第二章「抑止」
第二章「抑止」
「どうなってるんだ・・・、チョコレートが宙を浮いた?・・・。」
謎の現象に頭が混乱していると大きな音を立ててドアが開いた・・・、そして何人もの医者がぞろぞろと病室に入ってきた・・・。
「鈴木鉄夫君だね?」
一番近くにいた医者が俺に言った。
「そうだけど、何かあったんですか?」
俺が聞くと医者は真剣な表情を浮かべ俺に話し始めた。
「先程君から異常な数値のspp値が検出されたんだよ、spp値っていうのは普通の人間とは違う力を持った人間が持っている数値のことなんだけどね、それが異常なほど検出されたんだ、だから少し体の様子を見てもいいかな?」
「別に構いませんけど・・・。」
よくわからないがその場の流れで俺は言った、医者たちは俺をベッドに寝かせ、膨大な数のチューブや機械を俺に取り付けた。
「少し苦しいかもしれないけど我慢してね。」
医者がそう言うと、突然頭に激痛が走った、そして俺は気を失ってしまった・・・。
目が覚めると俺は巨大な手術室にいた、手術台に寝そべっており、頭もクラクラし、まだほんの少し痛みが残っていた、意識がもうろうとする中医者たちの声だけが聞こえてくる。
「彼は危険だ!今すぐにでも処理すべきだっ!」
「いいや、彼は優秀な実験人材だ、手放すわけにはいかない!」
「人間を実験の材料にしていいと思っているのかっ!」
いったい自分はどうなってしまうのだろう、そんな不安しかなかった。ここから抜け出したい、早く家に帰りたい、そんな事を考えているときだった・・・。」
「ブチッ!」
何かがちぎれる音がした、音のしたほうを見ると自分に繋がれていたチューブがちぎれていた、それに気づいた医者たちが驚きの顔をあらわにした。
「ブチッ、ブチッ。」
次々と俺の体からチューブがちぎれていく、それに伴い今まであった頭の痛み、体の痛みがどんどん引いていった、そしてついには骨折していたところまで治り、事故に遭う前と変わらない体になっていた・・・。
「1体、何が起きているんだ・・・?俺の力のせいなのか?」
周りの医者たちが俺に何かを喋りかけている、だが俺はそんな奴らに聞く耳を持たなかった。
「どけぇぇぇええええっ!」
俺がそう言うと周りの医者たちはまるで強風にあおられたかのように吹き飛んでいった・・・。
「これが、俺の力・・・、事故が原因で目覚めたのか?」
考えているとベルが鳴り始めた。
「地下一階、第一手術室にて事故発生、直ちに確認に向かって下さい。」
すると手術室のドアが勢いよく開いた。
「出てこい!どこにいる!」
この病院の警備員とみられる男が叫んだ。
「クックック、いいぜ、出てきてやるよ、俺には何も恐れるものはないからなぁ、この力があれば・・・。」
俺は笑みを浮かべ警備員の方へ向かった、だが警備員は銃を持っていた。
「近づくな!これ以上近づいたら撃つぞ!」
警備員は俺の顔を見て一瞬おどけずいた。
「いいぜ、出来るもんなら撃ってみろよ、さぁ!」
俺は警備員に向かって叫んだ。
「撃たないならこっちからいかしてもらうぜ・・・。」
俺は大きく息を吸い込むと警備員に向かって手を向けた・・・、すると警備員の周りの床にぐわっとヒビが入り、そして床が崩れ、その瓦礫の破片が宙に浮いた。
「なんだ!なんなんだ!」
警備員は俺に向かって言った。
「自分でもわからないのさ、この力の事はな。」
おれは大声をあげた、すると破片は一直線に警備員に向かっていった。
「やめろ!何をする!撃つぞっ!撃つぞおおおおっ!」
警備員は声を荒げ手に持っていた銃を乱射した。だがそれもむなしく破片は警備員の体へと刺さっていった。
「グハッ、オェッ」
警備員は唸り声をあげると静かに息をひきとった・・・。
「ハハ、ハハハハハハハ。」
俺は大声で笑った、そう、すべてを手に入れたのだ、俺は全てを手に入れたんだ。心の底から滲み出てくる喜びを抑えることは出来なかった・・・。