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氷雨再登場!

EXに木島サイドの話があります。

1、避ける女子


 数日後。

 僕はいつも通り学園へと向かう。

「うわっ」

 教室に着いて早々、一人の女子が僕を見てそんな声を漏らす。

 僕は大して気にすることもなく自分の机へと向かう。

 と、

「きゃあああ、田村がこっち来たわ!」

「近寄らないでよ!」

女子たちが僕を避けながら口々にそんなことを言う。

 そういえば、この前木島に無理矢理女子に告白させられたっけ。

 きっとその影響で女子たちが騒いでいるのだろう。

 とりあえず自分の机について一息つく。

「いきなり近づいてきてびっくりした。ホント汚らわしい」

「わたしも。犯されるかと思った」

「ホント最低よね」

 女子たちが好き放題にひそひそ話をしている。

 ……全部聞こえているんだけどな。

「おい田村、お前女子になにかしたのか?」

 諸悪の根源である木島が何事かと聞いてきた。

 お前のせいじゃないか、とは言えず、

「……おはよう」

それだけ返すのが精一杯だった。


 今日はなにかと不便な一日だった。

 木島の絡みが少ないのは救いだったが、なにか行動する度に女子たちが悲鳴を上げるのだ。

 先生は、田村、女子をいじめるんじゃないぞ、の一言だけ。

 そして今、僕は掃除用具を持って教室を掃除している。

 掃除当番だからだ。

 本来当番の子はすでにいない。

 みんな僕に押しつけて部活やら外出やら行ってしまった。

 先生はそんな僕を見て、さぼるなよと言わんばかりに教室に居座っている。

 無論、掃除を手伝うことはない。


 三十分ぐらい掃除していただろうか。

 ようやく作業を終えた僕に、先生は、

「もっと早く終わらせろよ」

そんな一言を言ってのけた。

 じゃあなぜ僕以外の生徒に掃除をやるように言わないのだろうか?

「……ふぅ」

 帰り道、そんなことがあったせいかため息が漏れた。




2、心配する氷雨さん


 僕の部屋の前に着くと、そこには以前現れた、僕を同志と呼ぶ巫女さんがいた。

「……」

 彼女は一枚の紙を睨みつけながら、なにか思案しているようだった。

 ん?

 もしかして、あの紙……。

「あ、すみません。考え事をしていたものですから」

 そう言いながら笑顔を見せる氷雨さん。

 だが、その笑顔が以前より硬い。

「……その紙は、その――」

「やはり、あなたはいじめられているのですね?」

 僕の言葉を遮って氷雨さんが尋ねる。

「……はい」

 僕が返事をすると、氷雨さんは表情を険しくして、

「あなたにこの世界はふさわしくありません。私とともに行動し、幸せを

 勝ち取りませんか?」

そう言い放った。

「……は?」

 またとんでもなく怪しいセリフを吐き出した。

 確かに今の僕は不幸かもしれないが、だからといってこんな宗教を信じるほど追い詰められてはいない。

「私と行動すれば、いじめのない、平穏な日々を送れます。それは私が保証します」

 うーむ、どうしたものか。

 氷雨さんは善意で言っているのかもしれないけど、胡散臭すぎる。

 やはり誘いに乗るべきではない。

「あ、いえ、僕は大丈夫です」

「ですが、このままではあなたが不憫すぎます」

 氷雨さんは少し悲しそうな顔で言う。

「僕は大丈夫です」

 僕は断固として拒否する。

「……本当に大丈夫ですか?」

「はい」

「……あなたが、そこまで言うのなら」

 氷雨さんは悲しそうな顔をする。

「すみません。でも、僕の人生ですから」

「良いのですよ。ですが、私の力が欲しいと思ったら、遠慮なく呼んでくださいね。

 あなたが来て欲しいと願えば、できるだけすぐにあなたの元へ駆けつけますから」

 そうしてまた、笑顔でそう言い残した。

 うん?

 どうやって僕が来て欲しいことを理解するのだろう?

 そう思わなくもないが、そんな日が来ないことを心で願う。




EX、木島、知る


 最近のあいつは見ていて楽しい。

 なにせ近づくだけで女子が悲鳴を上げるんだからよ。

 俺はいつもつるんでる二人と一緒にコンビニで会話をしていた。

「そういやお前ら、先週から田村に奢ってもらってないんじゃねえか?」

「あー、そういやそんなことあったな」

「俺、学食派だから購買のパンとかいらねえんだわ」

「そーか。お前らいつも学食だもんな。なに食ってんだ?」

「塩ラーメン」

「ばっかお前そこはカツカレーだろ」

「いやいや塩ラーメンなめちゃいけねえぜ。280円て考えたらコスパ最高よ」

 へー、学食も美味そうなもん結構あるんだな。

「お前らはいいよな。こっちは金ねえから田村にたかるしかねえってのによ」

「そりゃお前コンビニで漫画本買いすぎっしょ。すぐになくなるわ」

 お、漫画は俺にとってバイブルだぜ。買うに決まってんだろ。

 そんな感じでだべっていると、向こうからやってくる男子生徒がいた。

 あいつは確か、同じクラスで田村といつも成績で競い合ってる十文字だったかな?

「木島君、確かキミ、よく田村と一緒にいたよね?」

「ああ。それがどうかしたか?」

「僕の仕入れた情報によるとね。田村、学園の理事長の息子らしいよ。だからすっげえ

 金持ってると思うんだ」

「おい、それ、マジか?」

 俺はその話に食いつく。

 確かに俺の分をいつも買ってるくせに金の心配する素振り見せたことねえなあいつ。

「ああ、マジだ。そこで、だ。木島君の方から田村をちょっと締め上げてくれないかな?

 例えば、百万くれるか死ぬか、みたいな感じで」

「そりゃ急だな。しかしあいつ、こんな真面目な奴にまで嫌われてるとか。救いようが

 ねえな」

「そりゃあ、あいつのせいで万年二位男呼ばわりされりゃ恨みもするって」

「はっはっは、そりゃそうだわな。よし、分かった。近々実行するよ」

「ありがとう」

「なあなあ木島、それ、俺らもついて行っていいか?」

「百万円とか聞いちゃ黙ってらんないっしょ」

「ああ、いいぜ。明日図書室で作戦会議な」

「「おうよ」」

 田村、みてろよ。

 今てめえの天狗の鼻を折ってやるからよお!



ちなみにこの女子に過度に避けられるいじめは実体験です。

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