悪魔襲来
1、四面楚歌
僕たちは外に出ると、そこには義母さん、節子理事長が立っていた。
「あら、やっと出てきましたわね」
「義母さん、どういうことですか?」
「ごめんなさいねえ。これも、平和のためなのよ」
どういうことだ?
話が噛み合っていない。
義母さんは、誰かに合図するかのように手を挙げる。
すると、いたるところから警察官と自衛隊の人が出てきた。
「「え?」」
僕と姉さんは、一瞬なにが起こったのか分からなかった。
警察官が僕たちに銃を向けながら、別の警察官が手早く手錠をかける。
「こうするしか、私には方法がなかったのよ。ごめんなさいね」
「そんな! 義母さん!!」
姉さんが叫ぶ。
だが、僕は見逃さなかった。
義母さんは、いや、あいつは、僕たちが手錠をかけられた瞬間、それはそれは嬉しそうに笑っていた。
まるで、厄介者を追い払い、悪魔を捕らえた英雄になれることを喜ぶかのように。
どうする?
今、この学園の中には、敵しかいない。
味方も中立すらもいない。正に四面楚歌だ。
それに、仮におとなしく捕まったとして、悪魔の子として扱われたとしたら……。
僕たちは間違いなく処刑される。
どうする?
どうする!?
EX1、学園内の異変
木島は今日学校に来たことを後悔していた。
眼前には、災厄の悪魔。
兆候はなかった。だが、それは突然目の前に現れた。
「う、うわあああああああああああああ!!!!!!!!!」
木島は恥も外聞も捨てて逃げた。いや、逃げようとした。
だが、悪魔は彼を逃がさなかった。
鋭い爪が木島の体を引き裂いた。
「げぼあっ」
悪魔は、次のターゲットが決まっているかのように、一人の生徒を睨みつけた。
「ひっ!」
その生徒の名前は、十文字大地。
理央と美香が悪魔の子だという噂を流した張本人。
大地はあまりの恐怖に腰を抜かしていた。
悪魔が彼に近づく。
「く、くるなああああああああああ!!!!!!!!!」
その叫び空しく、悪魔の爪は大地の体を切り刻んだ。
悪魔はなにを思ったのか、木島と大地の首を器用に切り落とし、羽の中へとしまった。
次に目をやった時、悪魔はこの場所、夢ヶ丘学園高等部校舎からいなくなっていた。
十文字絵里は奔走していた。
悪魔の子の噂は本当だったと言うことを学園中に広めていた。
今思えば、それは必然だったのかもしれない。
悪魔が次に現れた場所は、絵里の目の前だった。
「なっ!? えっ!?」
絵里は戸惑いの声を発する。
その間に悪魔は自慢の爪で絵里の首を刎ねた。
その首をまた羽の中へとしまう。
そして悪魔が向かうは、この姿になると誓った場所へ。
2、悪魔襲来
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
答えが出ない問いを繰り返していた僕の耳に、つんざくような悲鳴が聞こえた。
「何事!?」
理事長が叫ぶ。
僕たちは校舎の方を見た。
すると、
「ひぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「い、いやあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
叫び声はさっき僕たちがいた教室の辺りから聞こえているようだ。
「自衛隊の人たち! 早く現場に向かいなさい!」
「は、はい!」
理事長の命令に、慌てて動く自衛隊の人たち。
理事長はすぐに携帯電話を取り出し、教室の中の先生と連絡を取る。
「ちょっと、なにがあったの!? え、悪魔? 嘘おっしゃい! 今、悪魔は私の
目の前に捕らえられているわよ! え、嘘じゃない? ちょっと、どうしたの!
答えなさい! 答えなさい!!」
理事長が怒声を上げる。
今の話から考えると、どうやら学園の中に悪魔がいるらしい。
その悪魔が、きっと無差別に殺戮を繰り返しているのだろう。
つんざくような悲鳴はさっきから断続的に聞こえている。
しかし、なぜ学園の中に悪魔が?
「一体中でなにが起きているの!? え、悪魔? ……本当に悪魔がいるの? ええ。
え、生徒の一人が突然悪魔に変わった? ちょっと、なにを言っているの? ええ。
今自衛隊が向かっているわ。大丈夫、もう少し辛抱しなさい」
どうやら理事長は別の誰かと会話していたようだ。
それにしても、生徒の一人が突然悪魔に変わった、てどういうことだ?
解明される部分もあれば、謎が深まる部分もある。
「やっぱり、あなたたちが仲間を呼んだのね」
「違う!! 私たちはそんなことしてない!!」
「警察の人! 彼らを撃ち殺しなさい!」
「っ!」
僕はとっさに姉さんを庇うように立つ。
「やめてーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
姉さんの悲鳴がすぐそこで聞こえる。
ああ、僕、死ぬんだろうな。
そう思いながら、目を閉じた。