第2話 空から降ってきたのは?
町を抜けて、少し走ったところに大きなクレーターができていた。まるで、なにか爆発があったかのように。
その中心では、人間が横たわっていた。この近さなら分かる。性別までは分からないが、きっと男だと思う。ただ、髪から覗く耳が尖り少し長かった。
ここで見て、引き返す訳にもいかず。倒れていた少年を担いで家に戻ることにする。
あの時、助けていたら助かったかもしれないのに、なんて後悔はしたくないから。助からなかったとしても、全力を尽くせば後悔しないと思うから。
「軽っ。それにどこ出身の人なんだろう? 服が不思議だ」
背負ってわかった。ものすごく体重が軽いのだ。それにとても特徴的な服装だった。今までに見たこともない形の洋服であり顔と手以外には露出はほとんどない。まるで、何かから身を守るために着ているような服装であった。
そんな少年を背負ってもと来た道をゆっくりと戻っていく。月明かりで幻想的に照らされている周りを見ながら、ゆっくりと戻っていった。
※※※
家に戻ってからも、床に寝かせる訳にはいかず、僕のベッドに寝かせることにした。砂ぼこりで汚れてはいると思うが仕方がない。靴だけは四苦八苦しながら脱がさせてもらった。
「でも、どこから来たんだろ? この子」
改めて見ると、かなりの美形である。薄汚れてはいても分かるほどには。サラサラとした薄青の髪は丁寧に編まれており、とても似合っている。
「ま、とりあえず。夕食でも作ろっと」
そのまま僕は部屋を後にした。今日は、ジャガイモとトマトが安かったからそのスープとパンにしよう。
出来上がった頃には深夜であった。電気の人工的な明かりでテーブルは照らされている。尤も、部屋の隅には暗闇がまだ隠れているのだが。
基本的に僕は作り置きする。昨日の夕飯が次の日の朝食になるのだ。1日経つと、また違った味になるのでそうしているのだ。
暖かいスープとパンを食べ終えてもう一度、少年の眠っている部屋に行ってみた。まだ眠っていると思うが、起きていたら心配するだろうし。
「入るよ」
起きてはいないと思ったが、呼び掛けてから入った。一応、礼儀である。扉を開けると、体を起こしてぼぅ、としてしている少年の姿があった。
深夜と言うこともあって、月の光が窓から優しく射し込んでいる。その光に照らせれている少年の姿は神秘的であった。耳の形も合って、まるで別世界の住人のように見えた。
少年は僕を見て驚いたように目を見開いた。まさか誰か居るとは思ってもいなかったのだろうか?
「えぇと、一応声は掛けたんだけどな……じゃなくて、大丈夫? 空から降ってきたみたいだけど……」
その神秘的な姿を見て、なぜかドキッとした。あたふたしたがらも、言葉を紡いでいく。
「ここはどこ?」
幼いような高い声だった。まだ変声期は来ていないのだろうか? 少年は僕にまだ警戒しながらもこちらを見ていた。
「ここは、水の都 エルヴァの町外れの僕の家だよ。あ、僕はカズト・ソーレイドって言うんだ」
「カズト、ね。私はティルア。助けてくれてありがと」
「ほっとけなかったから、それに空から落ちてきた理由も知りたいし」
「良いよ。教えてあげる。でも、その前に体を……」
「そうだね。汚れたままだもんね。着いてきて貰えるかな。あ、立てる?」
僕の言葉に促されて、ティルアがベッドから降りた。身長は僕よりもちょっと低いぐらい。
「う、うん」
そうして、僕たちは風呂場に向かったのだ。