飲み屋にて
「だからァ、オレ、元老院のジジイ共に言ってやったんスよ。おれはやるべきことをやるように言ってるだけなのに、どこが偉そうなんスかって」
「あーーーでも逆にわかるわそれ、コウノスさあ、お前、偉そうな時あるもんな、逆に。戦術データ見たけど、この前恒星間宙域で未確認星龍種と接敵した時もさあ」
「ソオノは黙ってろっス!」
「いやそれはさあ、あ、このじゃがいも。皮が美味い……いやさ、コウノスはちゃんとしてるからそういうこと言えるんだよ」
「オレはちゃんとしてないっスよ! でも、オレがちゃんとしてないと、誰もちゃんとしないんスよ!」
「コウノスさあ、お前……アレだ。お前は優秀なんだよ」
「オレは優秀じゃないッス!」
「いや、優秀なんだって。みんな自分のことで精一杯なのに、お前は周りを見る余裕がある。それは、お前が優秀だからだ。周りがサボってるからじゃない」
「なんスかそれ……、じゃあオレが悪いってんスか?!」
「誰も悪くない。みんなよくやってる。その中でもお前は特に、よくやってる。そしてコウノス、おまえはもっとよくできる奴だって俺は知ってる」
「なん……なんスかァ……! それ、そんなこと……ムラカミさんにそんなこと言われたら、俺……泣ふぃま、う、うあああ」
「あー! ふらカミふぁん! はかひまひはへ! ふぉろひとふぁーし!」
「なに? なんて?」
「あーダメダメ。これ死んでますね、逆に。死にノセモードですよ」
「うああー! ああああ!」
「ちょっとコウノス逆にうるさい!」
「ふらかみふぁん! きいてる? ふぉれ、おれはふらいるらんをれ、わらっらんれす!」
「わかったわかった」
「お待たせしましたー! クリームチーズといぶりがっこのサラダでーす」
「グスッ、あ、ムラカミさん……来たッスよ」
「あーあとじゃあこの辺のグラス全部持ってってください、逆にいらないんで。それとキンミヤ四つ追加で」
「おい、まだイチノセに飲ますの? これ」
「頼んどいて後でなんとかすりゃいいッスよ」
「ふーん……まあそれでいっか。ところでさあ、このクリームチーズといぶりがっこのサラダ、めちゃくちゃ美味くないか? なにこれ?」
「クリームチーズといぶりがっこのサラダじゃないですかね。逆に考えて」
「おいソオノ、お前も酔ってんのか」
「逆に酔ってないすよ。俺は竜血には酔いますけど、逆に俺が酒に酔ったことあります? 今まで?」
「あんだろ。この前の第八銀連の戦勝会とかで。なあ、第八最強のエース殿?」
「逆にないす」
「なんなんだよさっきからその『逆に』は。逆じゃねえよ」
「いぶりがっこって何スか?」
「あーと、ほら、あの東の……日本! 日本のさ、秋田の方の、漬物の燻製だよ」
「へえーっ、漬物をねえ。一回保存食にしてんのに、逆にもっかい燻製して保存食にするんだねえ。どんだけ保存に拘ってんだか。逆に拘ってないんすかね?」
「秋田の人間の知恵だよな。いぶりがっことクリームチーズが合う。こういうのを、縄文時代とかから延々続けてるんだろ。確かに燻製するとクリームチーズに合うもんな。感服するよ」
「キンミヤでーす」
「はいどーも……ムラカミさん、酔ってんスか? いぶりがっこはしらねっスけど、縄文時代の秋田に多分クリームチーズはないスよ」
「なんでだよ! こんなに美味いのにないわけないだろ!」
「でもムラカミさん、逆に考えてくださいよ、逆に考えてみるとね、ありえなくないすか?逆に。逆に考えてみると、逆ですよそれ」
「うわ、ソオノわかりやすく死んだな」
「こいつ今日十徹スよ。第八の主要星路に陣取ってた宙賊、皆殺しにしたって」
「あーあー、無茶すんな」
「あんたに言われたくないッスよ、ムラカミさん……地球最後の生き残りにして最強の高次元騎士! 正確無比! 20年連続撃墜王! 唯一無二の完成体搭乗者!!!」
「へへ、よせやい」
『ムーーーーラカーーーーミさーーーーーん!!!!!! 』
「うわでたマキノの『ムラカミさーん』」
『どうして私を置いてっちゃうんですかあなたのマキノが駆けつけましたよ!!!あっそんなにアルコール呑んで!ムラカミさんの脳細胞が死んだらどうするんですか!!!!』
「おいマキノふざけんな! ドローン持ち込むんじゃねえよ帰れよせっかく仕事忘れて呑んでんのに」
『嫌です私だけ仲間はずれは!!!私もムラカミさんのお酌したいーーーーーー!!!!!』
「つーかマキノ、お前、普通に出撃中じゃないスか?」
『なーーー! 私がムラカミさん以外のランナー乗せるわけないだろ!!!死ねコウノス!!!!!』
「AIの分際で人間様に死ねとはいい度胸ッスね、クソポンコツ野郎……!」
『はい野郎じゃありません女性人格でーす!!!だからコウノスくんはモテないんですね!この前の第一騎士団抱かれたい男ランキング見ました?ゼロ票ですよゼロ票!ハイランダーの面汚し!』
「おまえやめろっつったろその話はァ!!!
「あーそうだ。マキノ、お前今の時間新人の教練担当だろ確か」
『あんな童貞臭い奴乗せてバブバブ遊覧飛行なんかヤダーーーーー!私もムラカミさんとアダルティな時間を過ごしたいわけですよ!!!わかりませんかこの乙女心が!』
「わからん」
「死ねクソ色ボケクソAI」
『よおおおおーし買ったその喧嘩!コウノス表に出ろ!』
「あ、キンミヤとサラダでこれ宇宙見えるなこれ……おいコウノス、これ食ってみ」
『あ、あーーーー!!!!ムラカミさんの食いさし!ムラカミさんの飲みさし!!!!ずるーーーーーい
ずるいずるいずるい!!!私もあたしにも食べさしてくださいよーーーーーーー!』
「お」
「あ」
『第二で大規模宙域汚染……これ、骸竜ですね』
「規模は?」
『少なく見積もって……星団級。超光速緊急要請が今なおスタック中です』
「おい誰か緊急ボタンを連打するなって伝えとけよ。うるせえんだよ」
「おら、イチノセ! ソオノ! 起きるっスよ! 思念結合解け! ほら!」
「ふぁ」
「あー、せっかくの酔いが醒めちゃうー」
「人間の身体借りないと、飲むことも、酔うこともできないからな」
「でも、飲みニケーション。大事だよね逆に」
「ふぁ、きんひゅー?」
「おいイチノセ、はやく戻ってこい。引っ張られすぎだ」
「こんな風に酒に酔って、愚痴こぼせるのは、ホームの原生人類の身体でも借りなきゃ無理だしな」
「そっスね。みんな散り散りで、こんなズルでもしないと、会えないスからね」
「まあ、また時間合わせて飲もうや! そんじゃ、また」
「逆に、また」
「またッス」
「ふぁた」
『それじゃ、意識体思念結合解除を確認。ジャンプします……3、2、1、レディ』




