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第9話 天空の子

 私は下を見るのが好きだ。

 雄大な大地に青々と繁る大きな大樹も、静かに心落ち着かせてくれる海も、人の住む町を見るのが好きだ。



 でも、この考えは他の人には受け入れて貰えなかった。変わった考えだと、理解してもらえない。地に堕ちた罪人の住みかを見て何が楽しいのか? と言われたこともある。




 それでも、ずっとこの大地を見下ろしている、そんな気がしているの。




※※※




天歴 248年 城下町


 座りながら、下を見ている少女の姿があった。時間は、もう太陽は沈んでしまっている。満月が辺りを優しく照らしている。



 少女は月明かりに照らされた下を見ながら、歌っていた。それはこの辺りでは割りと有名な歌である。


 その時、ふと声をかけられた。




「やっぱりここにいたのか、ティルア」

「やっぱりバレちゃったか、カーデの兄様」


 後ろを振り返ることもなく、ティルアはそう言った。ゆっくりとカーデが歩み寄る。


「またお母様が探してたぞ?」

「逆に、ここに行くって言てからだったらここには来れないでしょ? 一人じゃないと」


「ま、それもそうだな。こんな禁忌を犯すのはティルアぐらいだもんな」


 笑いながらそう言った。だが、カーデの目は笑っていない。ティルアには、ただ合わせてそう言っただけに見えた。



「カーデの兄様も、私の考えはおかしいと思う?」

「あぁ。俺達は天空に住む人間だ。それが、地面なんて見ていたらおかしい、と思うぞ」


 きっぱりとそう言われた。誰にも分かって貰えない。そしてカーデは帰るぞ、と言わんばかりにティルアの横から立ち上がった。


「最後にカーデの兄様。教えてよ」


「それを聞いたら帰るぞ? いいな?」



「うん。ねぇ、どんな罪なの? 大地に住む人たちの罪って」

 それは二人とも知らない。教えてもらっていないからだ。だからこそ、カーデには答えられない。



 カーデが口を開く前に、突風が吹いた。この近辺ではよく起こる現象である。


 だがそれは、かなりの風速であり簡単に体重の軽いティルアを吹き飛ばすのに十分だった。



 いとも簡単にティルアは、座っていた場所から落ちた。カーデが覗き込んだときには、ティルアの姿は闇に呑まれどこにも見えなかった。



 激しい風と共に、ティルアは落ちていく。声になら無い叫び声をあげながら。理解できた。


 このまま地面に衝突すれば簡単に死んでしまうということを。だからこそ、何か良い案はないか、と必死だった。考え付かなければ死ぬ。そんな状況であった。




 風を逆から吹かせれば、ゆっくり落ちていくのではないか? そんな考えが奇跡的に思い付いた。やらないよりもましだと考えて早速、風魔法を使う。



 予想通りにゆっくりと落ちていくことになった。だが想像以上に魔力の消費量が多い。だが、またここで風魔法を止めて元の速さに戻るのは恐怖心から無理である。




 魔力がもうほとんど残っておらず、気を失いかけた時に、爆発音と共に地面にゆっくりと到着した。だが、この時にはもうティルアは意識を失っていた。

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