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怪しげな女性

1、怪しげな女性


 放課後。

 僕は女生徒が呼ぶ声を無視して、さっさと帰宅する。

 なにをされるかなど目に見えている。

 彼女の手には掃除用具が握られていた。

 なら、僕に話しかける理由は一つしかない。

 後ろで、最近あいつ変わってくれないよね、使えないね、と聞こえた気がする。

 僕の評価は、どんどん地の底へと落ちていく……。

 でも、自分ではどうすることもできない。

 僕の評価など、木島の都合でいくらでも変わってしまう。

「……ふぅ」

 これから僕は、この学園で過ごせるのだろうか……。

 そんな考え事をしながら僕は家路につく。

 視線を上げると、僕の部屋の前に一人の女性が立っている。

 長い黒髪に巫女服を着た、きれいな方だ。

 僕が帰ってきたことに気がついたのだろう、こちらを振り返ると、彼女はにこやかにしながら話しかけてきた。

「こんにちは、理央さん」

「……こんにちは」

 誰だろう、この人は?

 僕の知り合いに巫女さんなんていないし……。

 それになんで僕の名前を知っているんだ?

「あ、すみません。私がドアの前に立っていては中に入れませんね」

 そう言うと、スッと一歩下がり、

「どうぞ」

とにこやかにドアに入るように促す。

「はあ、どうも」

 僕はそのまま鍵を開けて中に入ろうとする。

「……り、あなたは……」

「え?」

 先ほどまでのにこやかさはどこにいったのか、険しい表情で僕の方を見ている。

 そして、またにこやかになって、

「私は、あなたの同志です。なにか、お困りのことはないですか?」

とか言ってきた。

 ……うん?

 とりあえず、僕は中に入れたしこのままドアを閉めることもできる。

 困っていることはあるにはあるが、この人に話すのはいかがなものか。

 だっていきなり、あなたの同志です、と言われても……。

 巫女服を着ているのがなにか怪しい宗教のように見えてきた。

「あ、申し遅れました。私は(あま)(みや)()(さめ)と申します」

 考え事をしていたのをどう捉えたのか、自己紹介を始めた。

「それで、なにかお困りのことはないですか?」

 ダメだ、怪しすぎる。

「いえ、特にないですけど」

 僕はそう答えた。

 見ず知らずの怪しい人に悩みを相談するのはなにか間違っている気がする。

 それに、この人からは笑顔の裏になにか隠していそうな気がするのだ。

 氷雨さんは少しの間思案顔になった後、またにこやかに、

「そうですか。お困りのことがあったら、声をかけてくださいね」

そう言って去って行った。

 もしかして、僕が学園でひどい目にあっていることを見抜いている?

 まさか、まだ初対面だ。

 そんなことはないだろう。

 いろいろなことがあったから変に疑り深くなっているだけだ。

 さっさと部屋に戻って、いつもの復習を始めよう。




2、雨宮氷雨という女性


 今日の復習はいつもよりやや集中力を欠いていた。

 先ほど出会った女性、確か雨宮氷雨さんだったかな。

 僕は自己紹介をしたわけでもないのに、なぜか名前を知っていた。

 それに、困っていることはないかと、今まさに困っている時に聞いてきた。

 まるで、自分の全てを見透かしているかのように。

 それが余計に怖さと怪しさを引き立てていた。

「ふぅ……」

 氷雨さんのことを考えつつもなんとか復習を終わらせる。

「あー、確か明日は……」

 明日のことを思い出した僕は、冷蔵庫の中身が少なくて買い物に行こうとする動きを止める。

 そして最後の夕食分になる肉野菜炒めを電子レンジで温める。

 明日は残り物の納豆と白いご飯で朝飯にするか。

 ついでに半端に残った肉野菜炒めを弁当箱に詰めて、と。

 これで明日忘れないようにすれば購買に行かなくて済む。

 いや、どのみち木島に頼まれて行くことになるか。

 温めてた肉野菜炒めができあがったのでご飯をよそって席に着く。


「さてと」

 普段はここで洗い物を済ませておくが、明日に備えてあえてそのままにしておく。

 一応さっと水で流すことはするが、洗い物はシンクの中にあるままだ。

 なぜこんな回りくどいことをするかって?

 それは明日になれば分かるさ。

 僕はお風呂に入り、これもお湯を捨てた後普段は行う風呂掃除をしないでおく。

 そして少し涼んだ後予習を始める。

 家事をしないと楽なのは確かなんだが、やっぱり落ち着かない。

 ルーチンワークから外れる行動を取っているからかな?

 でもここで家事をしてはいけない。

 全ては明日のためである。

 予習も終え僕は床に就く。



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