導かれた学園①
その日、私はある学園敷地の正門前で呆然と立ち尽くしていた。
(・・・・・・・・で、でかい)
あまりにどでかい門と塀に面を食らった。
私は、ルノン=ルイ・シアータ。
極普通の平凡な16歳の女の子。
3日前までは、雪の多い地方で家族と穏やかに過ごしていたのに、どういう訳か私は今ここに立ち尽くしている。
(なぜ、こうなったのだろう)
なぜ、私がここにいるかというと、事の発端はおばあちゃんのある言葉から始まった。
私には忘れられない記憶が2つある。
ひとつは【両親】
もうひとつは【悪魔】
私には両親がいなく、というのも私が9歳の頃悪魔に殺されたのだった。
なぜ死ななければいけなかったのかは、不明である。
両親が死んでいく様を私は目の当たりしてしまい、その時映った光景が焼き付いて今でも忘れた事はない。
あまりにも、オドオドしく恐ろしいもの。
その時の夢を時々みる事がある。
まるで悪夢のように。
両親が殺された後、私はおばあちゃん家へと引き取られた。
おばあちゃんが住んでいた家には、おばあちゃんとおじいちゃん以外にも親戚の人も何人か住んでいた。
おばあちゃんの家は、結構な大きな家だった。
両親と住んでいた町とおばあちゃんの家がある町はそこまで遠くは離れておらず、私が通っていた学校はそのまま通う事が出来た。
おばあちゃんや親戚の人達はとても良くしてくれて、むしろ少し贅沢な生活だった。
詳しい事は知らないけど、両親もそこそこ有名な人だったらしく、おばあちゃん家の家庭は結構な裕福な家柄である。
両親との生活はけっこう一般的だったからかもしれない。
ただ、学校だけは有名な学校以外は、普通だった。
それは、私が高等部に上った夏の長期休暇中の事だった。
私の通っている学校は【セイントクラシィア女学院】という幼等部からある学院である。
この学院は、神様を崇高する学院で小等部から大学院まであるエスカレーター制の学院で、その上、男子禁制で教師さえも女性しかいないという、いわゆる貴族やお嬢様が多い学校である。
その日、私はおばちゃんとおじいちゃんとで、おばあちゃんの別荘に居た。
親戚の人達は付いては来ず、3人だけで行った。
別荘には2週間程滞在して、もうすぐ長期休暇も終えるので明日には帰ることになり、前日の就寝前におばあちゃんから部屋に来るように呼ばれていた。
『おばあちゃん、話って何?』
その部屋は、本がたくさん置かれている、書物室みたいな部屋。
『あのね、』
おばあちゃんは前置き置くように、両親との思い出の話しをし始める。
『━━━━━━━
あの時のあの子の笑顔はあなたそっくり、とても可愛らしくて愛らしい。
本当にね━━━━』
おばあちゃんは切なそうに悲しそうに、ママとの思い出をはせる。
『・・・・・・』
『それでね』
『!』
おばあちゃんは突然、ママとの思い出を続ける訳でもなく、他の話題へといや本題へと向ける。
『ねえ、ルンちゃんは魔術使えるの?』
『魔術?ううん、というか、魔力なんか持ってないと思う』
『そっか、そういえばそうだったね』
この世界には魔力という不思議な能力が存在している。
魔力を使った職業もあるのも事実で、うちの両親もその能力を使った職業を生業としていた。
だけど、この能力は誰しも備わるものではなく、いわゆる選ばれた人間だけが手にする事が出来る貴重な能力である。
詳しい事は知らないけど、そういうものだと聞いている。
だけど、私にはそういう能力は備わっていないらしく、
両親共に魔力があるなら普通は遺伝とかで魔力を持っているはずなのだが、私には出なかったのである。
『レイニーは使えてたからね』
『そうだよね、お母さん魔術看護婦だったもんね』
(有名な魔術看護婦だったからね)
『でも、あなたも使えるのよ』
『え・・・・』
おばあちゃんは何気なくはっきりと言った。
『私が?でも、そんな事・・・・』
『そりゃあそうよ、教えた事ないからね。
だから、持っている事さえも知らない』
『う、うん』
『でも、レイニーはいつかルンちゃんが使う事になると言っていたわ』
『ママが?』
(私が魔術を?でも、そんな事)
すると、おばあちゃんはおもむろにイスから立ち上がり書斎の引き戸に手を掛けた。
そして、引き戸の中からあるものを手にし、戻ってくる。
おばあちゃんは、手の平を開けて私に差し出してくる。
手の平には、ネックレス状で六角形のした紫色の綺麗な色のした石の結晶があった。
『これは?』
『魔力よ、あなたの』
『えっ』
(魔力?)
『つまりはレイニーのよ』
おばあちゃんは、儚げに説明する。
『レイニーがルンちゃんにと』
『ママが・・・・・』
『ルンちゃんの今の力の段階では発揮されていないから、おそらくなにも使えない状況だから、このレイニーの力があれば多少は発揮させられるはず。ルンちゃんは魔力をしっかり持ち合わせているから、使えるはずよ。
だから、しばらくはこれを使いなさい』
『・・・・・・う、うん』
拒否をする感じは出なく、受け取るべきなんと浅はかに感じた。
『でも、どうして・・・・・今これを?』
ごもっともな疑問だった。
だったら、最初から渡しておけばよかったのではと思った。
その言葉に、おばあちゃんは真っ直ぐな瞳で私を見返す。
『これから、必要になるからよ』
『どういう事?』
意味深な言葉に私は目を丸くした。
『【私立フロンセンティア学園】って知ってる?』
『えっ━━』
私立フロンセンティア学園。
王都の中心部にある首都カーティネイアの街にある、魔術に特化した学園。
というぐらいの認識でしか知らない。
それが、なんだというのだろうか?
『えっと、魔術の学校・・・・だよね?』
『そう』
『それが何?』
『うん』
すると、おばあちゃんはまた書斎に向かい、机の上に置いてある一枚の白い大きめの封筒を手にして戻ってくる。
『何?』
『これを』
渡された封筒を受け取り表を向ける。
『えっ!?』
その封筒はフロンセンティア学園からで、宛先がどういう訳か私宛になっていた。
『これは・・・・』
私宛の封筒にどうしたらいいのか呆然となる。
『開けてみたら?』
『えっ・・・・う、うん』
言われた通りに封筒を開けると、いくつかの書類が入っていて、1番上に入っている白い紙を取り出した。
『・・・・・・!?えっ』
白い紙に記されていた文章に私は目を疑い、驚愕な瞳のままおばあちゃんの顔を見返した。
『これって・・・・・』
『そのままの意味よ』
『・・・・・・・・っ』
どうしてこうなっているのか訳が分からなかった。
その紙にはどういう訳か、私を゛フロンセンティア学園の特待生として招待する゛と記されていたのだった。
『な、なんで?』
『それは分からないわ』
『というか、私の事知ってるの?』
『みたいね』
何が何だかわからない状態の中、秋、私はこの学園へと転校する事になったのだった。