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楽しい時間

1、姉の料理


「あ、明子。ロールキャベツ作るから手伝って」

「そう言って手伝わせてくれたこと一度もないよねジェイ!?」

「もう、りおクンに美味しいロールキャベツ食べてもらいたくないの?」

「そう思ってるの美香だけだジェイ」

「そんなこと言う明子には夕食作ってあげないよ?」

「冷食あるから大丈夫だもんねジェイ」

「あ、それりおクンの分だから食べちゃダメよ?」

「最初からアタシの希望叶える気ゼロだジェイ! というかなんで二つ買って

 こなかったんだジェイ?」

「だって一つで十分でしょ?」

 さも当然と言わんばかりに返す姉さん。

「……分かったジェイ。作るの手伝えばいいんだジェイ?」

「最初からそう言いなさいよ。ほら、エプロン」

 なんで僕の部屋に勝手にエプロンがあるのかは言及しないでおこう。

 あれだ、毎週作るから置いといた方が楽なんだ、きっと。

 さて、料理してる間にせめて復習だけでも終わらせておこうかな。


 とは思ったものの、やはり姉の力? というのだろうか。

 食卓には好物のロールキャベツの他に、青椒肉絲、杏仁豆腐、たらこスパが並んでいた。

 ちなみに青椒肉絲は全員で食べられるように大皿に、杏仁豆腐は小分けで三人分、たらこスパは明子さんの席の前に、ロールキャベツは僕と姉さんの席の前に置かれている。

 これだけの量をものの十分ほどで作ることがはたして可能なのだろうか?

 少なくとも僕には無理だ。

 そんなわけで復習は一教科終わらせるので精一杯だった。

「ね、ね、理央クン、理央クン、ひっさしぶりに料理手伝ったジェイ!」

 そう興奮気味に話す明子さん。ちょっと、顔が近いって!

「そ、そうなんだ」

 そう言いながら一歩後ずさる。

 すると更にグイッと顔を近づけて、

「たらこスパあっためたジェイ!」

と嬉しそうに話す明子さん。

 それって料理手伝ったうちに入るのかな?

「ちょっと明子! 顔近づけ過ぎよ! りおクンが嫌がってるでしょ!」

「ごめんごめんジェイ。つい嬉しくてジェイ」

「とりあえず、食べちゃおうよ、ご飯」

「そうね、美味しいうちに食べた方がいいもんね、流石りおクン」

 胸を張る姉さん。

 僕が席に着くと、姉さんと明子さんも席に着く。

「「「いただきます(ジェイ)」」」

 揃って食事を開始する。

 食事が始まると姉さんたちがいても静かになる。

 なぜなら、姉さんが、姉さんが小さい頃は義母が、食事の時は静かに食べようね、と口を酸っぱくして言っていたからである。

 明子さんもそれを良く知っているから、食事中は静かになる。

 それにしても相変わらず姉さんは料理が上手だ。

 僕が作るものとは違って、見た目も良いし、味も良い。

 姉さんの前では言わないけれど。

 なぜなら姉さんのことだ、これから毎日作ってあげるね、と言うに決まっている。

 そこまで迷惑をかけたくない。

 だから僕は、いつも心の中で褒め、感謝する。




2、束の間の楽しい時間


「「「ごちそうさま(ジェイ)」」」

 食事を終えると僕は空いた食器を持って洗面台に向かう。

「あ、りおクン、洗い物は私がやるから大丈夫よ」

「でも、なにもしないのもあれだし――」

「もし、お皿が割れて怪我したらどうするの? お姉さん、怖くて任せられないよ」

「……」

「だだ甘やかされてるジェイ……」

「ね、だからりおクンはゆっくりしてればいいのよ」

「……分かった」

 こうなると姉さんはきっとてこでも動かないだろう。

 諦めて僕は自分の部屋へ向かう。

「あ、りおクン」

「なに、姉さん」

 呼び止められて振り返る。

「りおクン、もうちょっと遊んだ方がいいんじゃない? ほら、テレビとか漫画とか」

「勉強してれば時間は潰せるし、新聞を取っているからそれで十分だよ」

「でも……」

「大丈夫。それに、あっても使わない方がもったいないでしょ?」

「そうだけど……」

 すると、なにやら怪しげな笑みを浮かべながら明子さんが近づいてきた。

「ふっふっふ、そう言うと思って、今日はお勧めの漫画を持ってきたジェイ」

「読みませんよ?」

「即答されたジェイ! て言うか美香の言うとおりもう少し娯楽に興じた方がいいジェイ」

「娯楽している暇があったら予習しているよ、僕は」

「うーん、これは想像以上に重いジェイ」

 明子さんがむむむっと目を細めながら言う。

「そうねえ。私ももうちょっとゆとりを持ってもいいと思うのにね」

「新聞読んでいる間は十分ゆとりになっているから大丈夫だよ」

「なんかおっさんみたいだジェイ」

「どう言われようと僕は変えるつもりはないよ」

「……そう。りおクンがそう決めてるなら、私はもうなにも言わないわ」

「いいのかジェイ?」

「うん。だって、りおクンが決めたことだもの」

「そうかジェイ」

「ありがとう。でも、僕には僕なりの生活があるから」

「いいのよ。でも、もしなにかしたくなったらお姉さんに言ってね?」

「分かった」

「ちぇー、結構お勧めなのになあジェイ」

「明子、ぶーたれないの。それと、食器洗い終わったらもう帰るからね?」

「分かったジェイ」

「じゃあ僕は勉強してくるよ。出る時になったら教えて」

「「はーい(ジェイ)」」

 そう言って僕は自分の部屋へと向かった。

 しばらくして姉さんたちを見送った後、僕は勉強を再開する。

 今日は久しぶりに楽しかった。

 学園での出来事が吹き飛んだような気分だ。

 姉さんたちに心の中で感謝する。

 数時間ほど勉強したところで、今日は寝ることにする。



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