ですか?」


 「そのままの意味だ。それに久しく純粋な冒険というものをしていないだろ?丁度お前がいる街の近くに手がかりとなるかもしれない場所がある。探検もできて一石二鳥だぞ? 」


 「はあ......」


 「全く優柔不断な奴だな、特別に教えてやろう。しばらくお前とやりあっていた相手は襲ってはこない。どうだ?これで安心だろ?その間に思う存分冒険してくればいい」


 吹雪がさらに強くなる。いつもの覚醒の合図だ。


 「あの、話はまだ終わってないんですが......ていうか自分の将来を勝手に決めないでください」


 「くどい奴は好きじゃないんだが、お前はそれでもいいのか? 折角蓄えた力を失うことになるぞ? 少しくらい言うことを聞いておけ」

 

 それでも納得がいかず声を出そうとするが、もはや仮初めの体は言うことを聞かず、強制的に意識を断ち切られた。

 






 「アラン、おいアラン! 」


 ふかふかした感触がアランを包み込む。その感覚に気づいて目をゆっくりと開けると、ユーラが青白い顔をしながら見つめていた。やがてアランが目を覚ましたことに気づくと、彼女の肌が一気に健康的な色へと戻っていく。


 「ユーラ、俺は大丈夫だから、頰を叩くのはやめて」


 「大丈夫って、半日近くずっと眠っていたんだぞ? とても大丈夫とは思えないんだが......」


 ユーラが納得しそうにないので、アランは時々謎の存在から夢の中の世界で時折謎の訓示を受けていることを話した。するとみるみる彼女の顔つきが険しくなっていった。


 「アラン、出来ればこの事はもっと前に話して欲しかった。助け合って生きていくって決めただろ?」


 「うん、ごめん。これからは抱え込まずに相談するよ」


 「分かってくれて嬉しい。それで手掛かりの場所がどこか分かるか?その声は手掛かりになるような事を言っていたか?」


 それを考えようとして、アランは違和感を覚えた。脳内に何処かの景色がふと浮かび上がった。それをすぐにユーラへ伝える。


 「もしかしたら、そこへ行けと言っているのかもしれないぞ?」


 「うーん、今の状況で行っても良いのかな」


 「だったら聞きに行けば良いだろ?」


 こうして2人で総司令官の元へ赴き事情をしたところ、あっさりと許可が出たために急いで旅の準備を始めることになった。


 








 

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