選ばれた理由②
放課後、私は理事長室へと向かった。
「失礼します。理事長さーー」
【かばっ】
「!?」
扉を開けた瞬間、誰かが私に抱きついてきた。
「あーやっぱいいね、女の子は~」
抱きつきながらスリスリされる。
「・・・・・・・・」
先程も同じような事されて私はまた体が硬直してどうしたらいいのか分からなくなっている。
「理事長!」
すると、後からやってきたセンリくんが理事長さんに注意する。
「あれ、センリくん?来てたの?」
「来てたの?じゃないから。変な事されてないか心配できたんです」
「ああ、そう。じゃあ、終わったら連絡してあげるね」
「そうしてください」
そう言って、センリくんは理事長室を出ていった。
「彼、ちょっ君に構い過ぎだよね」
それ絶対にセンリくんに言ったら否定されると思うけど。
「さて、改めて歓迎致します。ルノン・ルイ・シアータさん」
「・・・・・・・・」
センリくんが出て行った後、理事長さんは私に振り向いた後、理事長室のソファへと促され腰を下ろす。
そして、理事長さんは分かっているかのような口調ぶりで私に尋ねる。
「では、何を尋ねたいですか?」
「・・・・・・・・私は何も知らないです」
それは、尋ねではなくむしろ私が今感じている事だ。
「だろうな。でも、俺は知っていたよ、君の事」
「・・・・・・・・えっ」
それは、おばあちゃん家に訪れた時も同じ事を言っていた。
結局、尋ねそびれて何も聞けなかったけど。
「どういう事なんですか?私、魔術使えませんよ?なのに、なんで特待生なんか」
両親は魔術の上級階級の人間だけど、私は一度も両親から私に対して魔術の事も魔術を教えられた事はない。
両親の魔術を見る程度で。
そもそも私に力があったなんて知らない。
「ご両親から聞いていたからね」
「えっ」
ぽそりと言った言葉に目を丸くさせる。
「特待生っと言っても、君の場合は力が強いとかそういう具合の判断での特待生ではない。君はご両親からの強い思いで特待生としているんだ。どうしても入れてあげてほしいと」
「両親がそう言ったんですか?」
「そうだね」
「でも、私は力はあるのだろうけど、魔術は使えないんですよ」
そもそも力がある事さえも未だ微妙だ。
すると、理事長さんは立ち上がり、私の顔の前へと近付く。
「確かに君は今は魔術は使えない。でも、素質はある。そして、君の魔力には強い宿りを感じる」
「えっ」
「カインさんの娘だけはある」
「それって」
「君は強くなる。それは保証する」
理事長さんの真剣そのものの口調に何も言えずにいた。
「君のご両親はここの卒業生でね、レイニーさんは魔術回復科の方にいたんだ」
「この学園の?」
「そう、だからこそ入れたいんだよ」
「理事長さんは両親が殺された事」
「知ってるよ、悪魔に殺されたんだろ。理由はわからないけど」
「そうですか」
やはり知っていたんだ。
「頼んできたのは、彼らがなくなる数日前だったから、まるで遺言書のようだよ」
(?)
何か今の会話おかしかったような。
7年前って事はこの人、今は何歳なのだろうか。
随分若そうに見えるけど・・・・・・・・。
「言っとくけど、俺まだそんなに歳くってねえよ?」
「えっ」
「まだ、20代後半だから」
「えっ!?」
(まさか・・・・・・・・)
理事長さんってもしかしてすごい人・・・・。
「単に引き継いだだけだから、うちの父親が引退したから」
「あ、そうなんですね」
(普通考えたらそうなるよね・・・・)
「君の事は何度か偵察のようなやり方で見ていたんだけど、最初は魔力はあんまり感じなくて難しいんじゃないかとおもったんだけど。
でも、成長につれて大きくなっていくのが感じてね、もしかしたらと思ってね。
ただ、魔術が使えないだけが心配だけど。
まあ、幼い頃から魔力発揮しているのは珍しいから」
「・・・・・・・・」
「多分、これは俺の憶測だけど、君はご両親の希望なんだと思う。彼らが大事にしていた理由が分かるよ。
そして、どうして今まで魔術を教えてもらっていなかったか、力が答えになる」
「?」
私には理事長さんが何を言っているのか、よく分からずにいた。
「だってそうだろう。女子に魔力は基本、回復系や緩やかな力が多いはずなんだけど、君の魔力は男子と変わらない、強めの戦闘系の魔力が備えられている」
「!」
そういえば、クラスの子も不思議がっていた。
確かに、言われてみればそうかもしれない。
「それに、反対に回復系の魔力はそこまで強くない、作り出したり操ったりという戦闘系の魔力の方が強い。レイニーさんよりカインさんよりの魔力だった。
こんなにも小柄な女の子なのに不思議だね」
「・・・・・・・・」
(どうしてなんだろう・・・・)